窓辺のヘンドリッキェ
この絵を始めてみたのは、高校生の終わりごろだったか。
美術室に置いてあったファブリの普及版かもしれない。
深く暗いが、恐怖を抱くような質ではない、暗褐色の中から浮かび上がる人物の、白い肌や緋色の衣に当たる光の眩い雫が、とても印象的だった。
思えばこの時から、この色の組み合わせが、自分にとってしっくり落ち着く基本色になった気がする。
先の”ポンペイレッド”にも赤が好きだと書いたが、ポンペイの”ディオニソスの秘儀”も、色の割合は違えど、この色合いと似通っていた。
レンブラントの色は、黒から褐色、赤に黄色、そして白までの暖色系に振られている。
茶色の地味な脂っぽい絵になりがちなのに、光の当て方と明暗のコントラストをうまく使い、その危機を脱している。
また、晩年の作品では、絵の具を盛り上げたり、絵肌を荒らすことで、ぬめりをも免れた。
自分は、初期の作品より、後期の作品のレンブラントが好きだ。
初期の絵からは、青臭い野心満々の気概が発せられ、どうも見ていると鼻白む。
しかし、後期の作品は、野望はあってもおくびに出さず、枯れた風合いを醸し出しているところがよい。
まあ、随分と上から目線な物言いだが、とにかく気負いを見せない作品が好きなことは、どうしようもない。
特に、”窓辺のヘンドリッキェ”、何気なく飾らないところがやっぱりいいのだ。
ユダヤの花嫁