rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

にわか撮り鉄子

2011-10-30 23:58:39 | 旅先から
 今日は、家人の付き合いで、さる西の街に行った。
家人の用が済むまで、近くの公園のベンチに座り、本を読みながら待つ。
すると背中のほうで、「ポーッ、シュシュシュシュ」と音がした。
確かに、背後には線路があって、可愛らしい一両編成の列車が時折通ってはいる。
なんだかSLみたいな音・・・と思いながらなおも本を読み続けていると、家人が走りよってくる姿が目の端に入った。
目を上げてみると、「これから、10時35分になるとSLが走るんだぁ!」と叫んでいる。
立って後ろを振り返ると、もくもくと蒸気を吐きながら黒いどっしりとした鉄の量感をもったSLが、駅のホームに入っていく姿が見えた。
バッグから、急いでカメラを取り出すも、間に合わない。
ともかく、10時35分になれば、こちらに向かって走り出すので、それまで本を読み続けることにした。
発射時刻の10分前から、既にスタンバイしている玄人の”撮り鉄”さんたちに混ざって、カメラを持って心待ちに位置についた。
「ポーッ」高らかに汽笛が鳴り響いた。
それから、蒸気を吐き出し黒い煙をもうもうと上げて、黒い鉄の塊は徐々に進んできた。
そして撮った写真が、これだ。
錆色のレールをするすると滑ってくるその巨体に圧倒されながら、シャッターを切った。
気動車の後ろには、3両の客車が引かれていた。
そこには、幸せそうに顔をほころばせながら乗る鉄道マニアの姿が見えた。
自分も、偶然ではあるが、はじめてSLが走る姿を間近で見られて、彼らに負けないくらい楽しそうな顔をしていたに違いないだろう。


くどいかもしれないが、言わずにはいられない

2011-10-28 15:21:54 | 随想たち
昨日、フジテレビの情報番組”とくダネ”で、硬派な政治問題TPP環太平洋戦略的経済連携協定または環太平洋パートナーシップ協定を取り上げていた。
論客に中野剛志氏を招いて、TPPについての意見を伺うという趣旨か。
TPP反対派の立場をとる中野氏は、いかにこの協定が超大国アメリカの専有協定で、日本国に何のメリットもない最悪のものだと、苛立たしげに警告していた。
そして、マスコミのいい加減さと狡さを指摘していた。
政府の了見の狭さと愚かさを、マスコミの堕落を、それを阻止できない中野氏自身の不甲斐無さを嘆いていた。

世事に疎い自分が、中野氏を知ったのは、この番組が初めてだった。
語調荒くふてくされたように話をする中野氏の姿に、戸惑いと不快感を抱いたのだが、番組が進み氏の言わんとしていることが見えるにつれて、その苛立ちに納得できた。
番組局アナによる、TPPが問題になるとき必ず出る農業と工業の対立と関税撤廃のメリットをあげて行われるTPPの解説は、政府指示による表面的問題のすり替えの受け売り。
もっとも、軟派な情報番組に、TPPの何たるかを詳しく解説しろというのも求めすぎで、こうして話題に採りあげるだけでも芳とすべきかもしれない。
だが、そのすり替えで隠され、国民の目に見えない重大な問題がある。

・工業製品、農産物、繊維・衣料品の関税撤廃
・金融、電子取引、電気通信などのサービス
・公共事業や物品などの政府調達方法
・技術の特許、商標などの知的財産権
・投資のルール
・衛生・検疫
・労働規制や環境規制の調和
・貿易の技術的障害の解決
・貿易紛争の解決
これらを、治権をこえて完全撤廃、例外は認められないとしている。
なにより、アメリカは、参加国中国力は抜きん出ていて、GDP比較では7割近くを占めて勝っている。
ついで日本は、2.5割の二位だが、だからといって安穏としている場合ではない。

政府は、参加によって得られる経済効果を算出したが、GDP10年間で2.7兆円あるという。
しかし、数字とは摩訶不思議なもので、取り上げるところ一つでいかようにも変わる。
しかも、控えめな脚注に魔物が棲んでいる場合がなんと多いことか。

なにはともあれ、既に参加決定の予定どうりにことは進んでいるみたいだ。
しかたがない、日本はアメリカの親しい隣人なのだから、アメリカの誘いは断れないだろう。
”親しい隣人”の中身は、時により立場によって変わることがあることは、皆が知っているところだ。

ワインとの出会いは、一期一会

2011-10-25 23:11:38 | 食べ物たち
相変わらず、超低価格ワイン498円の探求を続けている。
ただ単に、貧乏故なのだが。
それでも、ワインを飲めるだけ幸せと、スーパーに並ぶ498円ワインを手に取る日々。
先日買った、ミディアムボディと表示してあったスペイン産の赤ワイン。
香りさっぱり、口に含むと更にあっさり、咽喉を通るときにアルコールのジリリと焼ける感じがした。
うぬ?うむむむむ・・・
ビーフストロガノフを作り、その食中酒にと思っていたのだか、当てが外れた。
自然から生み出される食べ物だもの、肉だっていつも同じ味でなし、ワインだって葡萄の出来栄えに左右されるし、自分だっていつも同じ味の料理を作れやしない。
いやしかし、さっぱり系ビーフストロガノフなのだから、これもまた一つの出会いと思い直し、もちろん料理にも使い、ともに食した。
だから、そのときに出会ったものを、ありがたく頂き、自分の味覚に叶ったもの叶わないもの、その個性を楽しむ余裕は失いたくないものだ。
毎日欠かさず食べられる幸せを授かっているのだから。


人の素の教養として読まれるべき、レイチャル・カーソン”失われた森 遺稿集”

2011-10-23 23:40:53 | 本たち
アメリカの生態学者で、化学万能が浸透してきたアメリカにおいて、生態系の重要性を根気よく訴えた女性、レイチェル・カーソン(1907~1964)。
彼女のもっとも有名な著作は、”沈黙の春”だが、この”失われた森”は、彼女の死後に編纂されたものである。
初期の雑誌への寄稿文などから、講演のスピーチ原稿さまざまに、晩年まで彼女の軌跡を網羅しているので、概要を知るには適していると思う。
地球という、宇宙に浮いた生命の奇跡の宝庫。
そこにおいて、全ては繋がり影響しあって存在している、生態系というものが存在する。
だから、たまたま創造する知能と技術を身につけた人間が、自分本位に地球を我が物顔に扱うことは傲慢で、
ひいては自分の存在を危うくする愚行を繰り返してはいけないと、警鐘を鳴らす。
そして、もっと自然に関心を持ち、命に畏敬の念を持つようにと訴える。

カーソンが、生涯をかけて後世に向けたメッセージに、
・市民一人一人が、科学に目を向け、学べるようにすること。
・科学者達が学問を占有することの間違いを改め、専門の垣根を越えた連携を持ち、スポンサーにおもねない研究をすること。
・企業などの財界は、安易な利益追求をして公害を引き起こし蔓延させず、科学者や政治家に圧力をかけないこと。
・政治家は、道徳に叶った采配を揮い、地球規模の視野で政策を決定履行すること。
がある。

カーソンは初め、海辺の自然のきめ細やかな観察と洞察によって、生態系の思考を手に入れた。
観察の範囲を広げることによって、ますますその重要性を認識し、人間の科学技術の飛躍的進歩に伴って引き起こされる生態系への深刻なダメージに危機感を募らせていく。
ちょうど化学物質(農薬)による汚染で、生物に重篤な影響が出始めた頃であった。
また、原子力エネルギーが脚光を浴び、兵器と平和利用に台頭してきた時期でもある。
繰り返される地上や海洋核実験に、放射性廃棄物の海洋投棄が簡単に行われていた。
海洋生物学者でもあったカーソンは、水の循環に敏感であった。
あと食物連鎖にも。
どこかが一つ狂えば、次々にその影響は伝播して、取り返しのつかない事態に至ることを科学的直感で見抜いた。
人間は、自然治癒力の範疇を超えた物質を生み出し、量産し始めている。
カーソンは、身の毛もよだつ恐ろしさを、ひしひしと感じていたに違いない。
彼女の限られた時間で、地球とそこに生きるものたちへの愛で、出来うる限りの警告を発していった。

それから半世紀あまり、カーソンの危惧はますます現実味を持って、我々に迫っている。
いくらかは、エコロジーを念頭に置いた人間活動をする場面も現れるようになったが、危機を回避するまでにいたってはいない。
おそまつながら、自分がカーソンの思想に深く触れたのは、この本が初めてだ。
もっと早くに、子供のうちに、生態系の重要さと人間の愚かさを知っていたなら、人の基本的教養として備えることが出来たのならと、悔しい思いをしている。
また、人は動物であり自然の一部だということを忘れない為に、コンクリートと鉄とガラス、アスファルトで埋め尽くされた大都市は、解体すべきだとも思うのだ。
そもそも土や森から離れてしまったことが、人間に大きな間違いを犯させる原因になってしまったのではないかと。

ドナウの真珠、ハンガリー:ブダペスト

2011-10-22 21:49:02 | 街たち
”にじいろジーン・地球まるごと見聞録”、ドナウの真珠といわれるハンガリーのブダペスト。
ドナウ川の両側に広がる街は、今も中性の面影を色濃く残している。
西側に位置する王宮のある丘側をブダとオーブダ、川を挟んで東側の比較的平らなところをペシュト(ペスト)といい、両方合わせての名を冠してブダペストという。
騎馬民族を祖先に持つ為に、国を挙げての一大イベント、ナショナル・ギャロップが毎年9月に英雄広場で行われ、ロバシー・ジャザトという日本の流鏑馬的な競技が目玉だという。
また、温泉都市としても広く知られ、セーチャニ温泉は特に有名。
広い敷地にプールのような温泉があり、人々はチェスをしたり思い思いにくつろぎ時間を過ごす。
ほかにも、大小さまざま100箇所くらいの温泉施設があるという。
温泉の入り方は、日本と違うが、温泉好きの日本人にはとても魅力的な街。
ハンガリーには、ジョルナイ陶器というものがある。
その陶器を使っているジョルナイカフェがあり、100年以上前から営業している。
ここで出す、エステル・ハージ・トルテは、ナッツとクリームのケーキで、とある貴族が好んでいたものらしい。
ほかにも、ジョルナイ陶器で、ハンガリー式暖炉を作っている。
部屋の隅にデンと陣取る大きな暖炉の外側に、陶器の板が張り巡らされたものだ。
伝統工芸品として、”カローチャ”もある。
レースにカラフルな刺繍を施したもので、民族や地域ごとに模様を持つ。
ハンガリーはかつて共産主義国であった。
そのときの遺産に、”こども鉄道”がある。
11~15歳の成績優秀者から選ばれた、運転手以外全ての駅員をその子供達がこなしている。
旧体制下で、子供の職業体験目的に作られて、いまも存続しているのだ。
さて、ハンガリーの食材で最も代表的なものは、多種多様なパプリカだ。
市場には、生鮮パプリカも置いてあれば、粉末になったものもあり、食卓に上らない日はあるのだろうかと思うほど。
そのパプリカを使った代表的な料理として、いくつか紹介された。
グヤーシュは、パプリカパウダーを入れた肉と野菜たっぷりの煮込み料理。
パプリカチキンは、パプリカパウダーと生クリームで作ったソースで、鶏肉を煮込んだもの。
ホルトパージ・パラチンタは、ミンチ入りのクレープにパプリカソースをかけたもの。
ちなみに、パラチンタとは、クレープのことらしい。
スウィーツとして、クレープ生地でチーズとチョコレートをまいたものなどもある。
パプリカソースとはどのような味なのか、是非とも味わってみたいと興味をそそられた。
いまだ、東欧は、激しい資本主義経済の荒波の洗礼を受けていないのだろうか。
何処となくのんびりとした雰囲気を感じた。
チェコやハンガリー、ブルガリアなど、中世の街並みを多く残す国々が、画一的な文明の嵐に飲み込まれず、古くからの伝統文化を礎に、新しい時代を生き抜いていって欲しいと、心から願わずにはいられない。