タキさんの押しつけ映画評
『あなたへ』『るろうに剣心』
この春(2016年5月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは友人の映画評論家タキさんが、個人的に仲間内に流している映画評ですが、深さ、趣、面白さは、もったいなく、本人の了解を得て転載しているものです。
『あなたへ』
高倉健さん、ええねぇ~80越えてるのに、立っているだけで絵になります。
歩いている姿はヤッパリご老人なんだけど、黙って立っていたり座っているだけで「高倉健」です。
「単騎、千里を走る」がもう6年前なんですねぇ。後何回、この人の「いずまい」「佇まい」をみれるんでしょうねぇ。
映画館は爺ちゃん婆ちゃんで満タンでした。今時の20代は「残侠伝」も「番外地」も知らんでしょうから仕方ないけど、我々年代も少なかった。60年安保から全共闘世代とお見受けする。「止めてくれるなおっ母さん、背中の桜が泣いている」の世代ですねぇ。ちゅうことは、これで正解なんですかねぇ、昭和28年生まれは所詮 学生運動乗り遅れ組ですからねぇ。
映画 映画~ 正直、さほど感動的な内容じゃありません。というより、敢えてそういうバックシーンを切り捨ててあります。初老の刑務官と童謡歌手が結婚し、妻が先に死に その死後「遺骨を故郷の海に散骨してほしい」との遺書が届く。
この夫婦が出逢うまで 彼らの人生に何があったか、ほんの僅かに言及されるだけ。15年の夫婦生活も 何げない風景が追憶されるだけである。夫は、極短いセンテンスの2通の遺書に込められた妻の真意を測りかねながら、妻の故郷へと旅をする。
ご想像通り 旅の途中で出逢う人々との交歓から 次第に理解の糸口を掴んでいく。身も蓋も無い言い方をすれば「人間、皆 別々な時間を生きている」ということで…さて健さんは それが判った上で 亡き妻と どう別れるんだろうか、という内容です。
例によって健さんはあんまり芝居していません…というより、そのまんま「ドキュメンタリー高倉」です。それに合わせ脇役陣が演技するのですが、ビートたけしが、健さんの向こうを張ってノープラン芝居をしています(何ちゅう奴っちゃ) しかし、ここは脚本が先読みしていて絶妙なキャラクター設定にしてあり、観客には大受けでありました。(どんな設定かは教えね~) 佐藤浩市はもうちょっと老けないと設定上無理があるんですが、それだとバレてしまうので これはこれでええのかな?
健さんが 大滝秀治さんの仕事をベタほめしているのですが、見ていて「なるほど」と納得、健さんより6歳年上ですが、全く違う道を来た二人が、ほんの短い台詞のやり取りで人生を演じきる、こういうシーンに出逢うと 本当に日本人で良かったなあと実感します。
『るろうに剣心』
アクションは確かに良く出来ていますが、こらぁ早回しの「香港カンフー」ですわいな。
それもその筈、アクション監督/谷垣健治、この人が作ると全部そうなる。カンフー映画にハンドカメラを持ち込んで、変則方向から撮ったシーンを合成(ジェイソン・ボーンシリーズのあれですわ)したらこういう画になる。それなりに迫力はあるんですが、凄い映像・新しいアクションを見た…とは言えません。しかし、本作の問題点はここじゃない。
大沢監督は「原作に忠実にではなく、誠実に作った」と言っている。この人が言うのならその通りなんだと思います。私、原作は未見ですが、本作の問題点は、総て原作に有ると断言しちまいます。
世界観が薄っぺら過ぎるんです。原作者はあんまり歴史に敬意を払っていない…というより知りません。実在した斎藤ピンだとか山県UFOとか出てきますがおそらく名前を知っている程度でしょう。主人公の「不殺の誓い」の象徴として逆刃刀ってのが出てきますが……笑止!刃など無くとも日本刀で頭殴られたら即あの世行きです。
いやいや、これは時代劇に良くある設定で そんな些末を言うとる訳ではないのです。つまり、一事が万事この調子 今時 少女漫画でも武器の扱い・設定には結構こだわりがあります。しかるに本作はまるで先祖返りの少女漫画。まぁ、絵柄と連載当時女の子のファンが多かったってあたり、さもありなんです。未読漫画が映画化されると、即 本屋で大人買いになるんですけど、今回はパ~スですわ。佐藤タケルンと武田エミリンのファンの方にはオススメいたしますです。
『あなたへ』『るろうに剣心』
この春(2016年5月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは友人の映画評論家タキさんが、個人的に仲間内に流している映画評ですが、深さ、趣、面白さは、もったいなく、本人の了解を得て転載しているものです。
『あなたへ』
高倉健さん、ええねぇ~80越えてるのに、立っているだけで絵になります。
歩いている姿はヤッパリご老人なんだけど、黙って立っていたり座っているだけで「高倉健」です。
「単騎、千里を走る」がもう6年前なんですねぇ。後何回、この人の「いずまい」「佇まい」をみれるんでしょうねぇ。
映画館は爺ちゃん婆ちゃんで満タンでした。今時の20代は「残侠伝」も「番外地」も知らんでしょうから仕方ないけど、我々年代も少なかった。60年安保から全共闘世代とお見受けする。「止めてくれるなおっ母さん、背中の桜が泣いている」の世代ですねぇ。ちゅうことは、これで正解なんですかねぇ、昭和28年生まれは所詮 学生運動乗り遅れ組ですからねぇ。
映画 映画~ 正直、さほど感動的な内容じゃありません。というより、敢えてそういうバックシーンを切り捨ててあります。初老の刑務官と童謡歌手が結婚し、妻が先に死に その死後「遺骨を故郷の海に散骨してほしい」との遺書が届く。
この夫婦が出逢うまで 彼らの人生に何があったか、ほんの僅かに言及されるだけ。15年の夫婦生活も 何げない風景が追憶されるだけである。夫は、極短いセンテンスの2通の遺書に込められた妻の真意を測りかねながら、妻の故郷へと旅をする。
ご想像通り 旅の途中で出逢う人々との交歓から 次第に理解の糸口を掴んでいく。身も蓋も無い言い方をすれば「人間、皆 別々な時間を生きている」ということで…さて健さんは それが判った上で 亡き妻と どう別れるんだろうか、という内容です。
例によって健さんはあんまり芝居していません…というより、そのまんま「ドキュメンタリー高倉」です。それに合わせ脇役陣が演技するのですが、ビートたけしが、健さんの向こうを張ってノープラン芝居をしています(何ちゅう奴っちゃ) しかし、ここは脚本が先読みしていて絶妙なキャラクター設定にしてあり、観客には大受けでありました。(どんな設定かは教えね~) 佐藤浩市はもうちょっと老けないと設定上無理があるんですが、それだとバレてしまうので これはこれでええのかな?
健さんが 大滝秀治さんの仕事をベタほめしているのですが、見ていて「なるほど」と納得、健さんより6歳年上ですが、全く違う道を来た二人が、ほんの短い台詞のやり取りで人生を演じきる、こういうシーンに出逢うと 本当に日本人で良かったなあと実感します。
『るろうに剣心』
アクションは確かに良く出来ていますが、こらぁ早回しの「香港カンフー」ですわいな。
それもその筈、アクション監督/谷垣健治、この人が作ると全部そうなる。カンフー映画にハンドカメラを持ち込んで、変則方向から撮ったシーンを合成(ジェイソン・ボーンシリーズのあれですわ)したらこういう画になる。それなりに迫力はあるんですが、凄い映像・新しいアクションを見た…とは言えません。しかし、本作の問題点はここじゃない。
大沢監督は「原作に忠実にではなく、誠実に作った」と言っている。この人が言うのならその通りなんだと思います。私、原作は未見ですが、本作の問題点は、総て原作に有ると断言しちまいます。
世界観が薄っぺら過ぎるんです。原作者はあんまり歴史に敬意を払っていない…というより知りません。実在した斎藤ピンだとか山県UFOとか出てきますがおそらく名前を知っている程度でしょう。主人公の「不殺の誓い」の象徴として逆刃刀ってのが出てきますが……笑止!刃など無くとも日本刀で頭殴られたら即あの世行きです。
いやいや、これは時代劇に良くある設定で そんな些末を言うとる訳ではないのです。つまり、一事が万事この調子 今時 少女漫画でも武器の扱い・設定には結構こだわりがあります。しかるに本作はまるで先祖返りの少女漫画。まぁ、絵柄と連載当時女の子のファンが多かったってあたり、さもありなんです。未読漫画が映画化されると、即 本屋で大人買いになるんですけど、今回はパ~スですわ。佐藤タケルンと武田エミリンのファンの方にはオススメいたしますです。