大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・信長狂詩曲(ラプソディー)・16『商店街デビュー・1』

2017-03-17 06:13:01 | ノベル2
信長狂詩曲(ラプソディー)・16
『商店街デビュー・1』



 信長という姓は山陰地方に多く見られ、広島県尾道市から岡山市の間に集中してみられる。信永氏、延永氏からの転化だといわれ、けして冗談や気まぐれで付いた苗字ではない。これは、そんな苗字で生まれた信長美乃の物語である。

 ダンス部は46人に増えた。どんな子でも入部させたが、厳しいレッスンに耐えられなかったり、減量などが達成できずに辞めていくものも多かった。部長の宇子と相談して、選抜メンバーを16人に絞り、約束の商店街イベントに臨んだ。
 会場は、大昔の映画館が潰れた跡地を商店街全体の多目的パフォーマンススペースにしたものだ。普段は産直ものの販売会場にしたり、商店街加盟店と同種の店を呼んできて、バザールをやって、絶えず商店街の刺激にしている。商店会の会長の徳川のリーダーシップによるものだ。

 で、今回は、その徳川会長が、わざわざ学校のランチライブを見に来てエントリーを決めた。エントリーには意味がある。イベント毎にお客に投票してもらい、総選挙で得票総数の多かったイベントを再度やるとともに賞金や賞品を出す。MCをやっている木下藤子などは、絶対一番を取るんだと張り切っていた。
「観客が予想よりも多いんで、三回公演やってもらえないだろうか」
 前日に、徳川会長からじかに嬉しい要請があった。ただ、この季節の蒸し暑さに三回のステージは厳しく、ステージごとに近所の風呂屋が解放されることになり、その問題は解消した。

「じゃ、円陣組みまーす!」藤子の大声でメンバーが集まる。周りには選抜から外れた子や、辞めていった子たちも応援にきていた。高山宇子の人柄、木下藤子の口のうまさ、美乃の厳しいが爽やかな態度が選抜漏れしたものや退部していった者たちの心を掴んでいた。
「初めての校外公演。失敗はできない、テッペン目指して気合い入れるから。ファイト!」
「オー!」

 16人のメンバーの心が一つになった。

 レパートリーは八つに増えていた。八つ全部をやっては身が持たないので、五つずつの組み合わせを三つ作り。毎回違ったテイストになるように、藤子が中心に工夫をした。
 朝と昼のステージは大成功だった。観客は敷地だけでは収まらず、商店街の通路にまで溢れた。後ろの見えにくい観客のために、昼の部からは、会場近くに電気店が独自にモニターを設置し、ちゃっかり店の宣伝をやった。なんせモニターは店の真ん前である。ステージ終了後30分限定で、エアコンやテレビなどの二割引きバーゲンをやり、他の店でも真似をするところが出てきた。

 それは、昼の部が終わったあとの握手会で起こった。

 先日プロのユニットの握手会で事件があったばかりなので、商店街もガードマンを付けてくれたが、美乃自身は握手会には出ずに警戒に当たった。
 そして発見した、ペットボトルに見せかけた瓶を持った客を。
「お客さん、ちょっとその瓶見せてもらっていいですか?」
 美乃の鋭い目線に怯んで、その若い男の客は瓶を投げ出して逃げた。割れた瓶から飛び散った液体は白い煙を出して触れたものを焦がしていった……。

コメント
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