大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・信長狂詩曲(ラプソディー)・20『レボリューション・1』

2017-03-21 07:00:14 | ノベル2
信長狂詩曲(ラプソディー)・20
『レボリューション・1』


 信長という姓は山陰地方に多く見られ、広島県尾道市から岡山市の間に集中してみられる。信永氏、延永氏からの転化だといわれ、けして冗談や気まぐれで付いた苗字ではない。これは、そんな苗字で生まれた信長美乃の物語である。



 運転手は直前に気づいて、ブレーキを踏み、ハンドルを切ったが間に合わなかった。

 タイヤの空気が抜け、車体の下で、何かガラガラという音がして美乃たち清州高のダンス部を乗せたマイクロバスは、ブレ-キによるものではない止まり方をした。
「なんてことだ、まるでゲリラのやりくちだな……!」
 車体の下をのぞき込んだ運ちゃんが忌々しげに言った。
 タイヤはズタズタにパンク、車体の下のシャフトやフレームに鉄条網が絡み、自力での修理はおろか、JAFが来てもお手上げの状態だった。

 美乃たちの清州高ダンス部は、商店街のイベント出演をきっかけに地域で注目される存在になった。その年のダンスインターハイも順調に勝ち進み、今まさに県大会に出場の途中であった。
「運転手さん、なんとかなりませんか?」
「代車に来てもらっても、ここじゃ時間に間に合わない。連盟に事情を言って出番を遅らせてもらうことなんかできないのかい? 俺は警察に電話するよ。これは悪質な往来危険罪だ」
 この道は、地元の代議士の肝いりで作られたバイパス道だが、利用者が少なく、たまに通りかかるのは地元の軽自動車で、とてもダンス部全員の移動には間に合わない。
「だめです。出場順は変えられないそうです」
 口のうまい藤子が電話してダメなのだから、これも打つ手がない。
「そうだよね、どこの学校も、自分の出番に合わせてお客さん呼んでるから、変更なんて無理だよね……」
 ダンス部の一同が落胆する中、警察だけは素早く来た。現場検証をやるとともに、マイクロバスを路肩に移動させ、交通規制を始めた。しばらくするとメンバーの中には泣き出す子が出始めた。
 無理もない。この美濃地域でも最低と言われた清州高に入って、自信も未来への希望も失いかけていた子たちが、ダンス部で初めて、自分と学校の存在を好意的に認められるようになったのだ。これで県大会に出られなければ学校を辞めるとさえ口走りはじめた。キャプテンの宇子も美乃もなだめるのが大変だった。なんせ、なだめている宇子自身も珍しく悔し涙に頬を濡らしていた。

「そうだ!」

 美乃が、飛び上がって叫んだ。
「どうしたのよ、美乃?」
 飛び上がった藤子が指差した先には、アメリカ軍のオスプレイが飛んでいた。

「パトカーが止まって、変な止まり方をしたマイクロバス、HELP USの人文字に救難信号の発煙筒。降りないわけにはいかないからね!」
 舞い上がるオスプレイの中で日系の中尉が怒鳴った。怒鳴ったといっても、怒っているわけではない。爆音で怒鳴らなければ聞こえないからである。
「これで日米安保の絆も強まり、国民の理解も進もうってもんですよ!」
 声の大きい藤子が、まるで自分の手柄のように言った。

 清州高は予定の30分も前に会場の県民ホール前の駐車場に着いた。なんせオスプレイをヒッチハイク代わりに使ったのである。到着前から待機していたマスコミは、こぞってカメラを並べて待ち構えていた。
「ここまでやったんだから、絶対優勝!」
「しなきゃ、警察やアメリカの兵隊さんにも悪いですからね」

 清州高の無茶と言っていいほどの活動は、もうレボリューションと言っていいところまで来ていた……。
コメント
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