大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・118『妖退治・白の少女』

2024-08-12 10:48:56 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
118『妖退治・4・白の少女』   




 妖退治も二週間目に突入。

 こないだは、あまりの暑さに晴天自身が言い出して玉造(たまつくり)の日之出通商店街までカキ氷を食べに行って、ちょっと息抜き。

 でも、あくる日からは引き続き妖退治。

「お盆に入ったんで、ちょっとあちこち出張するんで、ここは頼むよ」

「あ、見てるだけでいいんなら」

「それでいいよ、グッチは居るだけで結界だからね。閉じ込めておいてくれさえすれば、帰ってからまとめてやっつけるからね」

「早く帰って来てね、わたしに手出しするのは居ないけど、ザワザワ言ってうるさいから」

「じゃ、これを貸してあげよう」

「え、ネックファン?」

 ありがたいけど、晴天が首につけていたやつかと思うと腰が引ける。

「新品だよ。AMATONに注文したのが届いた新製品」

「またAMAZON」

「便利だからね、じゃ、頼んだよ」

 それだけ言うと、あっという間に目の前から消える晴天。

 妖気の膜を張っているんで、ネックファンを付けることもないんだけど……おお!

 単に体感温度が下がるだけじゃなくて、めちゃくちゃ爽やか。ファンから噴き上がって来る風は森林浴をしてるみたいに爽やかで、魔力が二割ほど上がったような気がする。

 ボタンを押すとインタフェイスが現われる。シンプルに弱・中・強・自動の切り替え、と、可視化の選択肢。

 可視化ってなんだろう?

 ポチ……ゲ(''◇'')!

 切り替えると大屋根に囲まれた建設現場にウジャウジャと妖たちが蠢いているのが見える。裸眼でも、その気になれば少しは見えるんだけど、見え方というかグレードが全然違う。画質で言えば昔のアナログと今どきの8Kぐらいに違う。見えてる数も、裸眼で見るのと天文台の望遠鏡で見るくらいに違う。

 なるほど、晴天は、こういうのをやっつけてるんだ。こいつらを閉じ込めているんだから、わたしの力もなかなかのものだと思うよ。

 まあ、やっつけるのは晴天。わたしは結界専門。

 そう割り切って可視化をオフにする。

 そして森林浴みたいな気分で大屋根を周る。集成材とは言え、この大屋根は木で出来ている。妖気の膜で暑さを遮っているので、瞬間目をつぶるといい雰囲気。

――森林浴モードにしますか?――

 オフにしたはずのインタフェイスが現われて問いかけてくる。

「え、あ、おねがい」

 そう言うと、自分を中心に半径5メートルほどが木漏れ日になる。

 木漏れ日にも選択肢がある。広さが半径1メートルから無限大まで、漏れる光の具合も無段階で選べる。

 なるほどぉ、晴天が掛けていたのよりもグレードが高いかもしれない。

 いろいろ操作して、尾瀬の白樺林(行ったことないけど)のイメージにする。

 夏が来~れば 思い出す~♪ 遥かな尾瀬~ 遠~い空ぁ♪

 学期末に音楽で習った『夏の思い出』を口ずさんでいると、自動でいい雰囲気にしてくれる。


 あれ?


 調子よく半分ほど周ったところ、少しむこうに白いワンピースの女の子が体育座りしているのが目に留まった。髪はロングのシルバーで肌は抜けるように白く、横顔をこちらに向けて、ジッと南の空を見上げている。

 こないだも男の子の姿が見えたけど、あれは昔の残留思念がメタンガスと結びついて可視化したもので、近づくと消えてしまった。

 あれ、消えない……

 五メートルくらい、ちょうど視力検査の距離ぐらいになっても、その子は消えないで目が合ってしまった。

 白い横顔がこちらを向く。

「……あなた、魔女?」

 こっちから声をかけようとしたところなので、ちょっとビビってしまった。



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)118・広すぎるお風呂は瀬奈さん付

2024-08-12 08:42:20 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
118・広すぎるお風呂は瀬奈さん付 





 広い……


 瀬奈さんに案内されて、少し降りたところにお風呂があった。

 これまでは日帰りだったので、ここの風呂は初めてなんだけど、あまりの広さに足が止まってしまった。

 まだ脱衣所に入ったところなんだけど、ゆうに教室一つ分は有る。

「里の人たちも利用されるので大きいんです、さ、こちらにどうぞ」

 温泉旅館のように二つの壁面が四段の棚になっていて、一段ごとに八つの籠。4×8×2=64、一度に六十人くらいは入れる。浴室に近いところが窪んでいて衝立で目隠しになっている。

「お嬢様、こちらへ」

 瀬奈さんが示したのは衝立の向こうで、入ると四畳半ほど、しつらえが高級になっている。

「こちらがお身内様の脱衣所になっております」

「ここでなきゃダメなのかしら?」

「お好きなところを使われて良いのですが、里の人たちが気を使われますので……」


 ああ、そういうことかと納得して裸になって浴室に向かう。


 え……広すぎる。

 浴室は脱衣所どころではなく、小学校の講堂くらいの広さに大小四つの浴槽がある。

 どうやら温泉で、浴室の外から掛樋が引かれて、盛大に湯煙を立てながらお湯を注いでいる。

 広場恐怖症ではないのだけど、ちょっとたじろいでしまった。

 夏休みのサンフランシスコで入った温泉も学校のプールのような広さだったけど、屋外のスポーツ施設のような感じにたじろぐようなことは無かった。だいいち、シスコのは企業が商売でやっている施設。ここは温泉旅館なんかじゃない個人のお風呂なんだ。

 壁面の一つはゴツゴツの岩壁になっていて、この浴室が、元々は天然の岩風呂だったことを偲ばせる。

 大お祖母ちゃんの家は天守閣さえあれば十分お城で通用しそうな屋敷なのだけど、このお風呂は、それに倍する歴史の重さを感じさせる。松井家の始まりは、ひょっとしたら、この天然温泉の周囲から始まったのかもしれないと思った。

「お背中を流します」

 え?

 いつの間にか瀬奈さんがセパレートの水着で控えている。

「あ、え、あの……」

「嫡流の方のご入浴は、それぞれ役目の者が付きます。いつもわたしとは限りませんが、本日は瀬奈が務めさせていただきます。こちらへ……」

 檜の腰掛に座ると、瀬奈さんがユルユルと賭け湯をしてくれる。

 お風呂で人にお世話されるなんて初めてなので、いささか恥ずかしい。

「……御屋形様と同じ肌をなさっておられます。やはりお血筋なのですね」

「え、あ、そうなんだ(#^_^#)」

「では、こちらへ」

 三杯の掛け湯を済ませると中ほどの浴槽を示された。

 入ってみると、思ったよりも熱くない。熱い風呂は苦手で、家の風呂も冬場でも三十九度度設定にしてある。

「この浴槽が一番穏やかな温度設定になっています、慣れてこられましたらお好みの浴槽をお使いください。あちらの小さいのが一番猛々しくて四十五度ございます。ちなみに、御屋形様は、あちらをお使いになっておられます」

「四十五度……( ゚Д゚)」

 ただでも近づきがたい大お祖母さまが、いちだんと化けものじみて感じられた。

 同性とはいえ瀬奈に身体を洗われるのはきまりが悪かったが、髪を洗ってもらうのはラクちんで気持ちが良い。

「えと……なんだか瀬奈さんの視線をヒシヒシ感じるんだけど」

「あ、申し訳ありません。お風呂のお世話はお嬢様の健康チェックも兼ねております。まだ未熟者ですので、ご不快でしょうね、申し訳ございません」

「あ、いえ、そんなんじゃ(;'∀')」

 自分で指摘しておきながらワタワタしてしまう。


 風呂からあがって驚いた。


 着替えが全て新しくなっている。

 いちばん驚いたのは制服だ。

 三年間着慣れた(高校八年生だが、制服は三年前に買い替えた)ものではなくて、触っただけで分かる新品に替わっていた。

「新しいものと、御屋形様からの御指示でございましたが、制服をお召しになってこられたのはお嬢様の心意気であるとお見受けいたしましたのでご用意させていただきました」

 すばやくメイド服に着替えていた瀬奈さんが、心なし口元をほころばせた。


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  
  • 沢村留美        千歳の姉
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
 

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