鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
マイクロバスを下りると「ヘーラーホップ!」の掛け声が聞こえてきた。
早慶大学の第二グラウンドでは、なんとピラミッドが造られようとしていた!
ピラミッドと言ってもエジプトにあるような山のように大きいものじゃない。高さ10メートルほどの小さなもので、しかも造りかけで、四段3メートルほどの高さしかない。パッと見には、ただ四角い石が台形に積まれているだけで、説明されなきゃピラミッドとは分からない。あたしたちがすぐに分かったのは、あらかじめバスの中で南先生から説明をうけていたから。
「ピラミッド建造の山場なんだ、見れば、いい刺激になる」
バスの中で先生は造りかけの写真を見せてくれた。
ピラミッドは奴隷なんかが造ったんじゃなくて、農民たちが喜んで造ったんだそうだ。ファラオのピラミッドを造ることで、国は平和で豊かになると信じていた。言葉や黒板に書かれた知識だけなら「あ、そう」と記憶してテストが終わったらおしまいなんだけど、「ヘーラーホップ!」を知って、それで一致団結して綱引きで勝ってしまうと実感として分かる。ピラミッドづくりは綱引きの何倍も爽快で達成感があったんだ。
それを実証するかのように学生さんたちの「ヘーラーホップ!」には気合いと勢いがあった。
「そーれ、最後のヘーラーホップ!!」
畳一枚ほどの石室の屋根が砂の坂道を登っていく。
「石室の屋根は二枚の石板だ、あれをどうやって屋根の形に組むか分かるかい?」
先生がニコニコ笑顔で聞いてくる。イタズラの種明かしをするガキ大将みたい。先生の授業はオモシロイだけじゃない、このニコニコ笑顔も魅力なんだ。
「引っ張り上げて組み合わせるんじゃないんですか?」
紗耶香が答える。他のメンバーも「そうだろう」という顔をしている。事実石室の屋根は無事に引き上げられ固定されそうになっている。
「じゃ、そこのミニチュアで石室の屋根を完成させてごらん」
先生が指差した先に50センチほどの造りかけピラミッドがあった。紗耶香がうながして四人ほどで石室の屋根に取りかかった。
「これ、チョー重いよ……」
男子が持ち上げただけで音をあげる。ミニチュアとは言っても材質は同じ石材、10キロ以上はありそう。
「よし、みんなでやろう。タイミングよく組み合わせなきゃ崩れるからな」
聖也が腕まくりして反対側の屋根に取りかかり、みんなもそれに倣う。小さな「ヘーラーホップ!」がおこる、ヨッコが支えていた角がずり落ちそうになり、聖也が手を差し伸べる。その手がヨッコの手に重なると、ヨッコの顔が赤くなる。やっぱ意識してんだ。でも自然な流れの中なんで逃げ出すようなことはしない。ピラミッドは偉大だ。
早慶大学の第二グラウンドでは、なんとピラミッドが造られようとしていた!
ピラミッドと言ってもエジプトにあるような山のように大きいものじゃない。高さ10メートルほどの小さなもので、しかも造りかけで、四段3メートルほどの高さしかない。パッと見には、ただ四角い石が台形に積まれているだけで、説明されなきゃピラミッドとは分からない。あたしたちがすぐに分かったのは、あらかじめバスの中で南先生から説明をうけていたから。
「ピラミッド建造の山場なんだ、見れば、いい刺激になる」
バスの中で先生は造りかけの写真を見せてくれた。
ピラミッドは奴隷なんかが造ったんじゃなくて、農民たちが喜んで造ったんだそうだ。ファラオのピラミッドを造ることで、国は平和で豊かになると信じていた。言葉や黒板に書かれた知識だけなら「あ、そう」と記憶してテストが終わったらおしまいなんだけど、「ヘーラーホップ!」を知って、それで一致団結して綱引きで勝ってしまうと実感として分かる。ピラミッドづくりは綱引きの何倍も爽快で達成感があったんだ。
それを実証するかのように学生さんたちの「ヘーラーホップ!」には気合いと勢いがあった。
「そーれ、最後のヘーラーホップ!!」
畳一枚ほどの石室の屋根が砂の坂道を登っていく。
「石室の屋根は二枚の石板だ、あれをどうやって屋根の形に組むか分かるかい?」
先生がニコニコ笑顔で聞いてくる。イタズラの種明かしをするガキ大将みたい。先生の授業はオモシロイだけじゃない、このニコニコ笑顔も魅力なんだ。
「引っ張り上げて組み合わせるんじゃないんですか?」
紗耶香が答える。他のメンバーも「そうだろう」という顔をしている。事実石室の屋根は無事に引き上げられ固定されそうになっている。
「じゃ、そこのミニチュアで石室の屋根を完成させてごらん」
先生が指差した先に50センチほどの造りかけピラミッドがあった。紗耶香がうながして四人ほどで石室の屋根に取りかかった。
「これ、チョー重いよ……」
男子が持ち上げただけで音をあげる。ミニチュアとは言っても材質は同じ石材、10キロ以上はありそう。
「よし、みんなでやろう。タイミングよく組み合わせなきゃ崩れるからな」
聖也が腕まくりして反対側の屋根に取りかかり、みんなもそれに倣う。小さな「ヘーラーホップ!」がおこる、ヨッコが支えていた角がずり落ちそうになり、聖也が手を差し伸べる。その手がヨッコの手に重なると、ヨッコの顔が赤くなる。やっぱ意識してんだ。でも自然な流れの中なんで逃げ出すようなことはしない。ピラミッドは偉大だ。
「「「「ああ……」」」」と落胆の声があがる。組み合わせた屋根がガタンゴトンと落ちてしまった。
ピラミッドはむつかしい!
ピラミッドはむつかしい!