大橋むつおのブログ

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ライトノベルベスト『ガルパン女子高生・1』

2021-08-15 06:44:55 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『ガルパン女子高生・1』     


 

 ガルパンと聞いて何を想像しますか?

 ミセパン、ハミパン、ガールズパンツなどを連想する方は期待はずれです。

 ガルパンとは、『ガールズ&パンツァー』のことで、大洗の町おこしにも大いに役立ったっていう、スグレモノのアニメです。で、パンツァーとは、ドイツ語でPanzer Kampf Wagenで、戦闘車両=戦車を現します。

 可憐な女子高生が、戦車道にいそしむアニメで、その戦車や戦闘の描写などには定評があり、今でもコアなファンが全国各地に生息していて、この冬にはシリーズ最終映画が封切られます。

 あたしがガルパン女子高生になったのは、二つのきっかけ。

 一つは、スマホの煩わしさ。
 
 ラインなんかやってると、もうヤギさんのお手紙状態。「今なにしてる?」「電車乗ってる」「今は?」「テレビ見てる」「なんのテレビ?」「なまり歌コンテスト!」「なにそれ?」「鉛で歌うたってるの(変換ミス)」「ってか、わけわからん」「アッチャンは?」「前田 敦子かあたしのことか?」「あんたのことに決まってとろうが!」「これからお風呂」「じゃ、しばらくバイバイだね」「うちの、耐水仕様!」「あ、そう」「今から、体洗う」「おお、洗いますか?」「今、どこを洗ってるでしょう?」「え、え、え、どこどこ!?」「ラインじゃ言えません」「この変態オンナ!」などとつまらないこと、この上なし。

 で、止めた。てか、ちょうどヒイジイチャンが亡くなったんで、三日ほど止めざるを得なかったのです。

 家族葬だったけど、親友のアッチャンは来てくれた。

 で、お通夜の晩、シミジミとしてしまった。ヒイジイチャンは97歳だったけど、亡くなる直前まで元気で、あたしのこともよく可愛がってくれた。スマホを買ってくれたのもヒイジイチャン。中学の時、スマホが欲しくて、お母さんにオネダリしたら拒絶された。

「あんなのにハマってどうすんのよ。自腹で払えるようになるまではダメ!」

 と、今時の母親としては珍しいことを言った。うちは、お母さんがダメだと言ったらダメなのだ。

 で、ヒイジイチャンにグチったら、一発で買ってくれたし、毎月の支払いまでやってくれた。

「人間、やって失敗する後悔よりも、やらなかった時の後悔の方が大きい」

 この一言で、お母さん以下家族全員が黙った。

 そのヒイジイチャンが、スマホのお礼を言いに行ったとき(なんせ、本人はスマホもケータイも持っていない)ガルパンを教えてくれた。

「人が死ななければ、戦車ほど面白いものは無い。美保も見てみい」

 で、あたしはガルパンにはまった。

 ヒイジイチャンは、戦時中戦車隊の小隊長をやっていて、戦争がもう一カ月も続いていれば、九州で死んでいたらしい。
 戦後は、陸自で戦車に乗っていた。射撃は特一級で、コンピューターの無かった時代に、30キロでスラロームしながら1000メートル先の的をぶち抜いた腕を持っていた。

 遺品には、ラジコンの戦車が10台ほど出てきた。ヒイジイチャンは、よくこれで、BB弾を発射して遊んでいた。

 子どもみたいなジイサンだと思っていたけど、やってみると案外ってか、すごく難しい。まっすぐに走ることさえ、あたしには出来なかった。

 ラジコンはオモチャだと思っていたけど、ヒイジイチャンはこまめに改造して、相対速度、砲塔の旋回、弾の発射の間隔など実物通りにしていた。

「61式が、世界で一番」と、よく言っていた。

 ネットやらで検索するとアメリカのM47の縮尺コピーみたいな戦車。ちょっと詳しくなると、車高が高いことや、変速機のカバーを車体前面のネジ留めにしたことで、前面装甲に問題があること。変速のタイミングがデリケートで、世界でも操縦の難しい戦車であることなどが分かった。

 でも、日記に、こう書いてあった。

 2000年3月30日、61式全車退役。一度も実戦に出ずに退役した世界で唯一の戦車になった。こんなに目出度いことはない。

 軍隊ってのは、戦わないためにあるんだ。ヒイジイチャンの言葉を思い出した。でも、ヒイジイチャンの理解は、まだ浅かった。

 それは、ラジコンの戦車のメンテをやっているとき、M4戦車の車体の中から出てきたUSBメモリーがきっかけだった……。


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