タキさんの押しつけ読書感想
『池井戸潤:銀翼のイカロス』
昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している読書感想ですが、おったいないので転載したものです。
北方版「水滸伝」「楊令伝」「岳飛伝」……漸く、頭からの読み返しが終わり、久方ぶりの新刊です。
「ロスジェネの逆襲」に続く“半沢直樹”シリーズ第四弾。半沢は本店に戻り、営業第二部次長に返り咲いています。
前回の活躍からすると、平取部長……最低でも、と 思わんでもないんですが、この人 周りの迷惑考えずに喧嘩三昧ですからねぇ、敵を作り過ぎて、合併銀行内融和を図る中野渡頭取としては、あまり優遇人事が出来ないんでしょうね。これが生産現業なんかだと、一発で15人抜き出世しますな。
半沢君、どんどん扱い金額がデカくなり、今回は500億の債権絡み、とうとう政治家も絡んできます。モデルに成っているのは「日航倒産」と「民主党の政権奪取」……いずれも日本を揺るがした大問題ではありますが、割と軽いタッチで仕上げてあります。半沢の行動原理は、ただただ“まっすぐ”ですから、普通は考えにくい選択を重ねて行きます。
通常、本作のような“政策判断”に絡むマターはもっと複雑怪奇で、「快刀乱麻を斬る」なんて事をやっちまうと、後の混乱の方が深刻になります。 まぁ、民主党政権下では、「ありえね~!」と叫びたくなるような醜態が繰り返され、果ては こちらも呆れて笑うしかなくなりましたから……案外このストーリーもリアルなのかもしれませんがね。
半沢が窮地に立たされ、そこから如何に反撃するかのシテュエーションを楽しむ作品ですから、ストーリーには一切ふれませんが、正直、反撃の方法に新し味が無いですね。金融現場では、これしか無いでしょうし、あんまり珍奇な事をされると、それこそリアルが滑り落ちるでしょう。とはいえ、少々先読み出来てしまいます。 その分、中野渡頭取の苦悩と決断を盛り込んで、これまで「謎の人」であった頭取の正体を開かしたりしています。
評価としては、一級の金融小説ですが、第一作「俺たちバブル入行組」を超えられないように思います。
真山仁の「ハゲタカ」程にぶっ飛んだ設定にも出来ないでしょうから、作者としても辛いでしょうねぇ。 本作は、明らかにテレビの2ndシーズン用に急がされた経緯もあると思います。日本ってのはまだまだ貧しいんでしょうね、熟成より消費優先です。決して つまらない訳じゃないんですが、段々軽く成っていると感じるのは私だけじゃないと思います。
半沢はこの辺にして「水滸伝」を読み終えて(直訳本も含めると、通算15~6回読み返してますか?)毎回思うんですが、アタシャ梁山泊頭領/及時雨・宋江っちゅうオッサンに全く魅力を感じません。
同じく「項羽と劉邦」の劉邦や「三国志」の劉備なんかも全くあきません。なんでこんなオッサンを担ぎ上げて、名だたる英傑達が従うのか理解不能。北方謙三にせよ、司馬遼太郎にしても、このオッサン達を魅力的な人物に描こうとしていますが……どうもあきません。
元々の中国原典が問答無用で「この人が親分なんだ」っちゅう書き方で、ある種の「中国人の理想」なんかなぁとも思うんですが、なぁんか納得行かない。三国志をよんでいても、つい呂布に肩入れしたくなります(最強戦士だが、あまりにも馬鹿)、だから、並み居る英傑達が純粋で一本気な所に、何やらウダウダと口先だけのオッサンはウザイのであります。
『池井戸潤:銀翼のイカロス』
昨年の春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している読書感想ですが、おったいないので転載したものです。
北方版「水滸伝」「楊令伝」「岳飛伝」……漸く、頭からの読み返しが終わり、久方ぶりの新刊です。
「ロスジェネの逆襲」に続く“半沢直樹”シリーズ第四弾。半沢は本店に戻り、営業第二部次長に返り咲いています。
前回の活躍からすると、平取部長……最低でも、と 思わんでもないんですが、この人 周りの迷惑考えずに喧嘩三昧ですからねぇ、敵を作り過ぎて、合併銀行内融和を図る中野渡頭取としては、あまり優遇人事が出来ないんでしょうね。これが生産現業なんかだと、一発で15人抜き出世しますな。
半沢君、どんどん扱い金額がデカくなり、今回は500億の債権絡み、とうとう政治家も絡んできます。モデルに成っているのは「日航倒産」と「民主党の政権奪取」……いずれも日本を揺るがした大問題ではありますが、割と軽いタッチで仕上げてあります。半沢の行動原理は、ただただ“まっすぐ”ですから、普通は考えにくい選択を重ねて行きます。
通常、本作のような“政策判断”に絡むマターはもっと複雑怪奇で、「快刀乱麻を斬る」なんて事をやっちまうと、後の混乱の方が深刻になります。 まぁ、民主党政権下では、「ありえね~!」と叫びたくなるような醜態が繰り返され、果ては こちらも呆れて笑うしかなくなりましたから……案外このストーリーもリアルなのかもしれませんがね。
半沢が窮地に立たされ、そこから如何に反撃するかのシテュエーションを楽しむ作品ですから、ストーリーには一切ふれませんが、正直、反撃の方法に新し味が無いですね。金融現場では、これしか無いでしょうし、あんまり珍奇な事をされると、それこそリアルが滑り落ちるでしょう。とはいえ、少々先読み出来てしまいます。 その分、中野渡頭取の苦悩と決断を盛り込んで、これまで「謎の人」であった頭取の正体を開かしたりしています。
評価としては、一級の金融小説ですが、第一作「俺たちバブル入行組」を超えられないように思います。
真山仁の「ハゲタカ」程にぶっ飛んだ設定にも出来ないでしょうから、作者としても辛いでしょうねぇ。 本作は、明らかにテレビの2ndシーズン用に急がされた経緯もあると思います。日本ってのはまだまだ貧しいんでしょうね、熟成より消費優先です。決して つまらない訳じゃないんですが、段々軽く成っていると感じるのは私だけじゃないと思います。
半沢はこの辺にして「水滸伝」を読み終えて(直訳本も含めると、通算15~6回読み返してますか?)毎回思うんですが、アタシャ梁山泊頭領/及時雨・宋江っちゅうオッサンに全く魅力を感じません。
同じく「項羽と劉邦」の劉邦や「三国志」の劉備なんかも全くあきません。なんでこんなオッサンを担ぎ上げて、名だたる英傑達が従うのか理解不能。北方謙三にせよ、司馬遼太郎にしても、このオッサン達を魅力的な人物に描こうとしていますが……どうもあきません。
元々の中国原典が問答無用で「この人が親分なんだ」っちゅう書き方で、ある種の「中国人の理想」なんかなぁとも思うんですが、なぁんか納得行かない。三国志をよんでいても、つい呂布に肩入れしたくなります(最強戦士だが、あまりにも馬鹿)、だから、並み居る英傑達が純粋で一本気な所に、何やらウダウダと口先だけのオッサンはウザイのであります。