魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!
30『情けねえ王子』
薮から棒のような男は、心ここにあらずという顔をしてやがる。
「なんだ、この覗き魔ヤローは!」
「なんだ、この覗き魔ヤローは!」
「あ、その人だったら大丈夫。わたしなんか目じゃないから」
麦藁帽を被りながら、レミが言う。
「目じゃねえ?」
どういう意味だ?
「アニマ……今日もダメだったんだね」
「……あ、レミか。いつもと服装が違うから分からなかった……ああ、似合ってるよ」
「アニマ……今日もダメだったんだね」
「……あ、レミか。いつもと服装が違うから分からなかった……ああ、似合ってるよ」
後ろの「似合ってる」は取ってつけたみてえで心が籠ってねえ……と思ったら、弱っちい女みてえに手で顔を覆って泣きやがる。
「な、情けないやつだよボクは!」
ベルベットのマントにシルクの袖なんかかがゆったりしたドレスシャツ。乗馬ズボンに、金の鎖が付いたサーベルなんか付けていて、見るからに、ハイソな坊ちゃん。顔も、泣いてさえいなかったら、ディズニーアニメの王子さまが務まりそうなイケメンなんだけどな、自分で言ってる通りに情けねえ。
「紹介しとくわ。この人、ゲッチンゲン公国の王子さまで、アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン。こちら、わたしのお友だちで味方のマユよ」
「紹介しとくわ。この人、ゲッチンゲン公国の王子さまで、アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン。こちら、わたしのお友だちで味方のマユよ」
現金なもので、レミは、もう十年来のお友だちの感覚でいやがる。
「よ、よろしく、アニマって呼んでくれていいよ」
「ああ、小悪魔のマユだ。覚えとけ」
「え、あ……悪魔(◎△◎)!?」
「そーだ。ウジウジしてっと呪い殺すぞ」
「ヒーー(>□<)!」
「ああ、それくらいにしてやって、マユ(^_^;)」
「フン」
「今日もダメだったのね……」
「う、うん……」
「強い心で踏み出さなきゃ、いざという時に王子としての義務が果たせなくなるわよ。いすれは、国王にならなきゃいけないんだからね」
「ボ、ボクには、そんな資格はないよ。あの愛しい人一人救えないのに」
「ボ、ボクには、そんな資格はないよ。あの愛しい人一人救えないのに」
「じゃあ、その愛しい人のところに連れていってくれるかしら、現物見てもらった方が分かり易いから」
え、マユに振んなよ(^_^;)!
「ああ、そうだな。見てやってくれたまえ。そして、ボクに知恵と勇気を与えてくれたまえ。このファンタジーの世界の程よいヒーローとしての勇気を」
「もう、ココロザシが低いんだから。ヒーローってば一番に決まってるでしょうが! 程よいなんてありえないわよ!」
レミは、鼻息荒くアニマを叱りやがる。
「そういう帝国主義的なヒーローは、趣味じゃないんだ」
「そうやって、言葉でごまかして責任逃れするんだから」
「あ、立派な馬……」
王子の後ろから立派な白馬が現れた。
「やあ、僕ハイセイコー。アニマ王子の専用のお馬さんだよ」
王子の後ろから立派な白馬が現れた。
「やあ、僕ハイセイコー。アニマ王子の専用のお馬さんだよ」
「馬が喋った!」
驚いた。魔界でもケルベロスとか喋るけどよ。そういうのは見ただけで分かる。この馬はカッコはいいけど普通の馬だ、こいつには『喋ります』ってオーラがねえ。
「ここは、ファンタジーの世界よ。カラスが監視カメラにもなるし、馬だって、喋って当たり前」
「……でも、ハイセイコーって、どこかで聞いたことあるなあ」
「三十年前に、ここに来たんだ。そっちの世界にいたころは競馬場で走ってた(*´ω`*)」
ちょっとはにかみながら、ハイセイコーが言いやがる。
「あ、伝説の競走馬!」
マユの頭の悪魔辞典にも答えが出てきた。
――ハイセイコーは日本の世界的競走馬。1970年代の日本において社会現象と呼ばれるほどの人気を集めた国民的アイドルホース。第一次競馬ブームのヒーローとなる。1984年、顕彰馬に選出され、銅像にもなっている!――
「あ……そんなに感動してくれなくっていいから」
――ハイセイコーは日本の世界的競走馬。1970年代の日本において社会現象と呼ばれるほどの人気を集めた国民的アイドルホース。第一次競馬ブームのヒーローとなる。1984年、顕彰馬に選出され、銅像にもなっている!――
「あ……そんなに感動してくれなくっていいから」
ハイセイコーは、チラッとアニマ王子に目をやった。
「ハイセイコーは、この世界に来てからは、兄のアニムス・ウィリアム・フォン・ゲッチンゲンの乗馬だったんだ。兄が亡くなってからは、役目上ボクを乗せてくれているんだけどね」
「アニマ王子、僕は、キミに乗ってもらって光栄だと思ってるんだよ……そりゃ、お兄さんも偉い王子さまだったけど」
「そうだよ、兄貴は立派だったさ!」
こいつ、だいぶ病んでやがる。
「そうだよ、兄貴は立派だったさ!」
こいつ、だいぶ病んでやがる。
「ま、とにかく、ここで落ち込んでても、なんにもならんないから、行くとこに行こうよ!」
レミが、キッパリと言った。
それは、さらなる森の奥にあったぜ。
丘を超えて小川を渡ったところが、テニスコートほどに開けた芝地になっていて、そこここに、マユには分からない花がいっぱい咲いてる。お花畑っていうやつだ。
それは、さらなる森の奥にあったぜ。
丘を超えて小川を渡ったところが、テニスコートほどに開けた芝地になっていて、そこここに、マユには分からない花がいっぱい咲いてる。お花畑っていうやつだ。
そのお花畑の真ん中に棺が安置されてやがる。
近づくと、それはガラスの棺ってやつだ。
近づくと、それはガラスの棺ってやつだ。
棺の中で眠るように横たわっていたのは……まるで白雪姫だったぜ。
☆彡 主な登場人物
- マユ 人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
- 里依紗 マユの同級生
- 沙耶 マユの同級生
- 知井子 マユの同級生
- 指原 るり子 マユの同級生 意地悪なタカビー
- 雅部 利恵 落ちこぼれ天使
- デーモン マユの先生
- ルシファー 魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
- レミ エルフの王女
- アニマ 異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
- 黒羽 英二 HIKARIプロのプロデューサー
- 光 ミツル ヒカリプロのフィクサー
- 浅野 拓美 オーディションの受験生
- 大石 クララ オーディションの受験生
- 服部 八重 オーディションの受験生
- 矢藤 絵萌 オーディションの受験生
- 片岡先生 マユたちの英語の先生