『その日がやってきた!』
いよいよロケの日がやってきた。
ロケ先の荒川の土手に朝の九時ごろから、タヨリナ三人組で行ったら、もうロケバスが来ていて、ADさんやスタッフの人たちが忙しそうに動き回っていた。
いよいよロケの日がやってきた。
ロケ先の荒川の土手に朝の九時ごろから、タヨリナ三人組で行ったら、もうロケバスが来ていて、ADさんやスタッフの人たちが忙しそうに動き回っていた。
梅の蕾も、まだ硬い二月の末日だけれど、まるで春の体験版のような暖かさだった。
はるかちゃんは、まだロケバスの中なんだろう、姿が見えない。
そのかわりロケバスや、撮影機材が珍しいのか、乃木坂さんがウロウロ。わたしたちに気づいても、軽く手を振るだけ。
やがて、一段下の土手道を黒塗りのセダンが登ってきた。
はるかちゃんは、まだロケバスの中なんだろう、姿が見えない。
そのかわりロケバスや、撮影機材が珍しいのか、乃木坂さんがウロウロ。わたしたちに気づいても、軽く手を振るだけ。
やがて、一段下の土手道を黒塗りのセダンが登ってきた。
「あ、あの運転手さん、西田さんだよ!」
夏鈴が手を振ると『オッス』って感じで、西田さんが手を振った。
手前の土手道で車が停まると、運転席から西田さん。助手席から若い男の人が出てきて、それぞれ後部座席のドアを開けた。
左のドアからは、高橋誠司……さん。
右のドアからは、キャピキャピの女の子が出てきて、目ざとくわたし達を見つけて駆け寄ってきた。
「初めまして、まどかに夏鈴に里沙!」
「あ……ども」
だれだろ……と、考えるヒマもなく、その子はロケバスの方へ。途中で気づいたように振り返って、戻ってきて挨拶した。
「NOZOMIプロの上野百合で~す。よろしくね!」
「上野百合って……?」
「まどかが言ってた新人さん……だよね?」
里沙が首をひねった。男の人は、荷物を抱えて追いかけていった。
「おはよう、乃木坂の諸君。あの子の正体は分かっても内緒にね」
手前の土手道で車が停まると、運転席から西田さん。助手席から若い男の人が出てきて、それぞれ後部座席のドアを開けた。
左のドアからは、高橋誠司……さん。
右のドアからは、キャピキャピの女の子が出てきて、目ざとくわたし達を見つけて駆け寄ってきた。
「初めまして、まどかに夏鈴に里沙!」
「あ……ども」
だれだろ……と、考えるヒマもなく、その子はロケバスの方へ。途中で気づいたように振り返って、戻ってきて挨拶した。
「NOZOMIプロの上野百合で~す。よろしくね!」
「上野百合って……?」
「まどかが言ってた新人さん……だよね?」
里沙が首をひねった。男の人は、荷物を抱えて追いかけていった。
「おはよう、乃木坂の諸君。あの子の正体は分かっても内緒にね」
高橋さんがすれ違いに、そう言って行った。
「……あ、マリ先生!?」
「うそ……!?」
「もう芸名変えたんだ……」
体験入隊の時よりもさらに化けっぷりには磨きがかかっていた。赤いミッキーのチュニックにチェックのカボチャパンツにムートンのブーツ。髪はかる-くフェミニンボブ……で、あのキャピキャピ。どうかすると、わたし達より年下に見える。
そうして、驚くことがもう一つ。
「あ、潤香先輩!」
「うそ……!?」
「もう芸名変えたんだ……」
体験入隊の時よりもさらに化けっぷりには磨きがかかっていた。赤いミッキーのチュニックにチェックのカボチャパンツにムートンのブーツ。髪はかる-くフェミニンボブ……で、あのキャピキャピ。どうかすると、わたし達より年下に見える。
そうして、驚くことがもう一つ。
「あ、潤香先輩!」
潤香先輩が、紀香さんに手をとられながらやってきた。
「マリ先生から連絡もらって」
「上野百合さんだよ」
さすがに立っているのは辛そうで、折りたたみの椅子が出された。
「ありがとう和子さん」
それは、西田さんのお孫さんだった。
「お互いの、再出発の記念にしようって。お嬢……上野百合さんの発案なんです」
「わたし、あなたたちに発表したいことがあるの。お姉ちゃん、ちょっと手をかして」
「大丈夫、潤香?」
「うん。この宣言は立ってやっときたいの」
潤香先輩の真剣さに、わたし達は思わず寄り添ってしまった。
「マリ先生から連絡もらって」
「上野百合さんだよ」
さすがに立っているのは辛そうで、折りたたみの椅子が出された。
「ありがとう和子さん」
それは、西田さんのお孫さんだった。
「お互いの、再出発の記念にしようって。お嬢……上野百合さんの発案なんです」
「わたし、あなたたちに発表したいことがあるの。お姉ちゃん、ちょっと手をかして」
「大丈夫、潤香?」
「うん。この宣言は立ってやっときたいの」
潤香先輩の真剣さに、わたし達は思わず寄り添ってしまった。
「わたし、この四月から、もう一度二年生をやりなおす」
「それって……」
「出席日数が足りなくて……つまり落第」
「学校は、補講をやって、進級させてやろうって言ってくださるんだけどね、潤香ったら……」
「そんなお情けにすがんのは、趣味じゃないの」
「一学期の欠席がなければ、いけたんだけどね……」
「怒るよ、お姉ちゃん。これは、全部わたしがしでかしたことなんだからね」
「先輩……」
わたしも胸がつまってきた。
「ほらほら、まどかまで。わたしはラッキーだったと思ってんのよ。だってさ、あんたたちと、もう二年いっしょにクラブができるじゃない。ね、それもこれも、まどかや先生のお陰……なんだよ」
「出席日数が足りなくて……つまり落第」
「学校は、補講をやって、進級させてやろうって言ってくださるんだけどね、潤香ったら……」
「そんなお情けにすがんのは、趣味じゃないの」
「一学期の欠席がなければ、いけたんだけどね……」
「怒るよ、お姉ちゃん。これは、全部わたしがしでかしたことなんだからね」
「先輩……」
わたしも胸がつまってきた。
「ほらほら、まどかまで。わたしはラッキーだったと思ってんのよ。だってさ、あんたたちと、もう二年いっしょにクラブができるじゃない。ね、それもこれも、まどかや先生のお陰……なんだよ」
ハーーックション!
ロケバスの方で、聞き慣れた大きなクシャミがした。