『よ! 乃木坂屋! 日本一!』
稽古は順調に進んでいった。なんたって、乃木坂さんが堂々と手伝ってくれる。
それまでは、里沙や夏鈴の目を気にしたり、古文みたいなメモを読解しなくちゃならなくって、とっても不便だったんだもん。
平台は一日一個作ることに決めた。なぜかというと、ちょうど最後の一個を作った明くる日が、はるかちゃんのロケになる。
それまでは、里沙や夏鈴の目を気にしたり、古文みたいなメモを読解しなくちゃならなくって、とっても不便だったんだもん。
平台は一日一個作ることに決めた。なぜかというと、ちょうど最後の一個を作った明くる日が、はるかちゃんのロケになる。
そう、みんなで見に行くことに決めたんだ!
乃木坂さんは、浅草の軽演劇や歌舞伎なんかにくわしくって、型をつけてくれる。幕開きの口上のところなんか、大向こうから、かけ声をかけてもらうことになった。
最初は顧問の柚木先生に頼んだだけど、乃木坂さんがイマイチな顔をしている。
そして、なんと、なんと、理事長先生の耳におよんで、理事長先生がやってくださることになった!
最初は顧問の柚木先生に頼んだだけど、乃木坂さんがイマイチな顔をしている。
そして、なんと、なんと、理事長先生の耳におよんで、理事長先生がやってくださることになった!
よ、乃木坂屋! 日本一!
二日に一度くらいのわりで来てくださって、声をかけていかれる。
「高山先生もあいかわらずだなあ」
理事長先生が機嫌よく出て行ったドアに向かって、乃木坂さんがつぶやいた。
「乃木坂さん、理事長先生知ってんの?」
「うん、国史の先生。敗戦の前の年に出征されたんだ」
「あの、乃木坂さん。コクシとシュッセイってなんのこと?」
夏鈴がソボクな質問をする。
「えと、国史は日本史、出征は兵隊に行くこと。高山先生は沖縄戦の生き残りなんだよ」
「へえ、戦争にいってたんだ、理事長先生……」
「沖縄じゃ、ほとんどの兵隊が戦死した。で、より安全な銃後にいた僕たちも死んだ。その中で生き延びてきたことを重荷に感じていらっしゃるんだ」
「ジュウゴって……?」
「銃の後ろって書くんだ。それくらい辞書ひきなよ。さ、一本通すぞ!」
「……なるほど」
スマホで「銃後」を検索して、納得してから稽古にかかるわたし達に、苦笑いの乃木坂さんでした。
この『I WANT YOU』というお芝居は、歌舞伎、狂言、新派、新劇、今時のコメディー、それに、はやりの女性ユニットのポップな歌と踊りまで入っている。
理事長先生が機嫌よく出て行ったドアに向かって、乃木坂さんがつぶやいた。
「乃木坂さん、理事長先生知ってんの?」
「うん、国史の先生。敗戦の前の年に出征されたんだ」
「あの、乃木坂さん。コクシとシュッセイってなんのこと?」
夏鈴がソボクな質問をする。
「えと、国史は日本史、出征は兵隊に行くこと。高山先生は沖縄戦の生き残りなんだよ」
「へえ、戦争にいってたんだ、理事長先生……」
「沖縄じゃ、ほとんどの兵隊が戦死した。で、より安全な銃後にいた僕たちも死んだ。その中で生き延びてきたことを重荷に感じていらっしゃるんだ」
「ジュウゴって……?」
「銃の後ろって書くんだ。それくらい辞書ひきなよ。さ、一本通すぞ!」
「……なるほど」
スマホで「銃後」を検索して、納得してから稽古にかかるわたし達に、苦笑いの乃木坂さんでした。
この『I WANT YOU』というお芝居は、歌舞伎、狂言、新派、新劇、今時のコメディー、それに、はやりの女性ユニットのポップな歌と踊りまで入っている。
最初は楽しそうだと思って、次には、読むのと演るのは大違いということに気づいたころに、自衛隊の体験入隊。がんばろうとリセットができて乃木坂さんの姿が見えるようになって、乃木坂さんの指導よろしく、平台が十枚できたころにはようやくカタチにはなってきた。
がんばろうとすると、ただ台詞を張って声が大きくなるだけで、芝居そのものは硬くつまらないものになっていく。
乃木坂さんは、型になるところは見本までやってくれて、らしく見えるようにはしてくれた。
そこから、あとは台詞を忘れて自然に反応できるようにしろって言うんだ。
はるかちゃんも、チャットで同じようなことを言う。芝居の中で、見るもの聞くものを探し、それに集中しなさいって。でも、それをやると芝居のテンションが下がってくる。
乃木坂さんは、型になるところは見本までやってくれて、らしく見えるようにはしてくれた。
そこから、あとは台詞を忘れて自然に反応できるようにしろって言うんだ。
はるかちゃんも、チャットで同じようなことを言う。芝居の中で、見るもの聞くものを探し、それに集中しなさいって。でも、それをやると芝居のテンションが下がってくる。
「どうすりゃいいのよ!?」
と、ヤケにになりかけたころに平台は、十六枚全部できてしまった。