大橋むつおのブログ

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ライトノベルベスト『しつこいんだよ先生・2』

2021-08-31 06:21:29 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『しつこいんだよ先生・2』    




「へー、こんなとこから出られたんだ……」

「感心してねえで、メット被って後ろに乗れ」

「うん」

 美紀は、素直にバイクの後ろに跨り、俺は背中で美紀の胸のふくらみを感じた。まだ生で見たことはないけど。

 おれはメールで学校のごみ置き場の金網の観音開きが開くことを知っていた。美紀の学校の裏サイトで発見し、グーグルのストリートビューで確認しておいた。そのことと時間だけを指定しておいたんだ。

 5分だけ待つ、それが過ぎたら今日はNGだ。と……。

 美紀の学校から直角に伸びる道に入り、すぐに右折。少しでも美紀の中抜けがばれないための用心。500メーターほど遠回りして鈴木オートに着く。おれの行きつけのバイク屋だ。元族だけど、物わかりのいい鈴木さんに声をかける。

 

「すんません。こいつ着替えさせたいんで事務所借ります」

「いいよ、散らかってるけど」

「ほれ、これに着替えてこい」

 女もののジーパンとトレーナーを渡すと、美紀がウロンな目で俺を見た。

「ばか、姉貴のだよ。洗濯はしてある」

「すみません、じゃ着替えさせてもらいます」

「着替えた制服は、ロッカーの三つめ空いてるから」

「ども」

 美紀は、ついでのように頭を下げて事務所に入った。

「で、一時には帰ってくるんだな?」

「はい。中抜けだから、バレないようにやらないと」

「まあ、あんまりこじれないように。とりあえずは話を聞いてやれ。人間てのは、しゃべれば半分がとこ心が開く」

「お見通しなんですね」

「だてに十年も族はやってねえ。亮介が、こんな無茶やるんだ。本気で切羽詰ってんのは分かるよ。エンジンのチューンも女心もデリケートに変わりはねえ……このバイク、フレームが歪んでんな」

 鈴木さんが、バイクに熱中しはじめたころ、美紀が着替え終わって事務所から出てきた」

「お、髪も変えたんだな」

 美紀はセミロングからポニーテールに変わっていた。

「途中で誰に会うか分かんないからね」

「じゃ、時間厳守な。遅れたら誘拐で警察に電話するからな」

「はいはい」

 その時スマホにメールの着信音。

――素直に寝てますか? 声色上手な亮介くん?――

「ヤベ、副担のネネちゃんだ!」

――ありがとうございます。今から医者にいくとこです――

 と、返してバイクに跨る。

 スカートからジーパンに変わると開放的になる。おれは、そこまで読んでいた。効き目は駐車場に入って一回切れた。

「えー、ここって、いけないホテルじゃないの?」

「誰にも見られずに短時間で、コミニケーショとるのは、こういうとこが一番」

「コミニケーションだけだよね?」

「世界中の神様に誓って」

 おれはコミニケーションと言った。話とは言わなかったぜ……。


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