「文芸春秋」9月号の特集“日韓炎上・文在寅政権が敵国になる日”に掲載されている黒田勝弘、桜井よし子、宮家邦彦三氏の論文は読みごたえがある。しかし、私にとって印象が強かったのは、特集外の木村 幹・崔碩栄両氏による対談記事“韓国は歴史を都合よく創作する”であり、そのキモの部分は「韓国人は日韓併合を無効だったと考えているから、日韓の論争はかみ合わない」(崔氏発言)である。
【韓国人学者の見解】
日韓併合当時の状況を客観的に論じた見解として、「親日派のための弁明」(金完燮キムワンソブ著)(2002年発行)を挙げたい。韓国人向けに韓国語で書かれた同書の序文に次のような記述がある。
私たちは歪曲された教育によって、韓日保護条約(1905年)と韓日併合(1910年)が日本の強圧によって締結されたものであると信じているが、事実はまったく違う。日本と合併することだけが、朝鮮の文明開化と近代化を達成できる唯一最善の道であった点については当時朝鮮の志ある改革勢力のあいだに暗黙の合意があったと思われる。この大韓帝国内部の強力な世論にしたがい、日本が合法的な手続きを経て統治権を接収したとみるのが妥当ではないだろうか。
著者の金氏は、上記の結論に至った根拠を詳細に説明しているが、ここでは省略する。
【日本の立場】
戦争を始めた贖罪意識から、日本は半島を統治・支配したことを謝罪した。“罪”を認めているから、文大統領が日本を“盗賊”と罵っても言い返せない。
【韓国人の立場】
戦後の学校教育において、“日韓併合”を日本の武力による強制だったと教えているから、それが無効だったと信じている。出発点が間違っていたのだから、そのあとに結ばれた1965年の日韓基本協定には何の意味もないと考える。加えて、韓国の歴史は“こうあってほしい”という願望をベースに組み立てられている。
【頑固爺の見解】
“日韓併合”は無効だったとするなら、韓国は日本が日韓基本協定に基づいて支払った金額を現在価値に換算して日本に返金すべきである。さらに、終戦時に日本が韓国に置いてきた資産も現在価値に換算して、日本に返金すべきである。その上で、韓国はいわゆる徴用工裁判でも勝手にやって、関係日本企業の韓国にある資産を現金化したらいい。
しかし、それは韓国にとって受け入れられないだろう。となれば、“日韓併合無効論”は意味をなさない。
さらに、 “日韓併合”は100年前に列強も認めたことであり、今になって韓国が“日韓併合無効論”を唱えることには無理がある。歴史を巻き戻すことは不可能なのである。
結局、韓国には1965年の日韓基本協定を出発点とすること以外に、解決策はないだろう。それが嫌だというなら、トコトンまで消耗戦を続けるしかない。