佐橋と共にいつか実現したいと思っていたことの中のひとつに、当店に長くお通いくださいますお客様方のコレクションを何点かお預かりし、当店で「コレクション展」を開いていただこうというものがありました。
「いつか」という将来は、私どもの店特有のある事情から、なかなか予定を立てることができませんでしたが、まして、私ひとりになってしまいますとお客様の作品をお預かりに伺ったり、またお預かりいたしましてもうまく保管、展示させていただく自信がありませんので諦めなくてはいけないことと思っていましたが、ふと「そうだ、ブログがあるじゃないのぉ」と先日思い立ちました。
「Y氏のコレクション」
このお客様は、当店の開店当時から、いえそれ以前の佐橋の丁稚奉公時代から
美術品をお集めくださっていらっしゃるコレクターさまです。
佐橋とのおつきあいは30年以上、その間お休みされることなく、また多分、全て!あるいは全てに近い作品を佐橋からお求めくださいました。佐橋の急逝を「家族を喪うように悲しい」とお伝えくださり、実際昨年、また一昨年と大切なご家族さまを喪っていらっしゃられたばかりですので、私はこのお言葉を大変もったいなく、そしてその深さに想像さえ及ばない画商とお客様の絆のようなものを感じさせていただきました。私自身も佐橋ととともに毎月お会いするようになり20年となります。また佐橋が体調を崩してからはお返事が書けなくなってしまいましたが、ながく文通もさせていただいております。名古屋のご出身。人見知りでいらっしゃる一面と、けれどはっきりご自身のお気持ちをお伝えになる一面とをお持ちの60代後半に入られるお医者さまでいらっしゃいます。
突然の私の申し出をお受けくださり、早速ご自宅に今飾られていらっしゃる作品を画像でお送りくださいました。ちょうど法事を催されてご来客のみなさまにご所有の作品をご紹介される意味も含めての作品選びでいらっしゃると思います。今は大きな作品よりも小品を手軽に飾り替えされていらっしゃるご様子です。
大きなお庭に面する応接室の壁にはまず東山魁夷の「山湖」
個人コレクターさまのコレクションには「サイズ」とい問題の占める要素が大きいと思っています。ご自宅に飾られるとなりますと、どうしてもサイズに制限がかかります。また長い年月ご所蔵となりますと大きな作品をお飾りになるご負担が心配になります。
小さいながらにその画家のエッセンスが色濃く感じられる作品、そしてその作品自体にかける画家の意欲、集中力そして技術。その結実度を見極めるのが大変難しいことだと感じます。
その横の小さな壁面には、小磯良平の油彩画フランス人形をお飾りです。
この作品についてご本人様からこんなコメントをお寄せいただきました。
小磯先生は神戸の方です
作品は洋風で品があり、私の大好きな作家さんです
いくつもの西洋人形を持っておられ それを描いた作品が幾つかあります
勿論人物画もたくさん描いてみえますが 人形と人 その描き分けがしっかりできるのも小磯先生の実力です
人はその息づかいまでしっかり描ききれないといけない 逆に人形には呼吸も体温もありません シーンとした静けさがあると思います
この作品をY様に初めてご覧にいれるときに、「小磯作品を入手しました」とお知らせせず、壁面にこうしてあるったけの小品を飾らせていただき
宝石箱から小磯をお見つけいただくようにこの作品と出会って戴こうと壁に沢山釘を打ったり、それぞれの作品を飾る場所を2人でああでもこうでもないと相談した時のことを思い出します。
ここで作品に出会っていただく。
出会いの驚き、喜びをより深く味わっていただく。
それがこの店の意味、私たちの仕事の意味であると感じます。
ご自宅の他の場所にお飾りになっていらっしゃる作品の画像も頂戴しております。
また機会をみてY氏のコレクション②の記事を書かせていただきますね。
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