2008年11月12日(水)〈続き〉
正午に若宮神社を出発する。神社付近にも、よい彩りのモミジ
があった。

北へ上がる山道を古峠へ向かう。この道は、武田軍団の軍用
道路でもあったらしい。
木に結ばれた赤ひもに従い、山道を30分ほど上がり、林道に
出た。古峠はすぐ先。峠にも秩父裏街道の標識が立ち、峠を下っ
た赤芝集落には、「鍵懸(かぎかけ)の関跡」というのがあるらしい。
林道を少し進んだが、赤芝への下り道がない。峠のそばに戻っ
たら、「鍵懸の関」の標識がちょっと見にくいパイプに付いていた。
こちらも赤ひもに従い、杉やヒノキの樹林下の谷間を下る。
「かくれ石とマユミの木」の標識があり、傍らのこけの付いた大
きな石の上に、古い石仏が乗っていた。

南向きの斜面に並ぶ赤芝の集落が現れ、赤芝川際に下った。
川の手前に「鍵懸之関遺跡」の標石があり、石仏が数基並び、
関所を模した木戸や東屋(あずまや)などがあった。

鍵懸の関は、旧秩父裏街道にあって、戦国期の武田信玄、勝
頼の時代には、雁坂口の北国防備上の要所であり、信玄の軍事
上の秘密道路ともいわれたという。
赤芝川を渡って赤芝集落に入り、車道を東に向かう。切妻屋根
の中間が高くなっている独特の民家が目につく。

群馬や埼玉などの養蚕地帯では屋根の真ん中上部に、煙出し
屋根があったが、それをかなり大きくしたような感じ。
柿の木が多く、いずれもころ合いの彩りを見せている。次の膝
立集落には、津島神社の前の赤芝川際に、根回り7.2m、樹高
14.7m、「天王ザクラ」と呼ぶエドヒガンの巨樹があり、すっかり
葉を落とした枝を広げていた。

対岸の斜面には、モミジが見ごろだった。
民家の軒下には、干し柿やトウガラシが下がっていて、秋らしい
風情を見せる。

リンゴ畑もあり、色づいたリンゴが重そうに実をつけていた。
集落の外れに新しい炭焼き釜があった。材料の材木や竹を整理
中の2人に聞くと、山の方に釜があったのだが、不便なので昨年
ここに造り直したとか。積んであるのはぶどうの木で、竹炭も作る
ので竹を運んできたとのことだった。

さらに東へ、牧平西から牧平東へ入り、県道206号に合する。
隣接する古宿に古宿遺跡の表示があり、県道の北側に上がった。
遺跡は西保保育所を建設する際、敷地で見つかり、現在は保育
所の下に保存されているらしい。しかし先生の話では、鍵が無い
ので今日は見られないという。保育所の園児は、わずか9人だけ
だった。
曇っていた空が切れ、次第に青空が広がる。県道の北側、増え
てきたブドウ畑や民家を見下ろしながら旧道を進む。陽が当たっ
た山の斜面は、紅葉の彩りが午前中より鮮やかになった。

大村に入ると、行く手に大屋根の寺が見える。西源禅寺で、石
段を上がり大きな山門をくぐると、本堂の前に格好のよい松が枝
を広げ、傍らに十王像と呼ぶコケの生えた石仏が並んでいた。

桜の紅葉がきれいな菅神社で小休止し、中野へ向かい少し下る。
たばこや塩の古い看板の残る店があり、近くの西保簡易郵便局
は、蔵造りのような珍しい局舎。

もと郵便局だったらしい隣の民家の鬼瓦には、〒マークが残っ
ていた。
県道際の若宮神社には大イチョウがあり、その下は落ち葉がい
っぱい。県道を横断して、橋のそばから南側の鼓川沿いに回る。
馬場に入り、車道を横断した先の民家の庭先で、大きな柿を取
っていた。百匁〈ひゃくめ〉柿といい、皮をむいて干し柿にするという。
この近辺の家には、干し柿にする柿があちこちに吊されていた。
鼓川と県道を越えて、再び北側の高台に上がり、西保下の集落
を抜ける。眼下のブドウ畑は、間もなく落ちると思われる葉が、よ
い彩りを見せている。
高原フルーツ園と呼ぶ、変わったぶどう園があり、民具のような
木の細工物や手書きの文字が、たくさん並んでいた。

倉科地区に入った。中屋の慶徳寺の墓地に、2000年5月に亡
くなったプロレスラー、ジャンボ鶴田の一風変わった墓があった。

このあたりも柿が多く、多くの家の軒下には、びっしりと吊し柿が
並んでいる。

日が傾き、間もなく西の山に太陽が隠れそう。われわれは雨に
あわなかったのに、東側の山の向こうには、うっすらとにじが現
れた。

鼓川に近い久保にある、今日の宿に向かって少しずつ下る。急
斜面の中腹に立つ黒戸奈神社には、背の高いイチョウがあり、夕
日で葉が黄金色に輝いていた。

県道を進むと宿の看板が見えた。それに従いブドウ畑の間を進
み、16時18分に民宿あらいに着く。敷地内に火の見やぐらのある
珍しい民宿だ。
ほかに宿泊客はないので、2階の大部屋2つを使わせてもらえる
ことになった。
[コースタイム]甲府YH7・07ー興因寺山7・50~55ー(下り戻り)
8・09ー古湯坊温泉9・00~10ー県道31号へ9・55~10・00ー
太良峠10・34~38ー戸市10・53ー切差の若宮神社(昼食)11・40
~12・00ー古峠12・31ー鍵懸の関跡12・50~13・00ー牧平東
(JA前)13・42~50ー西源禅寺14・13~18ー西保簡易郵便局
14・31ー馬場の公民館15・10~17ー中屋の慶徳寺15・55ー民宿
あらい16・18
(天気 曇後晴、距離 21㎞、累積標高差 2,550m、地図
(1/2.5万) 甲府北部、塩山、歩行地 甲府市、山梨市(旧牧丘
町)、歩数 40,500)
正午に若宮神社を出発する。神社付近にも、よい彩りのモミジ
があった。

北へ上がる山道を古峠へ向かう。この道は、武田軍団の軍用
道路でもあったらしい。
木に結ばれた赤ひもに従い、山道を30分ほど上がり、林道に
出た。古峠はすぐ先。峠にも秩父裏街道の標識が立ち、峠を下っ
た赤芝集落には、「鍵懸(かぎかけ)の関跡」というのがあるらしい。
林道を少し進んだが、赤芝への下り道がない。峠のそばに戻っ
たら、「鍵懸の関」の標識がちょっと見にくいパイプに付いていた。
こちらも赤ひもに従い、杉やヒノキの樹林下の谷間を下る。
「かくれ石とマユミの木」の標識があり、傍らのこけの付いた大
きな石の上に、古い石仏が乗っていた。

南向きの斜面に並ぶ赤芝の集落が現れ、赤芝川際に下った。
川の手前に「鍵懸之関遺跡」の標石があり、石仏が数基並び、
関所を模した木戸や東屋(あずまや)などがあった。

鍵懸の関は、旧秩父裏街道にあって、戦国期の武田信玄、勝
頼の時代には、雁坂口の北国防備上の要所であり、信玄の軍事
上の秘密道路ともいわれたという。
赤芝川を渡って赤芝集落に入り、車道を東に向かう。切妻屋根
の中間が高くなっている独特の民家が目につく。

群馬や埼玉などの養蚕地帯では屋根の真ん中上部に、煙出し
屋根があったが、それをかなり大きくしたような感じ。
柿の木が多く、いずれもころ合いの彩りを見せている。次の膝
立集落には、津島神社の前の赤芝川際に、根回り7.2m、樹高
14.7m、「天王ザクラ」と呼ぶエドヒガンの巨樹があり、すっかり
葉を落とした枝を広げていた。

対岸の斜面には、モミジが見ごろだった。
民家の軒下には、干し柿やトウガラシが下がっていて、秋らしい
風情を見せる。

リンゴ畑もあり、色づいたリンゴが重そうに実をつけていた。
集落の外れに新しい炭焼き釜があった。材料の材木や竹を整理
中の2人に聞くと、山の方に釜があったのだが、不便なので昨年
ここに造り直したとか。積んであるのはぶどうの木で、竹炭も作る
ので竹を運んできたとのことだった。

さらに東へ、牧平西から牧平東へ入り、県道206号に合する。
隣接する古宿に古宿遺跡の表示があり、県道の北側に上がった。
遺跡は西保保育所を建設する際、敷地で見つかり、現在は保育
所の下に保存されているらしい。しかし先生の話では、鍵が無い
ので今日は見られないという。保育所の園児は、わずか9人だけ
だった。
曇っていた空が切れ、次第に青空が広がる。県道の北側、増え
てきたブドウ畑や民家を見下ろしながら旧道を進む。陽が当たっ
た山の斜面は、紅葉の彩りが午前中より鮮やかになった。

大村に入ると、行く手に大屋根の寺が見える。西源禅寺で、石
段を上がり大きな山門をくぐると、本堂の前に格好のよい松が枝
を広げ、傍らに十王像と呼ぶコケの生えた石仏が並んでいた。

桜の紅葉がきれいな菅神社で小休止し、中野へ向かい少し下る。
たばこや塩の古い看板の残る店があり、近くの西保簡易郵便局
は、蔵造りのような珍しい局舎。

もと郵便局だったらしい隣の民家の鬼瓦には、〒マークが残っ
ていた。
県道際の若宮神社には大イチョウがあり、その下は落ち葉がい
っぱい。県道を横断して、橋のそばから南側の鼓川沿いに回る。
馬場に入り、車道を横断した先の民家の庭先で、大きな柿を取
っていた。百匁〈ひゃくめ〉柿といい、皮をむいて干し柿にするという。
この近辺の家には、干し柿にする柿があちこちに吊されていた。
鼓川と県道を越えて、再び北側の高台に上がり、西保下の集落
を抜ける。眼下のブドウ畑は、間もなく落ちると思われる葉が、よ
い彩りを見せている。
高原フルーツ園と呼ぶ、変わったぶどう園があり、民具のような
木の細工物や手書きの文字が、たくさん並んでいた。

倉科地区に入った。中屋の慶徳寺の墓地に、2000年5月に亡
くなったプロレスラー、ジャンボ鶴田の一風変わった墓があった。

このあたりも柿が多く、多くの家の軒下には、びっしりと吊し柿が
並んでいる。

日が傾き、間もなく西の山に太陽が隠れそう。われわれは雨に
あわなかったのに、東側の山の向こうには、うっすらとにじが現
れた。

鼓川に近い久保にある、今日の宿に向かって少しずつ下る。急
斜面の中腹に立つ黒戸奈神社には、背の高いイチョウがあり、夕
日で葉が黄金色に輝いていた。

県道を進むと宿の看板が見えた。それに従いブドウ畑の間を進
み、16時18分に民宿あらいに着く。敷地内に火の見やぐらのある
珍しい民宿だ。
ほかに宿泊客はないので、2階の大部屋2つを使わせてもらえる
ことになった。
[コースタイム]甲府YH7・07ー興因寺山7・50~55ー(下り戻り)
8・09ー古湯坊温泉9・00~10ー県道31号へ9・55~10・00ー
太良峠10・34~38ー戸市10・53ー切差の若宮神社(昼食)11・40
~12・00ー古峠12・31ー鍵懸の関跡12・50~13・00ー牧平東
(JA前)13・42~50ー西源禅寺14・13~18ー西保簡易郵便局
14・31ー馬場の公民館15・10~17ー中屋の慶徳寺15・55ー民宿
あらい16・18
(天気 曇後晴、距離 21㎞、累積標高差 2,550m、地図
(1/2.5万) 甲府北部、塩山、歩行地 甲府市、山梨市(旧牧丘
町)、歩数 40,500)