愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題 448  歌と漢詩で綴る 西行物語 1. 颂春

2025-01-01 08:52:29 | 漢詩を読む

  新年 明けましておめでとうございます。昨年は『源氏物語』の和歌を対象に話を進めて参りました。多くの読者が読まれていることを知るにつけ勇気づけられ、感謝の気持ちで一杯です。

  今年は、ユニークな和歌の巨人・西行(1118~1190)の歌を対象にして、その漢詩化を進めつゝ、『歌と漢詩で綴る 西行物語』と銘打ち、“読みつゝ、西行の生涯が思い描かれるような構成に”  を念頭に進めていくつもりでいます。今年もご愛読、ご声援頂きますようお願い致します。

新シリーズを開始するに当たって、先ずは新年のご挨拶方々、西行の家集『山家集』から目出度い次の春の歌を選び、“颂春”と題した漢詩を添えて、 “仕事初め”と致します:

   門(カド)ごとに 立(タ)つる小松に かざられて

     宿(ヤド)てふ宿に 春はきにけり (『山家集』 春・5) 

  西行は、俗名佐藤義清(ノリキヨ)、出家後は西行(法師、僧名は円位)と号し、生涯、旅に身をおき、歌を詠んだ人である。生涯に約2,300首の和歌を詠まれたとされ、二十一代集の勅撰集で計265首、中でも新古今集中94首と、入撰数第一位とされている。家集に『山家集』など、自選、他撰の多くの歌集がある。

 

和歌と漢詩 

ooooooooooooo     

<和歌>

門ごとに 立つる小松に かざられて

  宿てふ宿に 春はきにけり  [山  春・5] 

 [註] 〇かざられて:飾り付けられて; 〇宿てふ宿に:軒並みにどの家でも。

 (大意) 家々の門には“門松”を立てて飾り、新春の訪れを言祝ぎ、

  また、来たる一年の計を胸に気も新たにするのである。

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<漢詩>

 颂春       新春を言祝ぐ  [上平声一東韻]

每門松枝礼意崇, 

 門(カド)每(ゴト)に 松枝(カドマツ)を立てゝ 礼意(レイイ)崇(タカ)く, 

乾坤淑氣日曈曈。

 乾坤(ケンコン) 淑氣(シュクキ) 日(ヒ)曈曈(トウトウ)たり。

人人歓喜春来到, 

 人人 全(スベ)てが 歓喜(カンキ)す 春の到来, 

来者謀蔵在胸中。 

 来者(コレカラサキ)の謀(ハカリゴト) 胸中(ムネノウチ)に蔵(ヒ)めて。  

  [註] 〇颂春:新春を褒めたたえること; 〇礼意:礼の精神;

 〇乾坤:天と地; 〇淑氣:新春の和やかな雰囲気; 〇曈曈:日が出て明るくなるさま; 〇来者:未来、将来; 〇謀:考え、はかりごと、“来者謀”は “一年の計”; 〇蔵:秘める、隠す。

<現代語訳> 

 新春を言祝ぐ 

家ごとに門松を立てゝ 新春の礼を重んじ、

天地に和やかな雰囲気満ちて 朝日輝く。 

どの家でも春の到来を喜び、 

「一年の計」を胸に思い描く。

<簡体字およびピンイン>  

  颂春                        Sòng chūn 

每门松枝礼意崇,  Měi mén sōng zhī lǐ yì chóng,

乾坤淑气日曈曈。  qiánkūn shū qì rì tóng tóng

人々欢喜春来到,  Rén rén huān xǐ chūn lái dào,  

来者谋蔵在胸中。 Lái zhě móu cáng zài xiōng zhōng

ooooooooooooo 

 西行の父系は、平将門の乱を鎮め、平泉の栄華を築き、また“むかで”退治の伝説で知られる俵藤太ごと、藤原秀郷(ヒデサト)に繫がるとされる。さらにその先は、大化の改新の先駆けをなした藤原鎌足・不比等に繫がるようである。

  なお西行の家は、代々左衛門尉(サエモンノジョウ)であったことから、西行の曽祖父・公清(キンキヨ)の頃、佐藤の姓を名乗るようになったとのことである。

 

井中蛙の雑録

〇これまでに、『百人一首』を対象にして、多くの歌人の歌の読み比べ、次いで紫式部(『源氏物語』)および源実朝(『金塊和歌集』)個人の歌複数をじっくりと鑑賞しつゝ、その漢詩化を試みてきました。

ここに西行の歌を取り上げます。これまでとは異なった“歌世界”が展開されるものと期待しているところです。楽しみつゝ、進めていこうと思っています。

〇 読者のコメントを頂けると有難く思います。いろいろな見方、考えが加わると、より充実した内容になるものと思っています。

〇過ぐる一年は、内外ともに騒々しい一年でした。来る年々、平穏・平和な時であってほしいもの と念じている次第です。

 

 

 


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