2003年に出版された本なので、今読むと、「これから・・・起こること」というよりも、起こっていることの指摘との位置づけになってしまいます。
ただ、その観点から言えば、本書が書かれたころに「起こるであろう」と語られたことは、かなりの程度合致していたと言えるでしょう。
もちろん、現時点ですべて実現してしまっているというよりも、現在でもなお意味のある指摘も多々あります。
そのうちのいくつかをご紹介します。
まずは、変化に対応した「プロセスのつくり込み」の重要性について。
(p99より引用) しばらく前には、業務プロセスというものは、一度改革すれば、しばらくは改革しないということが「常識」でした。
しかし、これからの時代の業務プロセスというものは、不断に変化していくものであり、従って、業務プロセスそのものの中に、その継続的な変化の仕組みを組み込むことが不可欠になってきます。
特にその中でも、「知識」を「組織的に生み出し続けるプロセス」について。
(p108より引用) これからの知識社会においては、「既存の知識をいかにして活用するか」ということよりも、「新たな知識をいかにして生み出すか」と言うことの方が、より大切になってきます。
いや、正確に言いましょう。
「新たな知識をいかにして生み出すか」ではなく、「新たな知識が自然に生まれてくるプロセスをいかにして生み出すか」です。
ここで出てくるのが「創発」というコンセプトです。
(p109より引用) 「創発」とは、英語の「emergence」の訳語であり、「外から何も働きかけがなくとも、自然に秩序や構造が生まれてくる」という現象のことです。
このあたりの「知識創造のプロセス」の解説については、野中郁次郎氏の「知識創造企業」での記述の方が根源的であり、圧倒的に充実しています。
ただ、本書のそもそもの体裁は、精緻な立論や十分な検証を経た思索の開陳というよりも、著者のコンセプトベースのコメントをサクッと順序だてて並べているものですので、これはこれといった読み方をすべきなのでしょう。
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これから知識社会で何が起こるのか―いま、学ぶべき「次なる常識」 価格:¥ 1,680(税込) 発売日:2003-07 |