最近、「行動経済学」が流行っているようです。
本書の原題は「SWAY」。「ゆり動かす・動揺させる・影響させる」といった意味です。
本書では、様々な心理的要因によって不合理な決定をくだす姿を「SWAY」と表現しています。
著者は、人を「不合理な決定」に導く法則として、 「損失回避の法則」「コミットメントの法則」「価値基準の法則」「評価バイアスの法則」「プロセスの公平性の法則」「金銭的インセンティヴの法則」「グループ力学の法則」の7つを挙げています。
その中から、私の興味をひいたものをいくつか紹介します。
まず、「損失回避の法則」。
(p30より引用) 卵の価格が下がると、買う量は少し増える。だが、価格が上がると消費者は敏感な集団になり、価格が下がったときの2.5倍の強さで反応して、消費を控えるのだ。
これは、いわゆる「最寄品」をイメージすると分りやすいですね。
さらに「損失」についての以下の指摘も「確かにそうだ」と感じます。
(p38より引用) 私たちは何かを得る喜びよりも、何かを失う痛みのほうをより強く感じます。そしてその損失のリスクを避けられるなら、多少の犠牲を払うことをいといません(レンタカーの保険の話)。可能性のある損失が大きければ大きいほど、人間はその損失を嫌います。言い換えれば、背負っているものが大きいほど、私たちは不合理な決断に押し流されやすくなるのです。
次に、「コミットメントの法則」。
(p40より引用) ある物事に時間や労力やお金をかけたあとでは、それがうまくいかないとわかっても、止めることができない
これも実例には事欠きませんし、以下の指摘も、全く論理的ではないのですがよく見られる状況です。
(p54より引用) 損失回避とコミットメントという二本の見えない流れが合流すると、極端な楽観主義をもたらす。
また、「価値基準の法則」は、「ハロー効果」と同根です。
(p60より引用) 客観的なデータではなく、最初の印象にもとづいて人やものの価値を判断する
ここでの「印象」は、外見であったり名声であったりします。
外見や名声も、(一部のブランド品のように)それらがその人の重んずる価値の一部である場合には問題は小さくなりますが、学術的な価値や絶対的な事実の評価の場合は、その判断を誤らせることになります。
まさに、わが国でも数年前、この法則に合致する「遺跡出土品の捏造事件」がありました。
著者は、「7つの法則」を説明するにあたって、具体的な実験例を多数紹介しています。
それらの中で、「評価バイアス」の説明にあった「企業の採用担当者の面接での質問」に関するコメントは、私自身の経験と照らし合わせてもそのとおりと思わせるものでした。
それは、
- 客観的に自己評価させる質問や将来を見つめさせるような質問は応募者の模範解答や演技を引き出すだけだ
- 最高ではないが役に立つ情報をある程度もたらしてくれるのは、「わが社について知っていることは?」という質問だ
というものです。
ちなみに、ここでいう「評価バイアスの法則」とは、
(p116より引用) ひとたびある物事に評価をくだすと、それに反する証拠が見えなくなる(p140より引用) 評価ラベルをつけられた人は、実際にラベルどおりの特徴を身につける
というものです。
さて、最後に、本書を読んで、参考になった点をひとつ。
「異議を唱える正義」の章で紹介されているサウスウェスト航空のブロッキントン機長のアイデアです。
(p204より引用) 「私は自分の考えを声に出して言うようにしています。声に出すことで、となりにいる者は、私が何を考えているか常に把握できるのです。副操縦士が私の考えに欠点を見つければ、それを指摘しやすくなります。・・・」
「グループ力学の法則」に対抗するための実践的方法です。
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