明治以来、日本は欧米諸国の後を追いかけ続けていました。初期はヨーロッパを、その後はアメリカを目標に、その国々での先行的な経験や知見をベストプラクティスとして取り込んでいったのです。
著者は、本書で、「今や大衆消費社会という点では、日本が世界の先頭を走っている」という事実(転倒性)をはっきり認識することが重要だと主張しています。
(p40より引用) 今まで、そして現在も、日本人は日本で何か難しい問題が起こると、欧米を見回して、それにならって問題を解決しようとしてきました。しかし、この「転倒性」はその方法論自体を否定してしまうのです。先頭を走っている日本が後ろを振り返って欧米を見たところで、参考になるものはほとんどないというのです。
さて、参考となるモデルがないとすると、解決策は自分で考え出すしかありません。
その出発点は、やはり、「現場・現物・現実」になります。
(p205より引用) 時代の転換期、あるいは、環境が大きく変化するなかでは、いつも現場主義が有効です。日本経済全体にとっての現場、それは、ミクロの世界です。
事象をマクロでつかむのではなく、個々の現実の事象に着目した解決策を打つという方法論です。
具体的には、個別事象から問題点を抽出する。その問題点を「1段階論理化(抽象化)した課題」に止揚する。そして、その論理化された課題を、個別の問題点の解決の場に適用させて、全体整合性のある個別対策を実行するという段取りになるでしょう。
(p216より引用) 成長を重視するのか、格差是正を優先するのかというマクロの政策論争がまったく意味がないとは言いませんが、そろそろきめの細いミクロ政策を積み重ねて政府の政策の構造をしっかり示すべきでしょう。
構造改革というと、規制の緩和を目指すべきだという一言で結論を出す人も少なくありませんが、問題はそう簡単ではありません。それぞれの分野で、規制の緩和をするのか強化をするのか、政府と民間の役割を明確にして、あたらしい日本経済の構造をはっきりさせるべきです。
著者は、マクロ理論の適応の限界を認めた上で、ミクロ政策の充実を訴えています。
本書の後半になると、食料やエネルギーといった資源政策等にも言及し、少々口が滑らかになり過ぎている感じもしないではありません。
が、最近、マスコミ等でも話題になっている著者の最新刊ということで・・・。
間違いだらけの経済政策 (日経プレミアシリーズ) 価格:¥ 893(税込) 発売日:2008-11 |
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