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水木しげる ゲゲゲの大放談 (水木 しげる)

2016-03-06 21:03:38 | 本と雑誌

 いつも行く図書館に、昨年(2015年)にお亡くなりになった水木しげるさんを偲ぶ書棚がありました。
 その中で気になった本、ちょっと前に「墓場の鬼太郎」は何冊か読んでみたのですが、これは、水木さん所縁の方々との対談集です。

 最初に登場する対談相手は“ゲゲゲの女房”武良布枝さん、水木しげるさんの奥様です。
 その奥様が語る水木さんの「プロの矜持」。
 貧乏生活を送っていた水木さんに天下の講談社から掲載の声がかかりました。しかし求められたテーマは「SFもの」、水木さんは、描けないときっぱりと断りました。


(p24より引用) ここで少しでもお金が欲しいと思ってなんでも飛びついて描くという事はしなかった。私は、ああ、なるほど、彼の思いはそうなんだなと強く思いましたね。それはマンガに限らず、戦争で生き残って今日に至るまでの生き方にしてもなんでも、筋は通してますからね。強い信念は持っていたと私は勝手に考えています。それを通して来た。


 こういう水木さんの信念は何か「堅い意思」に拠っているのかといえば、どうもそればかりでもないように思えます。自分の考えを大切にする生きる姿勢は、「生まれつきの性分」として染みついていたようです。
 本書の中でも何人もの方との対談の中で、水木さん自身そういった類のことを語っています。イラストレーター南伸坊さんとの対話での水木さんのことばです。


(p146より引用) 寝ないであくせくと勉強して学校の成績がよくても、やっぱり長生きとか幸福の問題になってくるとあまりパッとしないようだねえ。いわゆる賢い人というのは自分流で幸せになれてるわけですよ。だから、先達の賢い人なんかが言う幸せになる方法なんていうのはまちがってる。水木サンは学校の成績なんかもそんなによくなかったわけですよ。たっぷり寝て、たっぷり食って、ゆったりとわが道を行く生活だったから。・・・他人の意見で生きるってことはしなかった。


 ただ、何の拠り所もなく「わが道を行く」という生き方を徹底していただけというのでもありません。自分の能力についての“自負”“自信”も持っていました。そのあたり、水木さんはこうも語っています。


(p25より引用) 水木サンはストーリーに自信を持っていたんです。その割りに仕事はなかったけど(笑)、ストーリーはいくらでもできたわけですよ。


 そして、日々の水木さんの仕事ぶりたるや、それはそれは凄まじかったようです。


(p25より引用) 私はコマを割る線引きをかなり手伝いましたけども、まだアシスタントも雇えない状況でしたから、こつこつと手間ひまかけて一人で描いていました。一心不乱とはこういうことだと思いました。大の男が心血注いであれだけ熱中して描いている姿に私はなにも意見は言えませんでした。オーバーな言い方になるかもしれませんけど、その打ち込む力たるや、もうなかったですね。


 水木さん自身、当時は家族も顧みなかったと認めていますが、布枝さんの言葉がその鬼気迫る姿をまさに言い表していますね。

 さて、本書ですが、特に水木さんにとって身近な方々との会話が生の形で紹介されているので、水木さんの「そのままの姿」を窺い知るには相応しい本だと思います。改めて感じるのは、水木さんはひとつの「独自の世界観」を築き上げた“凄い人”だったということです。

 

水木しげる ゲゲゲの大放談
水木 しげる
徳間書店
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