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推す力 人生をかけたアイドル論 (中森 明夫)

2024-03-21 13:38:17 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本の棚で目についたので手に取ってみました。

 著者の中森明夫さんは、コラムニストでアイドル評論家。
 中森さんの書き物は雑誌等で目にしたことはありますが、一冊の本として読むのはたぶん初めてだと思います。

 本書は中森さんの “得意ジャンル” である「日本のアイドルの半世紀」をたどったものですが、中森さんが私と同年代ということもあり、登場しているアイドルのみなさんは私も馴染みの方々だろうと期待して読み始めました。

 予想どおり数々の興味深いエピソードの紹介がありました。
 とはいえ、1971年の南沙織さんにはじまり、1980年代のアイドル全盛時代の話題には十分ついて行けたのですが、2000年代、2010年代と時を経るにつれてやはり無理でしたね。“大人数グループ乱立” のころからです。

 そういう中で、私でも首肯できる中森さんのコメントを書き留めておきます。
 “メディア環境の変化が生み出した新たなアイドル誕生” を指摘したくだりです。

(p194より引用) たとえば地方に住む、芸能プロダクションに所属しない1人の少女がいるとしよう。路上でライブをやって、スマホで動画を撮り、YouTubeにアップする。なんと、たった一人でアイドル活動が展開できるのだ。いつでも、どこでも、誰でもアイドルになれる。24時間、世界中に発信できる。これは大変なことだ。アイドルをめぐるメディア環境は、一変してしまった。

 このインターネットのインパクトは絶大でした。「アイドルを目指して上京した」という前近代的なエピソードは雲散霧消してしまいましたね。

 そして、今は “生成AI” の時代。
 さて、リアルアイドルとバーチャルアイドルは、“代替” の関係でしょうか?それともどちらかが他方を “補完” するような関係になるでしょうか?やはり望むべくは、双方が両立して “相乗” 効果(シナジー)を発揮する姿を期待したいですね。

 もう一か所。
 中森さんは、何人ものアイドルがまだ世に出る前の “原石” だったころ、それを探し当てる場に何度か立ち会っています。「国民的美少女コンテスト」や「東宝シンデレラオーディション」などがそれです。選ぶ側も選ばれる側も “将来の姿” を見ています。

(p250より引用) アイドルを「推す」ということは、そう、未来を信じることなのだ。

 このフレーズ、本書を締めくくるにはピッタリです。いいですね。

 

 

コメント
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