新型コロナの影響でいつも行っている図書館が休館になったので、手を付けていなかった本を取り出してきました。
著者によると、破壊的イノベーションで発展した企業、逆には破壊的イノベーションにより衰退を余儀なくされた企業、それぞれの営みを取り上げたとのことですが、やはり「成功事例」の紹介の方が圧倒的に多いですね。
その中から、企業がとったアクション事例をひとつ書き留めておきます。
有名なマイクロソフトのケースです。
マイクロソフトの再興隆の軌跡は、「自分が生き残るためには何をすべきか」ではなく「自分は世界に何をもたらすべきなのか」を考えた結果でした。
パソコン時代、絶対OSのWindowsを擁し覇者として君臨したマイクロソフトは、スマホ時代にはその座をアップルやグーグルに取って代わられました。新たなスマホ用OSの登場に対し、ビル・ゲイツの後を継いだスティーブ・バルマーは、ノキアを買収しスマホへのWindows搭載(ウィンドウズフォンの提供)という戦略を選びました。しかし、その戦略は失敗。新たにCEOに就任したサティア・ナデラはイベントでこう語り、大きく戦略の舵を切ったのでした。
(p224より引用) 地球上のあらゆる場所にいる人や組織に、もっと多くのことができる力を提供すること。それが、私たちのキーワードだ。重要なのは我が社のテクノロジーではなく、我が社のテクノロジーによって他の人は何ができるかだ。
ここに新しいマイクロソフトのバリュー・プロポジションが明示されました。
(p224より引用) ユーザーはウィンドウズというテクノロジープラットフォームのためにマイクロソフト製品を使うのではない、という基本に気づいたのである。ノキア羯末にウィンドウズOSを搭載して普及させるというスティーブ・バルマーが敷いた路線は、「いかに自分が生き残るか」を考えているに過ぎない。
しかし、ユーザーがウィンドウズのOS製品を使っていたのは、そのOSの上で動く企業向けのテクノロジーソリューションである「オフィス」というアプリケーションを使うためだったのである。
そこで、サティア・ナデラは「オフィス」アプリケーションを他社のスマートフォン0Sにも載せることで、ユーザーが使えるようにした。そして、「オフィス」に限らず、すべての製品をクラウドに乗せ、従来のライセンス契約から、サブスクリプションモデルへと移行することとなったのである。
このマイクロソフトのエピソードは、著者が説く「3つの生存戦略」のひとつ “存在価値を見定める” の最も分かりやすい実例だと思います。