
いつも聴いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の酒井順子さんがゲスト出演していて紹介していた本です。
酒井さんは、以前「負け犬の遠吠え」で大いに有名になったエッセイストですが、それも、もう20年も前なんですね。
本書もその酒井さんによるエッセイ。最近のSNSでも頻繁に見られる “マウンティング” や “過度な公平要求” 等をはじめとした「今日的な階級問題」の実態を材料に、酒井さん一流の感性でウィットに富んだ小文に仕立て上げています。
なるほど、といった刺激や気づきに溢れた内容でしたが、それらの中から特に私の関心を惹いたところをひとつ書き留めておきます。
「男性アイドルは無常の風の中に」とのタイトルの一文より、「ジャニー喜多川事件」の影響について言及したくだりです。
(p202より引用) ジャニー喜多川氏が築いた帝国が崩壊した後、日本の男性アイドルの世界は、変わっていくことでしょう。芸能界の特殊さも少しずつ薄れ、世間と同様の常識や法律や倫理観や人権意識が通用する世になっていくに違いありません。
と酒井さんはコメントしていますが、ここでの “芸能界の特殊性” は、「芸能系マスコミの世界」を舞台に、いまだに悪弊を覗かせ続けているようですね。
ポリティカル・コレクトネスやコンプライアンスといった耳新しい言葉が存在感を増しつつある世の中ですが、ひと皮剥くとその下層には、本書の其処此処に登場している “女性差別” “謂れのない序列化” “男性視線” “男女別役割分担論” といった前近代的遺物がまだまだ幅を利かせています。
こういう “ムラ社会の住民” は、昨今のSNS界隈の様子を鑑みるに、まだまだ多数派なのかもしれません。
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