せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

原風景に、ものづくりの方向性がある

2018年05月14日 | ものづくり


写真左一般社団法人 伝統を未来につなげる会フォーラム案内、右「建築家隈研吾作品集」

まず、前談です。
先週月曜日に、ブログアップ出来ていません、涙。

早朝の飛行機で熊本に移動してから、書く予定が。。。。

初めての体験をしました。
それは、飛行機酔い、です。

羽田を発つ時に、
「熊本の天候が悪く、羽田に引き返す可能性もあります。」
という、アナウンスが流れました。

羽田は、晴れ。

まぁ、大丈夫でしょう。と、搭乗したものの、、
熊本に近づくにつれ、揺れる、揺れる〜〜。

無事に到着したものの、
昨日の会食で帰りが遅く、睡眠不足により
気持ちが悪くなってしまいました。

今日は続けて移動する現場打合せの予定を入れておかなくて
良かった、とホッとしつつ、

低気圧では、さらに、事故で痛めた腰が痛むので
休むことに。。。。

自分が倒れてはどうしようもないですからね〜。

熊本に戻れば、両親の病院送り迎えや
図面のブラッシュアップも続くので、大事をとり、
次の日から復活して、全力で頑張った熊本の一週間でした。

前置きが長くなりました。

書く気力取り戻し
先週、綴りたかったことを、アップします。

それは、「ものづくりに関わる人間には、必ず原点や原風景があり、
ものづくりの方向性を位置づけている。」

という、私の持論(!?)が、

この春、展覧会やフォーラムに足を運んで、
木の建築を手がける著名な建築家の原風景のことを知り
より確信に変わったのです。

東京ステーションギャラリーで開催されていた
「くまのもの」という建築家隈研吾氏展覧会では、
木や石、竹、土といった素材の建築への
実験、実証の繰り返しの手法も詳しく展示してあり、
ものづくりの意義と経緯がとてもよく理解できました。



展示会で素敵!と思った焼杉の型でつくったガラス照明器具

木をふんだんに使う提案で新国立競技場を
再コンペで勝ち取った隈研吾氏は、
幼少期土壁の家に住んでいた。(つまり伝統構法の住まいですね)
その土が、剥がれ落ち、家はザラザラしていたそうです。

へぇ〜。

幼少より建築家を目指し、東大卒のエリートである彼は
私が、学生の頃の以前の作品は、
近代的なコンクリート建築で、デコデコのデザインでした。
好きになれなかったのです。(ごめんなさい)

社会の評価が今ひとつだったようで、
木の小屋みたいなものを作り始めて
生意気にも、「ものづくりの方向性、どうしちゃったのかしら?」

と思っていると、、、そのうちに
石の建築を手がけて、評価が高まり

木の建築も積極的に手がけられるようになり、
建築がどんどん、洗練されていって。。。今に至られます。

スタート当初に、苦労された、ものづくりの流れが、
土壁の家から始まっていたとは!?

無垢の木の空間の実体験がおありだったのですね。

プリミティブな印象があった彼の建築作品は、
風土や風景に根ざした建築空間を味わった経験からではないかしら?
と思いました。

そうか。。。私も頑張ろう。。。。

土壁の家が嫌いで、一旦は木造を敵視していた私が
こうして木の住まいや建築、そして伝統構法に関わっているのも、
自分の原点と、その空間を五感で知っているからだと
改めて感じました。

民家再生を施工してくれている工務店の社長さん(私より若いです)も
聞けば、ご実家がそうだったけど、今はないとのこと。

木の良さと、木の大変さと、木の凄さを知っているから
面倒なことも、ややこしいものづくりも
一緒に歩んでいけると思っています。

誤解なきよう、書きます。
原風景がないとダメと言っているのではありません。

もちろん、原風景がなくても
木の建築や伝統的なものに惹かれる方はおられます。

民家再生の仲間には、幼少期の体験はないけど、
蔵の空間に身を置いてから、大好きという方もおられます。

原風景がみつかったのでしょうね。

現実的に、日本の木のものづくりに関わっている建築家は、
実はそう多くはない。という実感があります。

なぜなら、日本の木の話が出来るお仲間が
これまでの就職先設計事務所や建築学科の先輩後輩との関係、
日本建築家協会や建築士会の中におられなかったからです。

それでここ数年は、ちょっと建築業界を飛び出して、
林業関係、製材関係、プロダクトデザイン関係にお付き合いを
変えたました。

昨今は、やっと!?木造ブーム到来で、
さすがに建築士仲間でも木の話はできます。

それから、これまでの個人的行動の先に、日本の木に関わる
コアな建築関係者の出会いも増えてきました。

今年、所属するJIA神奈川が開催する、恒例のなかがわ建築祭は
『「木」がつくる豊かなまちの風景』がテーマでした。

参加できておらず、報告書を読むと、シンポジウムの中で、

「木がトレンドとして扱われてしまっている。
木のもっと真剣に向き合い、木の冗長性を甘くみてはいけない。」と、
木の建築の第一人者である建築家、内藤廣氏から、話があったそうです。

そうそう、慎重かつ丁寧に扱う必要がある「木」。
なめたら、いかんぜよ!

建築素材、というよりむしろ、「命」をあつかっている
というスタンスで、ものづくりに取り組まないと、
しっぺ返しをくらうと感じているし、良さが生かされないとも感じています。

これからも、私の原風景と、原点を自分を客観視しながら、
時代や環境問題を見据えながらも、変なトレンドには流されず、
ものづくりに邁進したいと改めて誓う、年度始めでした。

展覧会へ足を運ぶのも、とても大事にしたいですね。