せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

文化財は本物ではければならない!伝統建築に学び、生かす

2018年10月01日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

↑ブログ後半記事、文化財修復、見学会の様子


台風24号、熊本では激しい強風でした。
みなさまの地域は、大丈夫でしたでしょうか。

台風接近を前に、週末のヘリテージマネージャーの講習会で
実に、28年ぶりに、大学院でお世話になった
K先生の建築士向け講義を受ける機会を頂きました。

お年は召されても、
伝統的な建物にかける情熱は健在。

久しぶりに
「◯◯はダメですよ!!!」

と、懐かしくK節を拝聴した。

熊本の中で行われている、文化財の修復の仕方、活かし方の不備。
文化財の価値が分からず、登録を渋る行政担当の対応への不満を
吠えておられました。

それが、受講生には心地良いのです。

我々が、どこに向かうのか、何に対処すべきか、
学んだことを実務でどう生かすのか、、、
そういったことのヒントが満載だからです。

熊本城も、江戸400年で残っていたところは、
今回の熊本地震でも耐えた(例えば、一本の石垣)

しかし、近代になって追加で復元していたり、新しく
積んだ石積みが崩れ、また今回、修復するというが、愚かであること。

「あれが加藤清正の石垣だと言われるのは、心外」というお話も、
先生の調査時の写真と比較されると

メディアで流されることを鵜呑みにしてはならない
という思いと、

時代を経てきたものへの敬意と

やはり、本物しか残らないのだ、という実感が湧くのでした。

『文化財は本物でなければならない!』

とおっしゃることを、我々の仕事に置き換えると
「本物を創りなさい!」
と、言われているようでもあり、

近代建築は、近代に任せ、
「古き良きものは、そのままそっと残しないさい」
と諭されているようでもありました。

悠久に想いを馳せるならば、今、設計しているものが
後世に、文化財としての価値を残せるのか?

という、問いを投げかけられているようでもあります。

日本建築の文化財としての存在価値。
登録の手続きの仕方、所見の書き方など、
実務的なことも学びながら、

私の日本建築や匠の技、そして、文化としての建築の役割など
ぐるぐると頭の中で、考える良い機会を得ました。

建築のものづくり一つ一つに、正解も結論もなく、
創り手の一人一人が、自分自信の価値観で判断し、
結果は、社会に任せ、時代に委ねる
そういった職能なのかもしれません。

だからこそ、自分が何と向き合い、
何を考えるのかということが大切になってくるのだと思います。

伝統的なもの良さを地震体験で実感した自分が
この体験で得た学びを、どう職能に生かすのか、、、、
その模索の旅はまだまだ続きます。

同日、講習の前に、修復が終わった
文化財の現場見学へも足を運びました。

熊本県最古の木造武家屋敷宇土市の旧高月邸です。


地震後、この周囲をボランティア相談で伺ったことがあり
通りが武家屋敷跡地と知って、
その後の修復が気になっていたこともあり。

ここからは、かなりマニアな話なので
興味のある方、お読みください。

棟札が出てきて、年代がはっきりしていること
(=文化財に認められる必須の基準)


鍵隠しは若松であること


奥座敷(=居間)と台所(=食堂)に炉があること


中級武士であったこと


などを、教育委員会の方から教えていただきました。

実は、修復はまだ道半ば。
予算がついて瓦が葺けるまでは、屋根は一部金属張りだったり
仮のベニヤで補強していたりと、
復元されて公開されるには、まだ道のりがありそうです。

熊本県、最古江戸期の建物であることに加えて、
現存する石造りの水道が価値がとても高いとのこと。

道路に出て、グレーチングの下を覘くと、、、
なんとそこには、石の配管が。

現在も集落では使われているそうです。

「ここは、何度も通っていたけど、知らなかった!」という
地元の方。

写真わかりますかねぇ。

↑草が生えているので、何かあることは分かる

更に、覗いてみないと分からないのものが、こちら

床の間の掛け軸用、左右の金具は動かせるように
廻り縁に細工されているそう。
(現代の床の間でここまでする方はなかなかないですね)



これら細かいネタを教えてくれたのは、
見学会で偶然お会いした、先日人吉でもご一緒した
熊本のヘリテージマネージャーの先輩でした。

若輩者では気が付かない部分まで、
教えてもらって、感謝です!

今後は、私も、伝統的な建築の細工を発見しながら
面白いネタを増やして参ります。

夏休み我が子の成長を感じるとともに自分も成長を!
とブログで宣言した、秋の学びも
9月は最後の日となりました。

さぁ、いよいよ木のものづくりの
実務に生かして参りましょう!

最後までお読みいただき、感謝します。