せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

北海道と北東北を巡る〜日本の住まいの源流を訪ねる旅02〜

2021年11月15日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

松葉を利用した狩小屋(クチュ)ウポポイ内にて

本日は研修旅行の続きとして、
アイヌ文化から学んだことを綴ります。

建築というよりは暮らし寄りの内容です。

1)アイヌ文化に見る縄文の暮らしの名残

そもそも、なぜアイヌ文化や、縄文文化に興味があるのか?
ですよね。現代の建築をつくっているのに。。。

森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクトを始めて以来、
建築が破壊行為にならないよう
森との共生を探ってきました。

人々だけではなく、
生き物や植物含め、あらゆる命のとの
共想の社会をつくっていくこと
を、理想と掲げているわけですが

その中で、古来からの神道(八百万の神信仰=自然信仰)に
ヒントがあるのではないか?と、たどり着きました。

日本人のルーツや、古(いにしえ)の人々の
生き方や、考え方などを学ぶことも重要と考え、

遅ればせながら、民族の歴史や
伝統的な家屋より以前の竪穴式住居とか
茅葺とか、、、
そういったことを研究対象にされている方から
学んだりしてきたわけです。

コロナ禍で、より一層、社会や環境問題+暮らし方も
見直す時代にもなってきています。

そんな背景とともに、縄文文化の豊かな暮らし、
争いのなかった暮らしが見直されていて、

考古学の検証技術も進み、
ますます、注目されている縄文文化。

その名残や原点を垣間見れるのが、
実はアイヌ文化なのだと
知識として頭の中に入ってきて、それが実際にはどうなのか
どう、現代社会に生かせるのか?
ということを考える旅でもあった訳です。

2)アイヌ文化は奥が深すぎて

アイヌ文化については、予習もしていきました。
(ほとんど知識がなかったもので)

そうでなければ、ウポポイ(民族共生象徴空間)の
博物館等でみたアイヌ文化の内容は、
深く入ってこなかったと思います。

熊送りの際の男女を表す木


小熊を飼っていた小屋の模型

中でも、予習で役立った書籍をご紹介します。


アイヌの神話です。
伝承による言い伝えなので、民話とも言えるかもしれません。

ギリシャ神話や北欧神話のような争いはないものの、
やはり神の存在が出てきて、世界で共通する
人類が自然とともに生きて行く、知恵や教訓
人としてのあり方が詰まっています。アイヌの世界観が分かります。

 アイヌの方で、初めての国会議員である 
作家でもある萱野 茂氏の著書

B)チセ・ア・カラ(われらいえをつくる)



書籍はすでに売ってはおらず、図書館で借りました。
昔ながらのやり方でチセを実際に再現した写真集です。

木の皮を剥いで縄を編むところから
掘立柱を共同で立てるところも。
土地の選び方も描かれています。
建築的知識はこの本で学びました。


昨年2020年の出版。
外国の日本人女性研究者が調査した英文(1974年出版)
の和訳本。今、このタイミングでの出版に驚き。
調査は、実に1960年代なのです。

著者に色々と教えてくれるアイヌのフシコさんが魅力的。
当時の暮らしが克明に記されていて、
日本人にとってもお宝な内容。

  ・ ・ ・ ・ ・

そして、実際に触れてみてどうだったか。。。
ですが、とにかく素晴らしかった!!!

アイヌ刺繍の芸術の緻密さとその意味。
薬草などの活用。自然との共生の暮らし。
神聖な行事、熊送り。

アイヌ刺繍の小物(展示はウポポイのチセ内)
刀掛けは製作に3ヶ月くらいと二風谷で実演方に教えもらう


背景を知るのと知らないのとでは、あきらかに
感動が違ったと思います。

モノや情報が溢れる昨今。
古臭いものとしての理解しか得られないのではないか?
と思いました。

修学旅行生(高校生)と出くわしたウポポイ。

私たちが3時間はかかるかな〜と、
じっくり見ている横で、博物館では
実に約15分程で出て行きました。

驚きです。北海道まできて、それだけ!?
何しに来たのかなぁ。。。

「あの頃は、学びよりも友達とはしゃいだり恋愛が目的だったよねー」
と、ご一緒した、かつて乙女だった方と顔を見合わせました、笑。

北海道発の国立博物館ですが

前日に訪ねた

前日に拝観した身としては
少々物足りなかったです。

施設の規模の割に、展示スペースは少なかった。
綺麗な展示で見やすかったですけれど。。。

「擦文文化」さつもんという言葉も初めて知りました。
飛鳥時代の頃だそうです。

*擦文とは、土器の表面に付けられた「木のへらで擦ったあと」

トイチセの模型

土の家(冬の家)

アイヌの楽器 トンコリ(漆塗りタイプ)


木でできていて、自由に誰でも奏でられる。
二風谷では、引かせていただきました。
素敵な音色と身体への響きで本当に癒されます。


3)アイヌ文化は家族愛のある暮らし

それよりも、アイヌ文化を引き次ぐ地元の方々による
ウポポイ内の交流ホールでのアイヌの踊りの披露や
チセ内での、神事や唄が

まさに、茅葺屋根の囲炉裏のある空間での体験となり
大きな感動を覚えました。

聴いているとまるでため息のような、
「ハァァァァ。。。。」が聞こえてきたのですが

アイヌの方の歌い方というのは、
『最後まで息を吐き切ることにある』そうです。

呼吸法!?

踊りは、激しく腰を折り曲げて髪を振り上げるもの。
どちらも撮影禁止のため、写真はお見せできませんが
身体能力を最大限に生かした内容。(鍛える内容)

こちらを拝見できただけでも、足を運んで良かったと
思えるほどでした。

アイヌ文化を拝見しながら、、、
一番感じたのは、ご一緒した講師の先生もおっしゃるように
『家族愛』でした。

家族のために時間をかけて作る女性たちによる刺繍入りの民族衣装や
男性による木彫りの数々。精密で美しい文様。

暮らしって、やっぱり家族愛なのかなぁ。。。
誰かのために時間を割くこと。

現代の暮らしは、一人でも便利で生きられるけれど
強さや余裕がなくては、
あっという間にゴミ屋敷化とする(昨今の社会問題)

分け合う家族がいるからこそ、
人として頑張れるのかなぁ。。。
と、改めて考えさせられた旅でした。

さらに、暮らしの中に息づく
『自然愛』

大きな視点での
『地域愛』

そういったものが、結局は豊かな暮らしを
生み出していくのかもしれない。。。

そんな風に考えさせられました。

長くなっていますが、、もう一つ発見が。

4)神事にみる八百万の神への感謝

チセ内で神事を拝見しました。

現代で言えば、新嘗祭(お米の収穫を祝う)ような神事。
豊かさを祝って、お酒を分け合って、
最後に囲炉裏に酒をかけるのですが、
4隅に撒いていました。

これって、地鎮祭で縄張りの四周や
上棟式で、建物の四周に御神酒を振る舞うのと
同じではないですか!

やはりそうか、、、、
神道的な要素の原点を見ました。

木を削ったフサフサを棒に巻きつけたものイナウ(神事に使う道具)
チセ(家)内では、神棚として、祀られている。

船の先にも


まさに、今の神社で使う「幣(ぬさ)」
幣帛(へいはく)とも言います。お祓いをするときに使う
木の棒に紙を巻いたものです。

の原型とみました。

共通項が多くて、縄文文化のプリミティブな発想が
現代の私たちの生活にも引き継がれている。。。と思うと
やっぱり、興味が湧いてきます。

言葉については、全てに「カムイ」=魂が宿る、アイヌの考え方が
「カムイ」が「カミ」の呼び名になった説もあります。

まだまだ、興味は尽きませんが、長くなりました。

3日目の縄文遺跡に、、、話は続きます。
興味のある方は、次回もお読みくださいませ。

おまけ
ウポポイ内でのレストランにて、ホウバ炭火焼(5人前)
周りのコショウみたいなものは、「縄文パウダー」
玉ねぎの炭焼きと、キハダ(香辛料として)を用いているそう。




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