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↑車椅子用に低く設定された受付カウンターだが
長い板のため、前エプロンの補強があり、足が当たる。
そのため、受付の記帳ができない。惜しい。。
今日から、ノーベル賞の発表週間。
本日は、「医学・生理学賞」が発表されましたね。
ニュースでは、賞の審査基準を聞かれて
「新たな発見」と答えておられました。
そこが選定のポイントなのですね。
賞といえば、バリアフリー賞を受賞したという施設への
バリアフリーアドバイザーの派遣に、先週末伺いました。
その調査対象の施設は、賞を取ったものの
利用者から幾つかの要望や、使いづらさを訴えられており、
施設運営者が、どのように対処したら良いか、という相談でした。
神奈川県からの派遣事業のため、
登録しているバリアフリーアドバイザーが数名伺うことになっています。
今回、ちょうど横浜在住時であったので、参加させてもらいました。
この派遣は、もう数年来続く事業です。
当初の派遣では、古い施設の不便さを改修するには
どうすべきかといった相談内容が主でした。
まだ、バリアフリー条例が整っていない時期の建物もあり
今の基準に合わないのは、仕方がないと思われました。
こちらとしては、理想的な改善提案はするものの、
実際にどこまで改善できるか
予算に応じて、施設側がチョイスする
といったような報告書となっていました。
ところが、今回は、新築の建物であり、
しかも、建築の賞をとったというので
一体何が問題なの?
調査の必要があるのか、事前に疑問に思っていました。
実際は、私たちアドバイザーへの相談の「あるある」の部分と
驚くかな、施設全体の配置計画にまで及ぶ内容がありました。
正直なところ、他の設計者のあら探しになることは避けたいのです。
しかし、根本的に建築としての不具合というものもあり
動かしようのないハードの側面を、
人的にフォローしなくてはならない。
フォローしようと懸命に努力されている
施設運営者が気の毒にさえ思えてくるのでした。
条例で県の基準審査を受けての建設であっても
抜け落ちや、見落とし、または、
条例でカバーできない部分が多くあるということなのでしょう。
調査していて、さすがに設計はいろいろと工夫がなされている様子に
新施設への意気込みを感じるのでしたが、、、、
弱者への視点が、、、やはり欠けていると感じました。
聴覚障害のある方の動線と、
駐車場の車の出入り口が交差し、命の危険すら感じます。
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電柱すぐ横の誘導ブロック。聴覚障害の人が、誤ってぶつからないか
周りもハラハラ。電柱は、新築の場合協議すれば、移動できるのですが
できなかった理由は?、、、。
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階段もEVもトイレも全て同じ導線上にあり
車椅子の人は、その都度、
各出入り口の人との接触の危険もあります。
(施設は、名誉のため写真は避けます)
これらは、当事者アドバイザーにより
ミラーの設置(人の動きが事前に分かるように)を求められました。
動線を重ねない間取りにならかったものか、
あるいは少しの溜まりを作る、
見通しを良くするなどの工夫はできなかったものかと
ちょっと、悔やまれます。
たまたま私たちが、その視点で見るので気が付くのです。
設計や建設者のせいではない、
国そのものの指導がそうなのだから。。。
いつでも、費用対効果を考えなくてはならない建築関係者は
まずは、国の指導にのっとるのであるから、
お墨付きをもらっておいて
あとから、文句を言われてもね〜と
思うのが本当のところではないでしょうか。
そもそも、バリアフリーの考えが、ハードな側面の
整備にとどまっており、運営や使い方にまで及んでいないのが
日本の問題なのです。
私自身、アドバイザーとしての研修を受けたり
車椅子体験をしてみたり、当事者になって考える訓練をしてきました。
そして、バリアフリーの最新建材や情報を知っていなかったら
同じ過ちを冒していたかもしれないのです。
しかし、あえて言うのであれば、想像力でしょうか。。。
ハードな側面の形への創造力から、人が使うことへの
想像力。。。
これがやはり、ものづくりには欠けてはならないと思います。
この派遣事業は、調査だけではなく、報告書のまとめ
そして発表など、非常に、時間を割いてしまいます。
そのため、設計実務との兼ね合いを考えると
あまり気安くは引き受けられません。
それでも、こうやって、出かけていくと、
発見もあり、もどかしさもあり、
そして少しでも世の中の施設が
ユニバーサルな方向へ改善していければと願う想いを
強くするのでした。
今日は、調査での想いを綴りました。
では、今後私たち設計者はどうしていったらいいのか
バリアフリーは国際的には通用しない言葉、
アクセシビリティであると言うべきなど
日本の社会はどうあるべきか、研修で得た気づきや学びは
次回、アップします。
今回は、施設の方、アドバイザーのみなさん、
お世話になりました。
現在、報告書は、項目を整理し、書き留めたところです。
提出までは、しばらくお時間くださいね!