この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

the EYE (アイ)。

2006-07-25 23:13:51 | 新作映画
 オキサイド・パン, ダニー・パン監督、『 the EYE (アイ)』、ビデオにて鑑賞。

 ぶっちゃけて言ってしまうとこの映画に新味はありません。
 例えば角膜移植をしたヒロインが見えざるものが見えるようになるというのは手塚治虫の『ブラック・ジャック』に同様の話がありましたし、主人公に幽霊が救いを求めるというのも『シックス・センス』以下よくあるネタですしね。
 けれど賞味期限が切れた食材を使って美味しい料理が出来ないかというと、必ずしもそうとは言い切れないように、監督であるパン兄弟は使い古されたはずのネタを上手く使って、いい仕事をしています。
 本作はジャンルとしてはホラー映画なんですけれど、かなり自分好みの作品でした。
 どこら辺が自分好みかというと、作り手の視線が全体的にとても優しいんですよ。
 同じくホラー映画で『キャンディマン』という作品があります。まるで『アンパンマン』に出てくるキャラクターのような名前ですけどとんでもない、めっちゃ怖いホラー映画です。何が怖いといってキャンディマンの造形もそうなんですけど、主人公であるヒロインが誰からも信じてもらえない、そのひたすら孤独な状況が自分にはとても怖い。
 『the EYE (アイ)』でもヒロインが似たような状況に直面します。「死んだ人が見えるんです」とか非常識なことを口にするんですから、誰からも相手にされなくなったとしても不思議じゃない。でもここで、本作ではヒロインの言葉を無条件に信じる人物がいるんです。彼は心理療法士なんですが、職業倫理を半ばなげうって、彼女のことを信じようとするんです。
 ありえない、そう思いますよ。心理療法士が大した根拠もなく患者の非現実的な言葉を真に受けるなんて。でもそういうありえない展開ってありえないと思いつつも優しくて好きなんですよね。いいなって思います。
 いい仕事をしていると書きましたが、不満がないわけじゃないんです。特にクライマックスの大惨事で、ネタバレになって恐縮ですけど、ヒロインはそれを予知していながら防げないんです。
 映画としてクライマックスに見せ場を持ってくるのは正しいと思います。SFXもかなり力が入っていて、そのシーンの出来自体はとてもいいです。
 ただ、映画としてその選択は正しくても、一つの物語としては、ヒロインがその惨事を防げないのであれば何のために彼女に少女の霊が乗り移ったのか、まるで意味をなさなくなってしまう、そう思うんです。つまり、ただ見せ場を作るためだけに大惨事が起こったかのような印象を受けてしまうんですよね。
 そのことがちょっと残念に思えました。
 それ以外はとても満足する出来でした。怖い場面はしっかりと怖いし、深夜のエレベーターで背後に顔半分がないジジィがいるって想像したら、そりゃ怖いですよ(笑)、ジーンとくる場面はベタだけどやっぱりジーンときますしね。
 あとヒロイン役のアンジェリカ・リーも美人さんでした。タイとかフィリピンとか、東南アジアってルビー・モレノみたいな如何にもフィリピーノといった女性しかいないのかと思っていたので、そうじゃないってことがわかっただけでも個人的には収穫でした。笑。
コメント (4)
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