この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

観ている間つらくて、面白かった『神は見返りを求める』。

2022-06-25 23:45:41 | 新作映画
 吉田恵輔監督、ムロツヨシ主演、『神は見返りを求める』、6/25、キノシネマ天神にて鑑賞(メンバーシップ会員料金1300円)。2022年21本目。

 普段自分は映画を観たり、本を読んだりしていても、登場人物に共感したり、感情移入することはほとんどありません。
 所詮は創作、作り物ですから、作劇上の矛盾を突きながら作品を追うことが多いです。
 そういった作品への接し方が間違っているとは思いませんが、損をしているかもしれないと思うことはあります。
 世間では絶賛されている『トップガン マーヴェリック』も矛盾が気になってそこまで楽しめなかったですからね。

 しかしこの『神は見返りを求める』の主人公である田母神には鑑賞中、身がよじれるかと思うぐらいに感情移入しまくりでした。
 決して自分に似ているキャラクターだというわけではないのですが(自分は知り合いに借金を申し込まれても100%断る人間なので)、彼の報われなさは自分を見ているようでしたね。

 底辺ユーチューバーの女性と彼女を献身的に支える冴えない中年男性のお話です。
 最初二人は上手くいっているのですが、ふとした切っ掛けで彼女が人気ユーチューバーになると二人の関係はぎくしゃくしたものになります。
 ユーチューバーの悲哀を描いたお話と言えないこともないのですが、というか実際そうなのですが、自分はもっと普遍的なお話だと思うのです。
 モチーフがユーチューブというだけで。

 親切にしたら親切を返してくれよ、と思います。
 お金を借りたら返すのが当たり前なのに、親切にされてもそれを返さないのっておかしくないですか?
 でも実際世の中はそうなんですよね。
 見返りを要求しただけで非難される、それが世の中。
 自分にはつらい事実ですが。

 作中報われない田母神が不憫でなりませんでした。
 人が良いという理由で借金を背負い、仕事を失い、信用を失い、精神を変調していく田母神。
 観ていて本当につらかったですが、希望が見いだせる(かもしれない)ラストはよかったです。
 あそこから二人がやり直せたらいいのだけれど、、、希望的な解釈が過ぎるのかもしれません。

 上映館が少なく、上映していても公開一週目で一日一回の上映とかふざけたスケジュールだったりするので、鑑賞するのは難しいかもしれませんが、出来るだけ多くの人に観て欲しい傑作だと思いました。
 実は、と断るほどのことでもないですが、吉田監督の作品は看ていないものも多いので、出来るだけ早く時間を作って見ようと思います。

 お気に入り度★★★★☆、お薦め度★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント (3)
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