古書店で見つけた古いきもの雑誌。
NHKの趣味悠々の「きものを楽しむ」1997年から98年版です。
今から、17年も前のものです。
クリックすると大きくなります。
この号、とても充実しているのですが、目を引いたのは、「粋な着こなし方法」と題され、その例として載せてある鏑木清方の「築地明石町」。
この絵、何度も目にしています。
鎌倉にある鏑木清方記念美術館にも行ったし、画集でも拝見していましたが、なぜかこれまではそれほど心をとらわれなかった。
ところが、今回、この絵に目を奪われました。
粋とは、
1 気持ちや身なりのさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気をもっていること。
2 人情の表裏に通じ、特に遊里、遊興に関して精通していること。
と広辞苑にあります。
かの名高い九鬼周造氏の「いきの構造」には、「垢抜けしていて、張りのある色っぽさ」とあるそうです。
この本、若い頃にめくった記憶があるのですが、歯が立たず、今も同じでしょう(汗)。
「張りのある色っぽさ」なんて、よくわからないけど、
きりりとした色っぽさということかな。
言葉では捉えにくものを、言葉で捉えようとした面白さなんですね、きっと。
ところが、具体的には、「薄ものをまとう姿~~、きものの柄は縞がよい」などと、例が狭くなる、ところも面白い~~。
「粋」とは捕まえたとおもったら、するりと逃げてしまうものなのでしょう。
で、わからないなりに、この絵に魅かれたのは、いくつものクエッションがあるせいかもしれません。
きものは、納戸地の江戸小紋、そこに三つ紋の黒羽織、朱色の鼻緒の黒塗りの下駄。なんと素足です。
その足元はちょっと開き気味で、かき合わせた袖とともに伝法な雰囲気を漂わせています。
で、この小紋、下に襦袢を着ていません。
三つ紋の黒羽織に、襦袢なし、素足なんて、今の着付けからいうと驚き、です。
昭和初期には、襦袢なしで着る「素袷」という着方があったそうです。
「粋」というと、私は「玄人」さんや歌舞伎俳優の奥様方を思い浮かべるのですが、この方は清方の奥様の友達だそうです。
背景の花は、朝顔?
旧暦の9月、今の10月頃。朝顔って秋の季語でもあるなんて、これも驚き。朝顔帯、秋に締めてもいいのね?
と、いくつものクエッションに包まれたこの絵。もう少し調べてみたい。
どこか投げやりでいながら、この上品さ。
華奢、か弱そうでいながら、姿勢や目線に強さを感じさせます。
「伝法」と「上品」の共存の具合が絶妙。
まあ、いまさら、この粋、域に到達するのは無理ではありますが、こういう風に絵を拝見できるようになったのも、きものを着るようになったおかげです。
ちょっと、リキが入ってしまい、長くなりましたが、
最後まで、ありがとうございました。
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