少し前に「昔の庶民の日本髪、誰が結っていたんだろう」という記事を書きました。
その後、「江戸の結髪師」のことが気になり、書店などで思い出したときに探したりしておりました。
前にも述べたように、結髪師について書いてある書籍、なかなかないのですが、こんな本を見付けました。
「江戸結髪史」(金沢康隆著・青蛙房刊)
いろんな髪型の発祥を説いたものですが、そのなかに「女結髪」という項目があり、そこには興味深い数々の事実が~~。
長いあいだ、女性は自分の手で髪を結うことがたしなみとされてきたそうです。
その「たしなみ」というのが半端ではなく、他人の手を煩わせることは「恥」、それは遊女や芸者の間でもそう思われていたそうです。
そのせいで、武家の女たちの間では、結髪師が登場したあとも、「自分でやるもの」と頑なに他人の手に任せることを拒んでいたとか。
そうなんですね。今とは逆なのね。
「なんぼ大阪でも姫ごの髪結いと男の取りあげ婆はござんせぬ」との言葉にあるように、「とんでもない」存在だったのですね。
ところがご存じのように、女性の髪型、どんどん複雑になっていった江戸の中期、1770年くらいの明和の時代に最初は男の結髪師、その手伝いをしていた女性たちが独立して最初は秘かに、だんだん職業として確立していったようです。
しかし、「女性が髪を結う」ことはさげすまれていたのか、幕府が禁止令を出したりしているようです。
「みをつくし」の澪さんのような女料理人や芸事や絵師、職人など、女性が技術を持つ専門職に着くことは現在以上に大変、覚悟が必要だったようです。
澪さんも「月のさわりのあるものに他人が食べるものを作らせるなんてとんでもない!」なんて言われてました
で、小説に髪結師を主役にしたものがあるのかと、探してみたところ~~。
男の髪結いを主人公にしたのは、宇江佐真理さんのシリーズ。
このシリーズは謎解きが主なので、髪結いについてはあまり詳しくないの。
で、探したのはこちら。
「夕霞の女」と「秘花二日咲きーお寧結髪秘録」(千野隆司著)
これらの本は、故あって結髪師になった女性が、遊女などをきれいにしていくことで、生きる気力を取り戻させるというもの。
やはり謎解きが主だけど、「鬢だらい」という道具とか、伽羅という匂いを含ませた髪油だとか、当時をしのばせる道具だてが記されていて興味深いものでした。
こちらは1840年代の江戸ですから、もうペリーさまが来る頃、幕末ですね。このころには定着していたようです。
で、当時の髪結い賃、どのくらいかというと、男髪結が200文、だいたい六千円。それでも、注文が殺到、その弟子が百文で請け負うようになり大繁盛したとあります。
現在のサロンの値段とあまり変わりませんね。
「髪結いの亭主」という言葉が定着したのもこの頃なんですね。
というわけで、女性が技術を持つって、なぜか「疎まれていた」んだなあ、と改めて、そんなことをおもいいました。
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