女優、原節子という人を今ではどのくらいの人が
知っているのでしょうか。
名前は知っていても、どのくらいの人が
彼女の作品を見ていることか。
小津映画「晩春」での花嫁姿。
かつて「永遠の処女」と謳われ、
その美貌と知性で一世を風靡。
42歳で静かに映画界を去り、
その後、どんなに依頼されても
人前にその姿を現さなかった。
現さないことで、マスコミはよけいに
彼女を追い、神格化していった~~。
昨年(2016年)95歳で亡くなったときには、
なんと号外まで。
彼女の生涯を追ったのが
「原節子の真実」(新潮社・石井妙子著)。
50年以上も、家族以外誰とも親しく付き合わず、
ほとんど外出もせず、ひたすら本を読み、
海外にもいかず、
部屋にこもり続けたなんてすごいな。
なぜ、それほどかたくなに人に会うことを
拒否し続けたんだろうとの興味があって一読。
石井さんの書くものは面白いんですね。
小泉家や小沢・小澤(征爾)家、俳優香川のルーツを追う
「日本の血脈」(文春)や「おそめ」(新潮社刊)
「おそめ」は藤純子さんの生い立ちに決定的な
役割を果たした人ですね。
丁寧な取材と辛辣な視線が読ませる。
で、原節子はなぜ、50年ものあいだ、
ひたすら隠遁生活を送ったのか。
ひとことでいうと!!、
映画界を含む芸能界、マスコミをはじめ家族以外の人が
嫌いだったんでしょうね。
(ひとことで言うな!!)
好きで入ったわけではない映画界。
14歳で家族を養うため映画界入り。
そのなかでの蔑み、嫉妬~~。
今でこそ女優は憧れの対象ではありますが、
往時は蔑すまれ、映画界は嫉妬と陰謀が渦巻く
魑魅魍魎とした世界、
いや、今でもそうかも~~??。
そこに戦争と思想と才能と
監督同士の争いが絡む。
彼女を映画界に引き入れた姉の夫。
映画の選択など公私ともども、
軍国主義など思想的にも大きな影響を受け、
一時は噂にまでなった。
その「尊敬」する義兄の監督の下での撮影中に、
むちゃくちゃな撮影で実の兄を亡くしたり~~。
「お金がたまったら引退したい」と言い続けた。
小津映画でさえ、あまり好みではなかったそう。
若い頃といわゆる最盛期と、
だいぶ印象が違うね。
眉の形や表情で、人って、
こんなにも変わるものなんだね、
いや、そっちですか。
でも、ホントだと思う。
知的で清純、これほどの美人はいない、
と言われ続けたのは、顔立ちも立派だけど、
むしろ彼女の性格やほかの女優にはないモノを
持っていたからだと思う。
迎合しない強さ、というか。
戦争やら家族やらに翻弄され続けた半生。
本人はこんな本、書いてほしくなかっただろうな。
それほど詳しく調べてある。
事実、何度も彼女の家を訪れては取材申し込みの
手紙を渡し、でも甥の家族に丁寧に断られている。
どんな人にでも隠しておきたいことはある、
けど~~、
名を持つって、大変です。
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