4月10日(土)曇り後晴れ。
うなぎと肉。お店によっては鰻はステーキより高い。もちろん鰻より高いステーキもあるが、たまに、頭と体が鰻を食べたいという欲求に支配される時がある。不思議とステーキを食べたいという欲求に駆られることは最近はほとんどない。懐具合を考えたら鰻など贅沢の極みとは分かっていても、たまに、たまにだからと自身に言い訳して、東神奈川の老舗の「菊屋」に一走りした。
上から二番目の物を愚妻と二人前をお土産にして貰った。週刊文春」の平松洋子さんのコラム「この味」で知ったのだが、歌人の斉藤茂吉は大の鰻好きだったそうだ。その証拠に、斉藤茂吉記念館の運営に尽力した、林谷廣氏の著書『文献 茂吉と鰻』という本もある。「ゆふぐれし机の前にひとり居りて鰻を食ふは楽しかりけり」と詠んだ昭和三年には、実に六十八回も鰻を食べている。何と五日に一回の割合で食べているのだ。自宅他、銀座の「竹葉亭」、青山「佐阿徳」、浅草「前川」など都内のあちこちの店に行く。この三店の内、青山の「佐阿徳」は閉店してしまったが、「竹葉亭」と「前川」は営業している。戦時中も鰻の缶詰を幾つもストックしていたと言う。「もろびとのふかきこころにわが食みし鰻のかずをおもふことあり」と詠んだ。
俺も生きたや茂吉のように、鰻と酒のその世界。と「人生劇場」にシャレてみた。