八月二十日(土)曇りのち雨。
いきなり真夏から秋になった。朝方は夏掛け一枚なので寒くて、慌ててジャージを着た。ニュースでは、「和牛オーナー制度」で、多くの人たちから運用資金を集めていた「安愚楽牧場」の経営が行き詰まり、会社更生法の適用を申請し、債権者への説明会が開かれたことが報じられていた。
私は、生まれてこの方、「資金運用」などして金儲けなどしたことがない。誤解されずに言えば、決して、ファンドやこの種の資金運用が悪いとは全く思っていない。銀行金利が、ATMの手数料よりも低いのであっては、多少お金のある人は、その運用を考えてもおかしくはない。
しかし私は、そういったことに全く疎い。本当はファンドと言うものが何か、株でどうして儲かるのか、先物取引とは何か、全く無恥である。金は欲しいが、金儲けの為の努力はする気がない。というのは、口実で、金融投資をする種銭がない。最も、数字に弱い私的には、投資で幾ら儲かるかなど考えるだけでも頭が痛くなる。
まあ、浪人なんて、時代劇に出てくる長屋で傘貼りでもしなが、何か仕事があれば、おっとり刀で掛けつける。そんなもので充分だと思っている。
野村先生から、生前に、口をすっぱくして言われた。「お前は、決して商売などしてはいかん。特に不動産屋の真似をしたり、株に手を出したりしては駄目だ。武家の商法で必ず失敗することは目に見えている。インチキ宗教だって信者がいるんだ。真面目に運動していれば、必ず支持者が現れる。支持者がいないというのは、本人の存在感や、自分の考えを発信する努力を怠っているからだ。蜷川、お前は、大きな花よりも、小さな実を食べて生きろ」。この言葉を肝に銘じて生きている。
「安愚楽牧場」のオーナーシステムと言うものが、どういうものか良く知らないが、例えば、株で損した人が、証券会社に損失補てんを求めるだろうか。金儲けとは、当然リスクが伴うものだ。いい時は、配当を何年も貰っている人も大勢いたからこそ、あそこまで多くの人が投資したのではないか。口蹄疫が発生したときに、賢明な人ならば、どんなに会社に説得されようが、先を見越して資金を引き上げていたはずだ。
そんな素人でも分かる判断を出来ない人たちが、資金運用などをすること自体が甘い、と言われても仕方がないのではあるまいか。世の中に、そう簡単に金儲けなどあるはずがない。リスクのない金儲けなどあれば、世の中に貧乏人などいなくなる。
投資した人には、お年寄りが多いと報道にあった。人生の大先輩たちに聞いてみたいものだ。一体、何歳まで生きて、幾らお金があれば満足なのかと。