スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。
トウカイテイオー は古くから日本で続いてきた母系が出自です。
輸入基礎繁殖牝馬は1923年にアメリカで生まれた星友 。Alzadaという英名がありますので,星友は繁殖牝馬としての日本名でしょう。Alzadaはスペイン語で発生。
戦前から日本で繁殖牝馬になっていたわけですが,産駒の1頭は1937年にダービーを勝っています。トウカイテイオーもダービー馬ですので,一族には日本ダービー馬が2頭います。
活躍馬の多くは僕の競馬キャリア 以前の馬たち。1984年にオークスを勝ったトウカイローマン が,僕の競馬キャリアが始まった後の最初の活躍馬。ただし1984年は競馬キャリア以前ですので,僕はこのオークスについては知りません。ただこの馬の競走馬としてのキャリアは,僕の競馬キャリアが始まったときにはまだ継続していて,始まった後の1987年に京都大賞典を勝ちました。これは騎乗していた武豊騎手にとっての重賞初勝利です。
トウカイテイオーの母はトウカイローマンのひとつ下の半妹です。なのでここは近親で2頭の大レースの勝ち馬が出たことになります。さらにトウカイテイオーの9つ下の半弟のトウカイオーザ は2001年にアルゼンチン共和国杯を勝っていますから,この一族は優秀だったことになるでしょう。また1996年に新潟記念を勝ったトウカイタロー は母がトウカイローマンの母の4つ下の半妹ですから,もう少し分枝を広げても優秀だったことが窺えます。
この一族から活躍馬が絶え,星友の一族からはしばらく重賞の勝ち馬が出なくなりました。星友を母系祖先に持つ馬の中で最新の重賞の勝ち馬は2013年にクイーン賞 を勝ったアクティビューティ 。これがトウカイオーザ以来12年ぶり。その後は7年近く出ていませんから,重賞の勝ち馬は期待できないではないでしょうが,大物の出現となるともう難しいかもしれません。
秋保自身も『スピノザ 力の存在論と生の哲学 』の中に示していますが,このブログでも,デカルト René Descartesの思考モデルとスピノザの思考モデルの相違を指摘しておくことは徒労ではないでしょう。
第一に,デカルトのモデルでは,自己原因causa suiが起成原因causa efficiensに含まれません。いい換えれば,外部に原因をもつもの,たとえばスピノザの哲学でいえば個物res singularisの原因性と,神Deusの原因性は一致しません。
第二に,デカルトのモデルでは,外部の原因性,たとえば個物の原因性が,実在的なものの探求の基礎になります。いい換えれば,神の原因性は実在的なものの探求の基礎とはなりません。
第三に,デカルトのモデルでは,実在的なものについての探求の基礎が,個物の原因性に求められ,神の原因性はその基礎とはならないがために,結果effectusから原因へというベクトルで議論が規制されます。これは一般的な意味でそうであることを必ずしも意味するわけではないのですが,少なくともそのような規制が必要とされる場合があることになります。よって,デカルトのモデルでは,演繹法 という方法は全面的に否定されるというわけではありませんが,帰納法が必ず要求されることになります。
第四に,デカルトのモデルでは,実在に関する原因性と本性essentiaに関する原因性は,異なった原因性として把握される必要が生じます。これもまた,個物の原因性が実在的なものの探求の基礎になるがゆえの要請です。原因性の基礎が個物の原因性にある場合は,ある個物が存在する原因性と,その個物の本性の原因性が同一であるなら,ある特定の個物が消滅すればその個物の本性も消滅するといわなければなりません。いい換えれば同一の本性を有する他の個物もまたそれと同時に消滅するといわなければなりません。しかしこれは不条理です。よって,個物の存在の原因性と個物の本性の原因性は,異なった原因性として把握されなければならないのです。
第五に,神が存在する理由は,神の本性に帰せられることはなく,何か別の要素に帰せられる必要があります。たとえばそれは人間にとっては理解しきれない力potentiaといったようなものです。
スピノザのモデルはこの五点すべてを否定します。
暮れの中山大障害 を勝ったシングンマイケル は3代母のアイルランド産のデュカイナ という馬が輸入基礎繁殖牝馬になります。Dukaynaは11世紀後半のビザンチンの王女の名前。ミスチャネル と同じでファミリーナンバー は21-a 。
日本での初産駒は種付けをされた状態で輸入され,1990年に産んだ牝馬。この馬は繁殖牝馬となり,チアズグレイス の母になりました。また,チアズグレイスのふたつ下の半弟は2002年に共同通信杯と毎日杯を勝ったチアズシュタルク なので,この馬は2頭の重賞勝ち馬を産んだことになります。チアズグレイスが繁殖入りして最初に産んだのも牝馬。この馬も繁殖牝馬となり,2017年のブリーダーズゴールドカップ を勝ったマイティティー の母となりました。
シングンマイケルの祖母はチアズグレイスの母の4つ下の半妹になります。
もう少し広げると,デュカイナの祖母の半妹の産駒も繁殖牝馬として輸入されています。こちらの牝系からは1995年に佐賀の開設記念と東京大賞典,1996年に平安ステークスを勝ったアドマイヤボサツ が出ています。
やり直した第二の証明 から,今回の考察に必要な事項を確認しておきます。
ここでは理由ないしは原因causaといわれていますが,それはすべて起成原因 causa efficiensを意味しています。したがって,原因が起成原因だけを意味するのであれば,単に原因といわれていて構わないことになります。いい換えれば,スピノザは理由という語を絶対に用いないわけではないですが,ここには理由という語を用いなければならない必然性necessitasはありません。そしてそのように解してこの論証Demonstratioを損なうことはありません。秋保の指摘を知るまで僕がこのことを気にも留めなかった要因はこれです。
次に,ここでの原因すなわち起成原因は,すべてあるものが存在することの起成原因に限定されます。これはこのことで何を論証しようとしているかから当然ではありますが,起成原因というのは事物の存在existentiaの起成原因だけを意味するわけではなく,たとえば事物が作用をする原因も意味し得ます。しかし今はそのような場合の起成原因については考慮に入れなくて構いません。
さらに,そうした事物の起成原因は,その事物のうちにある場合と外にある場合があり得ます。事物の起成原因がその事物のうちにあるというのは,その事物の本性essentiaにその事物の存在が含まれているということであり,そうした事物は存在するためにその事物以外の一切を必要としません。しかし事物の起成原因がその事物の外にある場合は,その外にある事物が存在しなければその事物も存在し得ないことになります。
最後に,事物の存在を排除する原因も,そのうちにあるか外にあるかですが,そのうちにあるというのは本性が矛盾を含む,たとえば四角い円のようなものです。公理系の秩序を保つためには第二部定義二 に訴えることはできませんが,スピノザの哲学の全体の中ではこれは第二部定義二の意味 から明白なので,こうした排除要因については考慮しなくて構いません。よって事物の外にある事物の排除要因だけが意味をもつことになります。このときその起成原因は,排除されるものからしたら消極的なもので,理由といわれる余地はありますが,排除するものからみれば積極的な起成原因であることになるでしょう。
先週のスプリンターズステークス を勝ったタワーオブロンドン は,世界的名牝系が出自です。日本での活躍馬を紹介します。
タワーオブロンドンの祖母は競走馬として輸入されたシンコウエルメス 。デビュー前の調教で重度の骨折。安楽死処分もあり得る骨折でしたが,血統のよさから難手術を敢行。競走能力は喪失しましたが一命をとりとめ,繁殖牝馬になりました。タワーオブロンドンの母は,シンコウエルメスがイギリスで産んだ仔です。シンコウエルメスの半兄には1997年にマイラーズカップとセントウルステークスを勝ったオースミタイクーン 。また半姉の産駒に2006年に中京記念を勝ったマチカネオーラ がいます。
牝系の起点となっているのはシンコウエルメスの祖母のMargarethenという馬。ファミリーナンバー は4-n 。
Margarethenの1972年の産駒の子孫には2006年に東海ステークスとブリーダーズゴールドカップ を勝ったハードクリスタル ,1997年に京王杯オータムハンデキャップと府中牝馬ステークスを勝ったクロカミ がいます。クロカミの孫には2011年にレパードステークスを勝ったボレアス ,2013年に弥生賞を勝ったカミノタサハラ 。
Margarethenの1973年の産駒の子孫には,日本馬の重賞勝ち馬はいませんが,2006年に安田記念 を勝った香港のブリッシュラック がいます。
Margarethenの1974年の産駒の子孫には2006年に朝日チャレンジカップを勝ったトリリオンカット 。また繁殖牝馬として輸入されたファーザ がいて,この馬はフリオーソ の母になりました。フリオーソの半弟が2012年に金盃 と大井記念 ,2013年に金盃 を勝ったトーセンルーチェ 。2009年に京成盃グランドマイラーズ と勝島王冠 ,2010年に大井記念 と東京記念 を勝ったセレン も同じ系統の子孫です。
Margarethenの1976年の産駒の子孫には一昨年の日経新春杯と去年の宝塚記念 を勝ったミッキーロケット と2000年に青葉賞を勝ったカーネギーダイアン がいます。
もう1代,2代と遡ればさらに活躍馬が出てきます。今後も多くの重賞勝ち馬が輩出する一族でしょう。
誤謬errorは認識cognitioの欠乏を意味します。よって無限知性intellectus infinitusの一部とみられるような知性が誤謬を犯す場合には,その欠乏している認識する力potentiaが不足しているという意味になります。よって真verumなるものを真として肯定するのに偽falsitasなるものを真として肯定するのと同様の思惟する力を要さないという,第二部定理四九備考 の一節が出てくるのです。しかし,虚偽falsitasである混乱した観念idea inadaequataあるいは誤った観念idea falsaをそれ自体でみるなら,その中に積極的に虚偽を構成する要件が含まれているわけではないのですから,観念を肯定する意志作用 volitioは,それが十全な観念idea adaequataとみられようと混乱した観念とみられようと同等でなければなりません。したがって,同じ備考 の別の一節でいわれているように,意志voluntasが思惟する力全般よりも広くわたるということはあり得ないのです。しかも混乱した観念は,無限知性の一部を構成するとみられる有限知性の中にあるとみられる限りにおいて混乱した観念なのであって,無限知性からみれば十全な観念なのです。一読すると矛盾するかのようにも思える同じ備考の中の個々の一節は,このように解釈することで両立することになります。そしてこれらが両立可能である論拠をスピノザの哲学の中で説明するのには,この仕方が最も適切であると僕は考えます。
しかし,このような説明が分かりにくいものになっていることは僕も認めます。その理由は,僕たちはたとえば無限知性の一部としてみられるような自分の精神mensというのを,大概の場合は認識の主体subjectumとして解しているからです。すなわちこの分かりにくさは,主体の排除 を徹底することが困難であるという事情によるのです。スピノザの哲学は,思惟の主体 が何であるのかということを本質的に問いません。ところが僕たちはたとえば僕が,あるいはあなたがXを認識しているというように認識のあり方を把握します。このゆえに,現実的に存在するある人間の知性のうちに,Xの十全な観念とXの混乱した観念が同時に存在する場合,第四部定理一 によってこれは生じ得る仮定ですが,そのときにXの十全な観念を肯定する意志作用とXの混乱した観念を肯定する意志作用が同等の力を有するのを不自然だと思うのです。
日本ダービー を勝ったロジャーバローズ は母が2008年にイギリスで産まれたリトルブック で,輸入基礎繁殖牝馬になります。ファミリーナンバー は16-f です。
リトルブックはイギリスで10戦して3着が1度あるだけであとは着外です。ですが最初の種付けをされた状態ですぐに繁殖牝馬として輸入されました。これには理由があって,5つ上の半姉でやはりイギリス産のドナブリーニ という馬が先に繁殖牝馬として輸入され,成功を収めていたからです。
ドナブリーニはイギリスでGⅠを勝っていますから,競走成績を評価されて輸入されたものでしょう。最初の産駒がドナウブルー で,2012年に京都牝馬ステークスと関屋記念を勝ちました。
さらに翌年に産まれた全妹がジェンティルドンナ 。2012年 に年度代表馬,2013年 が最優秀4歳以上牝馬,2014年 が年度代表馬と,3年連続でJRA賞を受賞。リトルブックの初仔が日本で産まれたのが2013年ですから,ジェンティルドンナの2012年の活躍が輸入の決め手となったといえます。ロジャーバローズはドナウブルーとジェンティルドンナの姉妹とは従弟になるわけです。
もう少し遡るとドナブリーニとリトルブック姉妹の3代母にあたるBeau Darlingという馬から分枝があります。昨年の埼玉新聞栄冠賞 を勝っている現役のトーセンデューク はその子孫。ほかに現役でオープンを連勝中の馬もいますので,こちらの分枝からも重賞の勝ち馬が出てくる可能性がありそうです。
スピノザが延長の属性Extensionis attributumを神Deusの本性essentiaに帰したことを発端とした論理は,神の無限知性intellectus infinitusであれその無限知性の一部である人間の精神mens humanaのうちにであれ,円の十全な観念idea adaequataが存在するなら,この十全な観念の対象ideatumである円が,無限知性ないしは人間の精神を離れて形相的にformaliter存在しなければならないということを帰結させます。そしてスピノザは,自身が示している,一端が固定しもう一端が運動する直線によって作成される図形である,という円の定義Definitioは,知性が円を概念するconcipereために資する定義であるということを認めているのです。したがって,たとえばある人間が精神の能動 actio Mentisによってこのように円を概念するなら,その観念は円の十全な観念であるということになります。よってその観念の対象である円は,その人間の精神の外に形相的有esse formaleとして存在しなければなりません。ところが一方で,スピノザはこの円の定義に虚構が含まれているということも認めるのです。いい換えれば,知性なり精神なりを離れて形相的にある円の起成原因causa efficiensは,このような直線の運動motusではない,少なくともそうでない場合もあり得るということを認めているのです。これらのことがなぜ両立し得るのか,そこには矛盾があるのではないかという主旨の疑問が生じて不思議ではないように僕は以前から思っていました。
これに加えて,次のような事情,デカルト René Descartesやスピノザ自身の哲学との関係ではなく,それを解釈する側からみた場合の事情というのが影響してきます。
デカルトの数学というのは,認識cognitioの世界の学問として限定されています。よってこれはきわめて認識論的に,あるいは観念論的に数学という学問を規定づけているといえるのではないかと思います。なので,もし唯物論的な思考に慣れている人がいたら,このような数学の規定というのを不思議に,あるいはとても奇妙なものと思ったとしておかしくありません。ものの思考の仕方には確かに慣れというのがあるのであって,僕自身もスピノザ哲学的な思考に対する慣れというものがありますから,そこから大きく逸れるような思考の仕方が記述されていたり主張されていたりする場合には,理解するのに時間が掛かるということがあるのです。
オークス を勝ったラヴズオンリーユー の母は2006年にアメリカで産まれたラヴズオンリーミー という馬で,日本への基礎輸入繁殖牝馬になります。ファミリーナンバー は20 。
種付けされた状態で繁殖牝馬として輸入され,最初の産駒が産まれたのは2010年。翌2011年産まれの産駒はオープン特別まで勝ちました。その後に輸出されています。
3番目の産駒がリアルスティール で,2015年に共同通信杯,2016年にドバイターフ ,2017年に毎日王冠を勝っています。
4番目の産駒は現役。2歳のときにオープンを勝ち,重賞2着2回3着1回ですから,重賞制覇のチャンスはまだありそうです。
ラヴズオンリーユーは7番目の産駒にあたります。ラヴズオンリーミーの繁殖牝馬としての優秀性を証明しました。
ラヴズオンリーミーの祖母は世界的名牝のMiesque。ヨーロッパとアメリカでGⅠを10勝しました。繁殖入りし最初に産んだのがKingmamboでフランスとイギリスでGⅠ3勝。種牡馬となりエルコンドルパサー やキングカメハメハ の父になりました。
2007年にファンタジーステークスを勝ったオディール は,祖母がMiesqueのひとつ下の半妹になります。
Miesqueの祖母のSanta Quillaから分枝があり,Santa Quillaの曾孫にあたる2000年にアメリカで産まれたパーソナルレジェンド も繁殖牝馬として輸入されています。その初年度産駒が2010年にレパードステークスとクイーン賞 ,2011年にレディスプレリュード とJBCレディスクラシック ,2012年にマリーンカップ とレディスプレリュード とJBCレディスクラシック ,2013年にエンプレス杯 を勝ったミラクルレジェンド です。さらにミラクルレジェンドのひとつ下の半弟は,2012年にエルムステークスとみやこステークスと東京大賞典 ,2014年にエルムステークスを勝ったローマンレジェンド です。
世界的な名牝が祖先にいるわけですから,日本の生産界にも,その一族を繁栄させていく責任があると思います。
その範疇をどれくらいまで広げることができるのかは僕には不明ですが,スピノザによって高い評価の対象となる数学者が存在するということは間違いありません。同時にそうした数学者にとってはスピノザの哲学が,自身が研究している数学を形而上学的に支えてくれるものとなるでしょう。
ここからは僕が『主体の論理・概念の倫理 』を読む前から漠然と感じていたことを考察の対象にします。
上述したように,スピノザと,いってみれば相思相愛であるような数学者が確実に存在します。他面からいえばスピノザの哲学とウインウインの関係にある数学が確実に存在します。ですがこの理由だけで,そういった数学者がスピノザの哲学に満足するかどうかが僕には不確実に思えるのです。いい換えれば,そうした数学者をもってしても,スピノザの哲学に対してある種の違和感を覚えることがあるのではないかと僕には思えるのです。それは,なぜスピノザが幾何学的方法すなわち綜合的方法を必要としていたのかということと関係します。
第一部定理一五備考 が示すように,スピノザは実体substantiaとしての量を概念conceptusとして必要としていました。これは哲学的にいうと物体的実体 substantia corporeaを必要としていたということになるのですが,それだけでは説明の半分しか適合していません。スピノザは単に物体的実体を必要としていたわけではなく,計測することが不可能で部分に分割することができないものとしての物体的実体を必要としていたからです。物体的実体の存在existentiaを認める哲学者はスピノザのほかにも存在しますが,そうした哲学者がおしなべて物体的実体をそのような実体として規定したというわけではありません。スピノザが第一部定理一三系 で,わざわざ物体的実体に言及しているのは,この系Corollariumの内容がすべての哲学者の共通見解ではなかったからです。むしろ時代的にいうなら,スピノザのような主張は異質なものだったのであり,スピノザが無神論者といわれるのは,このことが一因となっているといっていいくらいです。スピノザはこの物体的実体を延長の属性Extensionis attributumと等置し,延長の属性は神Deusの本性essentiaを構成すると主張したのでした。この主張の前提が,実体としての量です。
日曜のヴィクトリアマイル を勝ったノームコア の基礎輸入繁殖牝馬は3代母のラスティックベル です。1990年にアメリカで産まれ,繁殖生活は日本で送りました。日本での最初の産駒が1995年産まれで,まだ四半世紀が経過していませんが,多くの活躍馬が輩出されています。Rustic Belleは田舎風のベル。ファミリーナンバー は20-a 。
2番目の産駒はフサイチエアデール 。1999年にシンザン記念と報知杯4歳牝馬特別に勝ち,2000年にはダービー卿チャレンジトロフィーとマーメイドステークスも勝ちました。マーメイドステークスの2着馬は同世代のトゥザヴィクトリー 。繁殖牝馬となり,最初の産駒がライラプス 。2005年にクイーンカップを勝ちました。さらに2番目の産駒はフサイチリシャール です。
3番目の産駒は未出走。この馬がノームコアの祖母になり,ノームコアのひとつ下の半妹が今年のクイーンカップを勝っている現役のクロノジェネシス になります。また,このクイーンカップの2着馬はフサイチエアデール産駒で,2頭とも,明後日のオークスへの出走が予定されています。
8番目の産駒も未出走。この馬は繁殖牝馬となり,2015年の札幌2歳ステークスを勝っている現役のアドマイヤエイカン の母になりました。
子孫の重賞の勝ち馬はこれだけですが,ほかにも重賞の入着馬やオープンの勝ち馬も出ています。牝馬が多く,牝系は広がっていますし,ノームコアやクロノジェネシスも無事なら繁殖牝馬となるでしょうから,活躍馬もまだまだ出てくるでしょう。
僕の競馬キャリア が始まる前の1983年に小倉3歳ステークスを勝ち,始まる直前の1986年には京王杯スプリングカップを勝った後,1988年にはCBC賞を勝ったトーアファルコン という馬がいました。この馬の祖母はラスティックベルの3代母になります。
ここまでの考察から,マイエル Lodewijk Meyerやスピノザにとっての数学的方法というのは,第一義的には幾何学的方法を意味していたと僕は解します。この幾何学的方法を哲学に応用するとそれは綜合的方法ということになり,それが哲学的方法として最善であるとマイエルもスピノザもみなしていました。ただしこの綜合的方法は分析的方法に置き換えるということが可能で,置き換えられる以上は,分析的方法もまた数学的方法であるということは,マイエルもスピノザも肯定すると僕は解します。なお,哲学的方法のうち綜合的方法が数学の幾何学的方法であるように,哲学的方法のうちの分析的方法もまた何らかの数学的方法に変換することが可能であるかもしれませんが,これについては言及されていませんので,ここではそういうものは存在しない,あるいはマイエルやスピノザのうちには,そういう方法は認識cognitioとして存在していなかったと解しておきます。また,分析的方法が数学的方法のひとつであるということが肯定され得るのは,この事情からだとそれが綜合的方法と置き換えが可能であるという点にのみ存することになりますから,もし綜合的方法には置き換えることができないような分析的方法というのが存在するのだとすれば,それは数学的方法すなわち幾何学的方法からは外れるものであるとマイエルもスピノザもみなすことになるでしょう。そういう分析的方法が実際に存在するのかどうかは不明としておきます。
『主体の論理・概念の倫理 』の三者鼎談の中で,上野修は,スピノザは幾何学的証明を数学的な学問だと考えていたと発言しています。ここでいう証明Demonstratioというのは,定義Definitioや公理Axiomaを前提とした証明のことです。そして上野は,スピノザはこのように考えていたがゆえに,経験を参照せずに対象を創出していくのが数学であるとみなしていたという主旨のことを言っています。このことは僕の中心的な論考とも繋がるのですが,今はそこには立ち入りません。スピノザと同じ時代でいえば,ホッブズThomas Hobbesは命題計算を考え,ライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizは命題を記号化したり結合法を考えたりしていたのですが,スピノザにはそういった発想がなかったということの方を検討します。
クイーンエリザベスⅡ世カップ を勝ったウインブライト の基礎輸入繁殖牝馬は5代母で1952年にニュージーランドで産まれたミスブゼン です。この馬は競走馬として輸入され,京都牝馬特別を勝つなど活躍。その後に繁殖牝馬となりました。名前に日本語が含まれているのはそのためです。フローラルマジック と同じでファミリーナンバー は18 ですが,とても遠い関係です。
孫の世代に中山大障害を勝った馬がいますがこれは僕が産まれる前。産まれた後にやはり孫の世代から,最優秀2歳牝馬も出ていますが,これは僕の競馬キャリア が始まる前。始まった初期の頃にも,活躍馬が3頭出ました。
1頭は1988年にオークスを勝ったコスモドリーム 。このオークスはテレビで勝ち馬を間違えて実況するというハプニングがあったレース。1番人気はアラホウトク でした。
同じ年に阪神3歳ステークスを勝ったのがラッキーゲラン 。1990年には函館記念と毎日王冠にも勝ちました。
その1990年に阪神大賞典と日経賞を勝ったのがオースミシャダイ 。大レースには手が届きませんでしたが,長距離で実績を残した馬。翌年の春の天皇賞ではメジロマックイーン の3着に入っています。
少し経ち,1994年にラジオたんぱ賞を勝ったのがヤシマソブリン 。菊花賞ではナリタブライアンには千切られたものの2着になりました。
ここからこの系統は重賞の勝ち馬が出なくなりました。もう活力が衰えたと思いきや,2012年にハクサンムーン が京阪杯を勝ちました。翌2013年にはアイビスサマーダッシュとセントウルステークスを連勝。スプリンターズステークス こそロードカナロア の2着でしたが,セントウルステークスではロードカナロアが休養明けだったとはいえ斥けていて,同時代でなければ大レースを勝てていたかもしれません。
ウインブライトは2017年にスプリングステークスと福島記念を勝つと昨年は中山記念に勝利。今年に入って中山金杯,中山記念,クイーンエリザベスステークスと重賞を計6勝。これだけの時間を経て,一族から最大の活躍馬が出てきたことになります。
備考Scholiumのこの部分でスピノザがいいたいことの中心は,ものの形相的本性essentia formalisと真理veritasが,神Deusの知性intellectusのうちにそのようにあるから現にそのようにあるということではなく,観念ideaが観念されるものideatumより本性の上で先立つ形であるのでなければならないということが帰結してしまい,それは不条理であるということだと僕は考えるのです。つまり神の本性に知性が属すると仮定すれば,その知性がものの形相的本性の原因causaでなければなりません。原因は結果effectusに対して本性の上で先立っていなければならないので,知性はものの形相的本性より本性の上で先立たなければなりません。ところで知性とはスピノザによれば個々の観念の集積です。一方あるものの形相的本性は,観念の対象ideatumとなるべき事柄です。ここから帰結するのは,神の本性に知性が属するという主張は,観念が観念されるものより本性の上で先立つということなのです。
スピノザの哲学では,観念が観念の対象に先立つことはありません。これは第二部定理七系 から明らかです。この系Corollariumはこういうことを示す主旨でありませんが,観念と観念されるものは同時にあるいは平行的にあるのであり,一方が他方に対して本性の上で先立つことはあり得ないということも,この系から帰結させることができるということは確かでしょう。また同じことは第二部定理七 からも帰結させられる筈です。この定理Propositioの意味は,観念と観念されるものの原因と結果の連結connexioと秩序ordoは同一であるということですが,もし観念の方が観念されるものより本性の上で先立つのであれば,連結の方は同一であり得るかもしれませんが,秩序の方は同一であることはできないであろうからです。
よって,備考のこの部分で真理もものの形相的本性も知性のうちにそのようにあるから現にそうあるようになるといわれるとき,ものの形相的本性が観念されるものとしてというより観念としてあり,また真理も観念としてあるといっていると解せます。したがってこれは,形相的本性と真理が同一視されているのではなく,知性のうちに観念としてあるという点で同一視されていると解することができる筈です。そして僕はこの部分ついてはこの解釈を採用するのです。
先週の川崎記念 を勝ったミツバ は3代母がカナダ産のコマーズ という馬で,彼女が基礎輸入繁殖牝馬になります。ただ,コマーズの母でやはりカナダ産のミドルマーチ も別ルートで輸入され,日本で繁殖生活を送りました。2頭とも日本での初産駒を誕生させたのは1991年でした。ミドルマーチの8つ上の半兄のナイスダンサー ,7つ上の半姉の産駒であるパークリージェント は共に種牡馬として輸入され,重賞の勝ち馬が輩出したため,同じ一族が別ルートで輸入されることになったのでしょう。リーガルローブ と同じくファミリーナンバー は1-e です。
コマーズが1991年に日本で最初に出した産駒がゴールデンジャック です。1994年に報知杯4歳牝馬特別とサンスポ杯4歳牝馬特別に勝ちました。その6つ下の全弟はスターリングローズ です。
コマーズは輸入前にカナダで1頭の牝馬を産んでいます。この馬も後に繁殖牝馬として輸入されました。最初に産んだ牝馬の産駒に2011年に武蔵野ステークスに勝ったナムラタイタン がいます。
繁殖牝馬となったゴールデンジャックの初産駒は2002年に京阪杯,2003年に京都金杯,2005年にはダイワメジャー を2着に降して関屋記念を勝ったサイドワインダー です。その3つ下の半妹がミツバの母になりました。
輸入されてまだ20年が経過していないのですが,とくにコマーズを祖とする系統はわりと牝馬が多かったため,分枝はかなり広がっています。まだこの一族から重賞の勝ち馬が輩出するという可能性は高いのではないでしょうか。
母 は死の少し前から,声を出すことはできるけれどことばを発することはできなくなりました。そして最後は声を出すこともなくなり,死んでいきました。その母が僕に対して最後に発したことばは「お世話になりました」でした。
僕は始まりの日 より後に,母が望んだことのすべてを叶えることができたと思っていません。母にも僕に対する不満がきっとあったろうと思っています。ですが最後にこのように言ってくれたということは,たとえ不満はあったにせよ,全体的には満足することができたのだろうと思うのです。そしてそれはまだ僕に,母に対してだけでなく妹に対しても対処するだけの体力が残っていたからです。もしもっと後に同じような状況になっていたとしたら,母はもっと大きな不満をもったかもしれません。そして僕も,母の希望に沿えない歯痒さを多く感じたかもしれません。それでみれば年齢的には早かったかもしれませんが,この段階でこうなったのはむしろよかったのではないかと思えるのです。母が死ぬということは悲しいことではありますが,これはいずれは訪れることです。もっと後にそれが訪れたら,母も僕ももっと大きな悲しみを感じたかもしれません。早かったから,むしろ悲しみが軽減されたかもしれないのです。
そしてもうひとつ,僕はかつての母との会話で,ひどく印象に残っているものがあります。
母は中学校の教諭をしていました。これはまだ僕が小学生のときだったのですが,その当時に母が勤務していた中学校の生徒,母の直接の教え子ではなかったのですが,その学校の生徒が,集団で飛び降り自殺をするということがありました。その一件を伝えるテレビのニュースを僕と母のふたりで視ていたのですが,そのときに母が,こういうことをどう思うかという主旨のことを急に僕に尋ねてきました。
僕はまだ小学生だったこともあり,何も答えることができませんでした。答えることができなかったというより,母の質問の意図を把握しかねたといった方が正しかったかもしれません。すると母は,親より先に死ぬほど親不孝なことはないのだから,このようなことをしてはいけないと言ったのです。
マイルチャンピオンシップ を勝ったステルヴィオ の基礎輸入繁殖牝馬は6代母で,1957年にアイルランドで産まれたダンスタイム です。ファミリーナンバー は11-c 。
ダンスタイムはイギリスで4頭の産駒を出してから輸入されました。日本での初産駒が誕生したのは1967年。この馬が輸入されなければ日本の競馬史はだいぶ違ったものになった筈です。1984年に皐月賞,日本ダービー,菊花賞の三冠と有馬記念,1985年に天皇賞(春),ジャパンカップ,有馬記念を勝ち,ディープインパクト以前の最強馬だったシンボリルドルフ はダンスタイムの孫にあたるからです。
ステルヴィオは5代母がシンボリルドルフの母です。4代母がシンボリルドルフの3つ上の全姉です。ステルヴィオの母のひとつ上の半兄で2011年の阪神ジャンプステークスを勝ったクランエンブレム やひとつ下の半弟で2011年に新潟ジャンプステークスに勝ったクリーバレン の兄弟も,同じようにシンボリルドルフの母の子孫ということになります。
2007年にJRA賞 の最優秀障害馬を受賞したメルシーエイタイム も祖母がシンボリルドルフのひとつ下の全妹です。ですからダンスタイムを祖とする大レースの勝ち馬は,ステルヴィオで3頭目ということになります。
重賞の勝ち馬はすべてシンボリルドルフの母の子孫に該当します。ただ,2010年にユングフラウ賞 を勝ったバックアタック は,3代母がシンボリルドルフの母のひとつ上の半姉にあたり,ほかの系統から活躍馬がまったく出ていないというほどではありません。
ダンスタイムはいつになってもシンボリルドルフの祖母として日本では語られる存在でしょう。平地競走での重賞の勝ち馬がシンボリルドルフ以降は出ていなかったのですから,ステルヴィオの活躍は血統面からは意外性があるといっていいくらいです。ただ,障害とはいえ近親に重賞を勝った馬が出ているので,ステルヴィオの祖母の子孫には注目していいのかもしれません。
母の遺骨をいずれ会堂の中にできる納骨スペースに収めることになるのは,母の希望でしたし,そのスペースの代金は支払ってあったわけですから,決定事項です。ですが会堂は建設中で,この時点ではまだ完成の目途が立っていませんでした。現在の時点で,来年の2月に完成の予定となっているくらいですから,8月の時点では完成の時期は未定であったのです。
一般的に納骨は四十九日の法要のときに行います。ですがその時点で会堂が完成していない,すなわち母が入るべき納骨スペースがまだ存在していないということはこの時点ではっきりとしていました。なので,完成するまでの間,母の遺骨をどう保管しておくのかということは,僕にとってわりと大きな関心事であったのです。少なくともその点について,住職をはじめとするお寺 の人たちがどのように考えているかということは,確認しておかなければなりませんでした。
考え得る対応は僕にはみっつあるように思えました。ひとつは四十九日のときには納骨をせず,会堂が完成するまでは遺骨を骨壺に入れて僕の家で保管するというやり方です。ふたつめは,本来的に納骨するべき時期にはまだ納骨スペースが未完成なので,日野公園墓地の中にある墓に,父および父の両親の遺骨と一緒に納骨するという方法です。そして最後が,お寺には納骨堂 は昔からありますから,さしあたってはその納骨堂に納骨し,会堂が完成したら,その時点でそちらに遺骨を移動するというやり方です。
僕は個人的には三番目の方法が最もよいと思っていました。というのは,遺骨を保管するということ自体はそう難しいことではありませんが,さすがに何もないところに骨壺だけを置いておくというわけにはいきませんから,家で管理するならそのための祭壇も維持しなければなりません。これは単純にいって生活する上で不便であるとしかいいようがありません。一方,日野公園墓地のお墓に入れると,納骨するときの手続きだけでなく,遺骨を移すときの手続きも必要です。もうすでに入っている遺骨は仕方ありませんが,移すことを分かっていてそういう手間をかけるのはいかにもばかばかしく思えたからです。
4日のJBCレディスクラシック は勝負根性を発揮したアンジュデジール が差し返して大レース制覇を達成しました。この馬の輸入基礎繁殖牝馬は祖母のブラッシングプリンセス になります。ファミリーナンバー は2-n 。
ブラッシングプリンセスは1996年のアメリカ産馬。2000年から2003年まで,アメリカで4頭の産駒を産んだ後,種付けされ受胎した状態で輸入されました。なので2004年の産駒からは日本産ということになります。
3頭目の産駒は牝馬。ティックルピンクと名付けられたこの馬は,3歳4月に未勝利戦でデビューしこのレースは勝ったもののその後の3戦は未勝利で繁殖牝馬になりました。この馬がアンジュデジールの母です。アンジュデジールの2つ上の半兄は現役でオープン2勝,重賞でも3着に入ったことがあるアキトクレッセントですから,競走成績からすれば優秀な繁殖成績といえるでしょう。
2012年にブラッシングプリンセスが産んだ牡馬が現役のオールブラッシュ 。昨年の川崎記念 の勝ち馬です。このレースはメンバーと展開に恵まれた部分が多分にあり,実際にその後は10連敗中です。ただ,大レースはフロックで勝てるというものでもなく,ブラッシングプリンセスの繁殖牝馬としての優秀性を示した1頭とはいえるでしょう。
この牝系は日本ではさほど多くの活躍馬は出ていません。最も近いところで,ブラッシングプリンセスの祖母の子孫から,2013年に中山金杯を勝ったタッチミーノット がいるくらいです。
ブラッシングプリンセスはオールブラッシュを産んだ後,キンシャサノキセキ を受胎した状態で韓国に輸出されています。したがって日本で牝系が広がっていくためには,アンジュデジールをはじめとする,残された牝馬から活躍馬が出てくる必要があります。
そのまま母の様子をしばし見守っていましたが,どうもすぐに死んでしまうということはないように感じられました。ですから一旦は1階のコンビニエンスストアに行き,僕と妹の朝食を購入しました。ふたりでそれを母の病室 で食しました。
午前7時20分に夜勤の看護師が病室に来ました。このとき血圧を計測しましたが,80台でした。電話で知らせを受けたときには60台まで低下していたのですから,持ち直したことになります。看護師は家族が来て声を掛けるとこのように持ち直すことはままあるといっていました。ただこのときに母の血圧が上昇したのが,本当に僕と妹が駆け付けたからであったのかどうかは何ともいえません。
さらに看護師は,簡易ベッド,これは実際にはストレッチャーのようなものですが,それを1台,この病室に用意してくれました。これは朝早くに起きたからまだ眠いのではないかという配慮からです。とりあえずこのストレッチャーに妹を寝かせました。妹はすぐに眠ってしまいました。
午前9時に医師が来て,聴診器を用いて母を診察しました。胸の音には変化はないとのことでした。ただ,この胸の音というのが,肺の音に変化はなく,母が呼吸について苦しんでいないという意味であったのか,あるいは心臓の音に変化はないので,まだ大丈夫であるという意味であったのかは,今となっては定かではありません。ただ,僕が到着したときに感じたように,すぐにも死んでしまうという状況ではないのは間違いないのだろうと僕は受け取りました。
午前9時35分に,この日の担当の看護師が来て,再び血圧を計測しました。このときにはまた60台まで低下していました。この後,看護師が別室を用意してくれました。これは家族控室という名称の部屋です。そこはわりと大きめの部屋で,テレビもあり,また備え付けのテーブルの前には大きめのソファーがあって,そこで横になることができました。午前10時になってから妹をそちらの部屋に移動させ,毛布を用意してもらって眠らせました。僕は母の病室で,ベッドの横に用意してもらったストレッチャーに横になりました。僕も少し眠ってしまいました。
日曜のヴィクトリアマイル を勝ったジュールポレール は祖母が1988年にアメリカで産まれたダイアモンドシティ という馬で,輸入基礎繁殖牝馬に該当します。ニキーヤ と同じでファミリーナンバー は9-h ですが,同一ファミリーでもそれぞれに分枝はあり,ニキーヤとダイアモンドシティは同一牝系とはいい難い間柄になっています。
2頭の産駒をアメリカで産んでから輸入されました。しかし産駒からは重賞の勝ち馬は出ていません。孫の代にあたるサダムパテック がダイアモンドシティの一族から最初の重賞の勝ち馬。そして半妹のジュールポレールが2頭目の重賞の勝ち馬です。血統というのは不思議なもので,一族から重賞の勝ち馬は続々と出るものの大レースにはなかなか手が届かないという牝系もあれば,重賞の勝ち馬は多く出ないけれども出たらその馬が大レースも制覇するという牝系もあります。ダイアモンドシティは典型的な後者に属するといえるでしょう。そしてこの一族が日本で続いていくかどうかは,ジュールポレールが無事に繁殖牝馬となり,活躍する馬を出せるかどうかにかかっているといって過言ではありません。
牝系の基点となっているのはダイアモンドシティの4代母に当たる馬。ここまで辿ると日本での活躍馬も何頭か出ています。そのうち最も活躍した馬ということであれば,マーベラスサンデー になるでしょう。マーベラスサンデーの叔母には1986年にクイーンステークスを勝ったロイヤルシルキー がいます。
今世紀以降ということになると,2008年にアイビスサマーダッシュとセントウルステークス,2009年にアイビスサマーダッシュを勝ったカノヤザクラ がこの牝系を出自としています。
個々の観念ideaと個々の意志作用volitioは同一です。ですから一端が固定しもう一端が運動する直線を肯定する意志作用と円の観念は同じものです。同様に直線部分を軸として一回転する半円を肯定する意志作用と球の観念は同一なのです。同一であるからには,前者が原因で後者が結果であることはありません。結果は原因と異なるものであるがゆえに結果といわれるのですし,原因は結果と異なるものであるがゆえに原因といわれ得るからです。実際の起成原因causa efficiensというのはこれらを肯定し同時に円や球の十全な観念idea adaequataを形成する知性intellectusそれ自身の能動actioなのであって,この能動が円や球の観念の十全性を保証しているのです。この意味では,原因が一律的に結果の十全性を保証していると考えた方がむしろ的確でしょう。
これは分かりにくいかもしれませんが,自由意志の否定 というのは神Deusに対してであれ人間に対してであれ,スピノザの哲学の眼目のひとつです。僕たちはあたかも直線や半円の運動motusを肯定する意志作用が原因となって円や球の十全な観念が結果として発生するというように思い込んでしまいがちですが,スピノザはそのようなことが生じるということ自体を認めません。一般的にいい換えれば,意志voluntasが原因となって観念が発生するということは認めないのです。ただし,第二部定理九 にあるように,個物res singularisの観念の原因はそれとは別の個物の観念でなければなりません。したがって個物Aの観念の原因はたとえば個物Bの観念であることになります。このとき,観念は意志作用がなければあることができないので,個物Aの観念にはそれに特有の意志作用があり,同じように個物Bの観念にもそれだけに特有の意志作用があります。この意味において個物Bに特有の意志作用が個物Aの観念の原因であるということは,それが的確な表現であるかどうかは別に,観念と意志作用が同一であるとみる限りで,成立することを僕は認めます。ただ,ここで述べている例は,円の観念や球の観念に特有の意志作用のことですから,そのような意志作用が円の観念や球の観念の起成原因であり得ないことは明白です。そう思ってしまうのは知性に自由な意志を想定するからだといえるでしょう。
フサイチパンドラ の母は1992年にアメリカで産まれたロッタレース 。桜花賞 を勝ったアーモンドアイ にとっても輸入基礎繁殖牝馬になります。パロクサイド とファミリーナンバー は同じ8-f ですが,別の分枝として発展しています。
ロッタレースの産駒で重賞を勝ったのはフサイチパンドラだけで,それ以降の産駒をみてもアーモンドアイが2頭目の重賞勝ち馬。ただ牝系は広がっていますので,日本での活躍馬が輩出する可能性は残っています。
遡ると世界的な名牝系。ロッタレースの母の産駒,つまりロッタレースの兄には有名種牡馬が2頭います。また,ロッタレースの姉から続く系譜は何頭かが輸入されていて,ロッタレースの9つ上の半姉の子孫には1996年に神戸新聞杯を勝ったシロキタクロス や昨年の東京記念 を勝っている現役のサブノクロヒョウ がいます。さらに4つ上の半姉の子孫には2013年のNARグランプリ で3歳最優秀牡馬に選出されている現役のインサイドザパーク がいます。
名牝系の起点となっているのはロッタレースの祖母です。その子孫で日本で活躍した馬の中には,2003年に中山金杯を勝ったトーホウシデン や,2008年にピーターパンステークス を勝ったカジノドライヴ がいます。
ヨーロッパでもアメリカでも,そして日本でも活躍馬が出ている牝系で,どの程度が輸入されているか僕には不明ですが,少なくともロッタレースの祖母の子孫からは日本での活躍馬が間違いなく出てくることでしょう。
それが知性intellectusあるいは精神mensの内にある場合と外にある場合があるのですが,観念ideaには必ずその観念の対象ideatumが存在しています。このとき,その観念が観念されたものideatumと一致しているなら,この観念は真の観念idea veraといわれます。つまりある観念が真の観念であるということの意味は,その観念が観念の対象と一致しているということです。僕は観念が有するこの特徴を,観念の外来的特徴 denominatio extrinsecaといっています。要するに真の観念とは,ある観念がその観念の外来的特徴からみられた場合のひとつの規定であることになります。
もちろん観念は,観念されたものと必ず一致するというものではありません。スピノザの哲学においては第二部定理三二 により,観念は神と関連させる限りquatenus ad Deum referunturでは必ず真の観念です。いい換えれば観念されたものと必ず一致します。そして第一部定理一五 により,どんなものも,すなわちどんな観念も,神なしにはあることも考えることもできないnihil sine Deo esse, neque concipi ものです。ですから神と関連させることができない観念というのは存在しないのであって,この意味においては,どんな観念も外来的特徴からみられる限りでは真の観念であることになります。ただ,僕たちの精神あるいは知性というのは有限finitumであるがゆえに,それらの観念のすべてを神と正しく関連付けられるというものではありません。このために僕たちの精神あるいは知性のうちには,神と正しく関連付けることができない観念というのも生じ得るあるいは存在し得ます。この意味においては観念の対象とは一致しない観念というのも存在します。したがって,外来的特徴からみられた場合に真の観念ではないというような観念は,それが存在するというのであれば,たとえばある人間の知性とか精神のような,有限な精神ないしは知性のうちにのみあるということになります。このような限定的な条件を付随させたうえで,観念の対象と一致しないような観念は,誤った観念idea falsaといわれます。ですから観念は外来的特徴からみれば,真の観念であるか誤った観念であるかのどちらかです。
このとき,ある人間の精神あるいは知性のうちに,観念されたものと一致する観念があるなら,その観念は十全な観念idea adaequataでもあります。
NARグランプリ の最優秀ターフ馬を受賞したダブルシャープ は牝系の祖先が古くに輸入された馬です。それが1919年にアメリカで産まれたソネラ 。綴りはThonellaとなっていますが,僕には意味は分かりませんでした。ファミリーナンバー はクヰックランチ と同じ4-r 。
日本での初産駒は1929年,昭和4年で,前年からサラブレッドの生産を始めた社台グループの創始者による輸入です。また,ソネラが1926年にアメリカで最初に産んだラウネラ という馬も後に社台牧場に輸入され,そちらからも牝系は続きました。僕の競馬キャリア の中でいうと,1988年に中山牝馬ステークスとエプソムカップを勝ったソウシンホウジュ ,1995年に愛知杯を勝ったサウンドバリヤー ,1996年に中日新聞杯と愛知杯,1997年に中日新聞杯を勝ったファンドリショウリ はいずれもラウネラの子孫です。
ソネラが輸入されてからの牝系は,1934年に産まれた第三ソネラ の子孫が最も繁栄しました。ただ,1936年に産まれた第四ソネラ の分枝も継続していて,1985年にオークストライアルの4歳牝馬特別,1986年に中山牝馬ステークスを勝ったユキノローズ や,その孫になる2008年にきさらぎ賞,2011年に関屋記念を勝ったレインボーペガサス は第四ソネラの子孫です。
第三ソネラの子孫で最近の重賞の勝ち馬には,2006年にフローラステークス,2008年に東海ステークスとクイーン賞 ,2009年にTCK女王盃 を勝ったヤマトマリオン や,2007年にニュージーランドトロフィーを勝ったトーホウレーサー がいます。そして僕の競馬キャリアの中で第三ソネラ系の代表産駒となると,1998年にJRA賞の最優秀父内国産馬を受賞したメジロブライト になります。メジロブライトの4つ下の半弟には,2000年のJRA賞で最優秀2歳牡馬を受賞したメジロベイリー がいます。
ダブルシャープはメジロブライトとメジロベイリーの兄弟の近親です。母がメジロベイリーの6つ下の半妹。つまり兄弟からみるとダブルシャープは甥です。
第四部定理七 は,ある人間のうちに何らかの感情affectusが発生した場合は,その感情より強力な感情が発生しなければ除去され得ないということをいっています。これは理性ratioそのものによっては人間は感情の抑制 をすることは不可能ということを導くのですが,それとは別に,もしある人間のうちにそれよりも強力な相反する感情 が生じる場合には,先に生じた感情は必然的にnecessario除去されるということも示しているといえるでしょう。したがってたとえばある人間がXに対して不安 metusすなわち恐怖metusを感じた場合に,その不安すなわち恐怖よりも強力な相反する感情がその人間のうちに生じるなら,その人間はXに対する不安すなわち恐怖から逃れることができるということになります。これが人間が不安すなわち恐怖という悲しみtristitiaから逃れるためのもうひとつの手段です。スピノザはこうした方法については具体的に言及していないですが,このようにして悲しみから逃れるのだとしても,それは第三部定理一三系 によって,人間の現実的本性actualis essentiaに則しているということは分かります。したがって一般に人間は,悲しみを感じた場合にはそれを除去するようにコナトゥスconatusが作用するのですが,それは悲しみを感じる対象の表象imaginatioを避けるという方法に限られるのではなく,その悲しみと相反する感情,といってもそれが悲しみであってはあまり意味がありませんから,それと相反する喜びlaetitiaによって,その悲しみ自体を除去してしまうという方法もあるということになります。
僕の考えでいうと,不安すなわち恐怖という感情は,それと相反する感情によって除去される場合の方が多いのです。なぜなら,不安すなわち恐怖という感情には,それと相反する感情が同じ人間のうちに生じやすいという特徴があるからです。
不安と希望 は表裏一体の感情です。すなわちある人間のうちに不安があるのなら必然的に希望spesもあるのであり,同様に希望を感じている人間は必然的に不安すなわち恐怖も感じているのです。したがって,Xに対する不安すなわち恐怖は,同じXに対する希望とともにあるのですが,希望が不安より強力であることはできます。よって不安は希望によって除去されるのです。
昨年のNARグランプリ で2歳最優秀牝馬に選出されたストロングハート の牝系の輸入基礎繁殖牝馬は,1958年にアイルランドで産まれた5代母のパッシングクラウド です。Passing Cloudは一時的な雲。ファミリーナンバー はシルバーレーン と同じで5-g 。
近年,中央競馬ではノーザンファームの生産馬の大活躍が目立ちますが,地方競馬を席巻しているのがグランド牧場の生産馬。パッシングクラウドはグランド牧場が輸入し,初産駒が産まれたのが1966年。現在でもグランド牧場の基礎牝系のひとつになっています。
地方の重賞を勝つような馬はいましたが,そこまで大活躍した馬というのはなかなか出ませんでした。それでも牝系を繋ぎ,ついに出たのが2009年に兵庫ジュニアグランプリ と全日本2歳優駿 を勝ってその年のNARグランプリ で年度代表馬に選出されると,2011年 に4歳以上最優秀牝馬,2012年 に2度目の年度代表馬,2013年 に4歳以上最優秀牝馬と最優秀短距離馬に選出されたラブミーチャン 。
ストロングハートは母がラブミーチャンの母の半妹。つまりラブミーチャンとストロングハートは従姉妹です。そしてストロングハートのひとつ上の全姉は2016年にローレル賞 を勝っている現役のアップトゥユー です。
この3頭は牝馬ですから牝系はさらに続いていくでしょう。そしてこの3頭に共通しているのは,父がサウスヴィグラス であるということ。サウスヴィグラスは父がアサティスか,父の父がアサティスという牝馬と相性がよく,グランド牧場にはそういう繁殖牝馬が多くいたことが近年の生産馬の活躍に結び付いているのだと思われます。したがって,父がサウスヴィグラスである牝馬に対して相性がよい種牡馬というのが発見されれば,単に牝系が繋がるだけでなく,さらに活躍馬が続出という可能性が高いのではないでしょうか。
このようにして不安 metusないしは恐怖metusは,ただそれ自体でも,またほかの人びとにそれを煽ることによっても,排他的感情となりやすく,排他的思想を産みやすい感情affectusです。このゆえに僕は排他的思想を産出しやすい感情のひとつとして,不安あるいは恐怖をあげたのです。
ところでこの感情は,さらに悪質な感情と結び付きやすく,そのためになお排他的思想を強力化するという側面があると僕は考えています。その事情を説明しておきましょう。
第三部定理七 は,自身の有に固執するin suo esse perseverare力すなわちコナトゥス Conatusが人間の現実的本性actualem essentiamであることを示しています。第三部諸感情の定義三 により,悲しみtristitiaは大なる完全性perfectioから小なる完全性への移行transitioなので,その現実的本性に反する感情です。ですから人間の現実的本性は,悲しみを感じたら,その悲しみを排除しようとするコナトゥスを有していることになります。第三部諸感情の定義一三 により不安すなわち恐怖は悲しみです。ですから僕たちは,不安すなわち恐怖を感じたら,その感情から逃れようとするのです。ただ,不安あるいは恐怖についてなら,このように論理的に示さずとも,僕たちは経験的に知っていると思います。だれしも不安すなわち恐怖を感じたらそこから逃れたいと欲望するものであり,そこに留まっていたいと欲望するものではないであろうからです。なお,第三部諸感情の定義一 により,欲望cupiditasは受動的な状態において人間の現実的本性であることにも注意しておいてください。
不安すなわち恐怖から逃れる方法は主にふたつあります。不安すなわち恐怖は必ず何かに対する不安なので,その何かの表象imaginatioを排除するというのがそのひとつです。第二部定理一七 によれば,ものの表象像imagoは別のものの表象像によって排除されます。したがってたとえばAに対する不安すなわち恐怖を感じた場合に,Aの表象像を排除するたとえばBを表象するimaginariことによって,そのAに対する不安すなわち恐怖から逃れることができます。これは第三部定理一三 が一般的にいっていることと同じです。
もうひとつ,不安すなわち恐怖という感情自体を排除するという方法もあります。こちらが僕がここで重大視する方法です。
12月28日のホープフルステークス を勝ったタイムフライヤー の母系の基礎輸入繁殖牝馬は1991年にアイルランドで産まれた祖母のジョリーザザ という馬です。ファミリーナンバー は14 。
繁殖生活は日本だけで送った馬。輸入されたときに受胎していて,最初に産まれたその産駒はJRAで4勝。翌年に日本で最初に種付けされて産まれたのがタイムパラドックス でした。
タイムフライヤーの母はタイムパラドックスの6つ下の全妹になります。この馬はJRAで1勝しただけですが,タイムパラドックスと両親が同じ馬はこの馬だけで,父との相性の良さがタイムフライヤーが輩出したことに繋がったとみることは可能だと思います。
ジョリーザザが輸入されることになったのは,おそらく6つ上の半姉が繁殖牝馬として輸入されていて,成功を収めていたからでしょう。その馬が1985年にフランスで産まれたローラローラ 。こちらは日本人オーナーの所有で1頭だけイギリスで産駒を出した後で輸入。そのときに受胎していて産まれたのがサクラローレル です。
サクラローレルの半姉はフランスで走りましたが,産駒は続々と輸入されました。そして日本で枝葉が広がり,2011年に小倉2歳ステークス,2012年にセントウルステークスを勝ったエピセアローム や2013年に日経新春杯を勝ったカポーティスター などが輩出しています。
もう少し遡ると,ローラローラとジョリーザザの姉妹の3代母からの広がりがあります。その馬を5代母とする馬に,2010年にJRA賞 の最優秀短距離馬に選出されたキンシャサノキセキ がいます。
次に,先生が静の涙 を知覚したときの状況を,先生の記述を基に,自由の人 homo liberという観点から考察します。最初にひとつだけ注意を促しておけば,自由の人として実践を行うことは実践の規準のひとつであるので,実はこういう考察は単なる考察としてだけでなく,実践のためにも重要であるのです。あるいはこうした考察は実践のひとつであるといっていいかもしれません。ここで行うのはあくまでも物語の登場人物に関してであるのですが,たとえば現実的に存在する人間がある受動感情に従属しているときに,その人間はなぜまたどのような受動感情に隷属しているのかということを自由の人として考察するということは,その人間に対してどのように対処するべきであるのか,すなわち具体的に何を実践するべきであるのかということを決定するためにきわめて重要なのです。あるいはそれを決定することができるのはこうした考察だけであるといっても間違いではありません。
先生は静の涙を見たときに自身も悲しみtristitiaに襲われました。これは第三部定理二一 に示されている感情の模倣affectum imitatio,imitatio affectuumが先生に生じたからです。先生は自分が静を愛しているということについては自覚していたのですから,同じ感情の模倣であっても,これは第三部定理二七 によって説明されるのではなく,第三部定理二一によって説明されなければならないのです。しかしどちらの定理Propositioも,感情を模倣する相手に対して憎しみodiumを抱いていないという点では同じです。
このことから,先生がこのときに感じた悲しみが,どのような悲しみであったのかということが分かります。それは第三部諸感情の定義一八 の憐憫commiseratioです。確かに先生は静のことを同類,同類というのは上述の定理でいえば第三部定理二七の方に該当しますが,自分が愛しているという意味ではもっと強い意味での同類と認識していたのであって,その愛する者を襲った害悪のために悲しんだのだといえるからです。なお,感情の模倣は第三部定理二一の場合の方が第三部定理二七の場合よりもより容易に生じ,かつほかの条件が同じなら第三部定理二一の方がより強く生じる筈なので,このときの先生は相対的に強力な憐憫を感じていた筈です。