紫紺の旗

いまや大マンションが建ってしまっているのだが、
そこは以前、明治大学の野球グランドだった。

名物監督の亡き後は、その名を冠して島岡球場と呼ばれた。

埃っぽいのは仕方無いが、子どもの頃の私たちにとっては楽しい場所だった。
たまに中に入っては、学生たちにかまってもらったり、
島岡監督に怒られて逃げ出したりしていた。

金属バットの音はもとより、ランニングの掛け声も
風向きによっては300m近く離れた我が家まで聞こえてきた。

マンションの片隅に、石碑が立っている。
監督が学生たちを見守る後ろ姿の写真が、磨いた石に刻んである。
明大出身のプロ選手たちの手形もある。
[明治大学野球部合宿所]の看板の写真もある。

住む人は知らないのだろうが、ここは大学野球を支えた場所だった。