都内のとある私立の女子高校が、創立70周年を迎えた時のことである。
その学校のブラスバンドの指導をしている、古い友人から聞いた話だ。
音楽の教員が校長に呼ばれたので何かと思うと、
記念の楽曲を作れとのことであった。
それはひと仕事だということで、報酬の話になる。
その教員は、通常、作曲家に委嘱するとこれこれくらいはかかるけれど、
自分はこれくらいでやりましょう、と言った。
しかし、予算は組んでいない、と校長は言うのだ。
?
報酬は無いが、仕事はしろということですか?
「そうは言っていないよ。」と言うが、出ないもんは出ないと言う。
そう言ってるじゃん。
これはどうも押し問答になるだけで、一向に要求は通りそうにない。
一旦は引き下がった。しかしどう考えてもおかしい。
労働の対価が無いなんて。
怒りに任せて、3小節の曲を作った。
1分もかからないで出来上がる。
しかし、気分が悪い。これで満足できるわけもなく、
その3小節をオーケストラアレンジしてみた。
ものすごく豪華で式典的な3小節に仕上がった。
面白いけれど、これは提出できない。
この教員は、そんな、喧嘩を売るような態度を取れない性格であった。
一晩寝て、あらためて考えた。
自分は非常勤講師であり、給料は担当する授業のコマ数に従っている。
これしか出ないということであれば、この中でやるしかない。
相場の作曲報酬を、授業の賃金で換算し、かけられるコマ数を割り出した。
その間の授業のテーマを「作曲」ということにした。
最初は退屈な内容だ。
曲の調性がどうしたとか、長音階だ短音階だ自然だ和音だ旋律的だとか、
長三和音だ短三和音だといったところから始め、旋律も繋留だの刺繍だのといった話もする。
自分で8小節くらいの曲を作るのがテストです。
と言う。
「えー」という反応。
例年は。と続ける。
今年は、みんなで一曲を作ります。
「へー」と、生徒の声は少しだけトーンが上がる。
授業の内容は、コード進行に入る。人気の曲のコードを、解説する。
「記念の曲も3コードでいいよ。」という生徒が出てくる。
こんなのも有るよ、と教会旋法も教え、ジャズを聴かせる。
全体をどういう構成にするか、というところが問題だった。
が、もう、この際、あみだくじでコード進行を決めた。
次に進めるコード阿弥陀シートを作って、みんなで順番にくじを引いて行った。
後からリズムを決めた。
そのコードの拍数がこれで決まる。
これは拍数を書いた紙を箱に入れて、やっぱりくじ引き。
その上にメロディを付ける。
小節の頭の音だけを、ダーツ投げで決めた。
壁に大きく5線と加線を書いて、みんなでダーツ投げ。
「メロディ全体をダーツでいんじゃね?」という意見が出たのでやってみたが、
ビジュアル的にもゲーム的にもとても盛り上がったが、
奇妙になり過ぎたので、却下となった。
結果は、逆転的に、学校にも保護者にも生徒たちにも好評を得た。
いつ首を切られるか分からない雇われ非常勤講師に過ぎない教員が作った曲より、
在校生自身が作り上げたという事実のほうが、ずっとウケたのだ。
たとえ阿弥陀と籤とダーツでも。
※
今日は毎月一日の法螺の日、毎月馬鹿です。
嘘です。
その学校のブラスバンドの指導をしている、古い友人から聞いた話だ。
音楽の教員が校長に呼ばれたので何かと思うと、
記念の楽曲を作れとのことであった。
それはひと仕事だということで、報酬の話になる。
その教員は、通常、作曲家に委嘱するとこれこれくらいはかかるけれど、
自分はこれくらいでやりましょう、と言った。
しかし、予算は組んでいない、と校長は言うのだ。
?
報酬は無いが、仕事はしろということですか?
「そうは言っていないよ。」と言うが、出ないもんは出ないと言う。
そう言ってるじゃん。
これはどうも押し問答になるだけで、一向に要求は通りそうにない。
一旦は引き下がった。しかしどう考えてもおかしい。
労働の対価が無いなんて。
怒りに任せて、3小節の曲を作った。
1分もかからないで出来上がる。
しかし、気分が悪い。これで満足できるわけもなく、
その3小節をオーケストラアレンジしてみた。
ものすごく豪華で式典的な3小節に仕上がった。
面白いけれど、これは提出できない。
この教員は、そんな、喧嘩を売るような態度を取れない性格であった。
一晩寝て、あらためて考えた。
自分は非常勤講師であり、給料は担当する授業のコマ数に従っている。
これしか出ないということであれば、この中でやるしかない。
相場の作曲報酬を、授業の賃金で換算し、かけられるコマ数を割り出した。
その間の授業のテーマを「作曲」ということにした。
最初は退屈な内容だ。
曲の調性がどうしたとか、長音階だ短音階だ自然だ和音だ旋律的だとか、
長三和音だ短三和音だといったところから始め、旋律も繋留だの刺繍だのといった話もする。
自分で8小節くらいの曲を作るのがテストです。
と言う。
「えー」という反応。
例年は。と続ける。
今年は、みんなで一曲を作ります。
「へー」と、生徒の声は少しだけトーンが上がる。
授業の内容は、コード進行に入る。人気の曲のコードを、解説する。
「記念の曲も3コードでいいよ。」という生徒が出てくる。
こんなのも有るよ、と教会旋法も教え、ジャズを聴かせる。
全体をどういう構成にするか、というところが問題だった。
が、もう、この際、あみだくじでコード進行を決めた。
次に進めるコード阿弥陀シートを作って、みんなで順番にくじを引いて行った。
後からリズムを決めた。
そのコードの拍数がこれで決まる。
これは拍数を書いた紙を箱に入れて、やっぱりくじ引き。
その上にメロディを付ける。
小節の頭の音だけを、ダーツ投げで決めた。
壁に大きく5線と加線を書いて、みんなでダーツ投げ。
「メロディ全体をダーツでいんじゃね?」という意見が出たのでやってみたが、
ビジュアル的にもゲーム的にもとても盛り上がったが、
奇妙になり過ぎたので、却下となった。
結果は、逆転的に、学校にも保護者にも生徒たちにも好評を得た。
いつ首を切られるか分からない雇われ非常勤講師に過ぎない教員が作った曲より、
在校生自身が作り上げたという事実のほうが、ずっとウケたのだ。
たとえ阿弥陀と籤とダーツでも。
※
今日は毎月一日の法螺の日、毎月馬鹿です。
嘘です。
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