[あらすじ] 台風の中、公開初日に見に行って、トークショーも見られた。
https://seibetsu-movie.com/
映画の予告編が公開された時、わくわくして動画を見た。
理由は知らないが、予告編には2種類有った。
予告編の中で、新井祥が語る。
映画のインタビューが有ってから、パートナーであるこうくんと
もう二度と会わないというレベルの喧嘩をしたのだ、と。
そわそわした。
なぜそうなったのか。今はどうなっているのか。
その喧嘩はいつ頃のことだったのか。
ツイッターなどを見ると、一緒にいるようなので、
そのまま関係が壊れてしまったわけではないようだ。
それにしても、気になる。
後で映画を見たら、これは映画を支える一つの筋であった。
なるほど、そわそわさせて終わっているのは、予告編として上出来だったわけだ。
※
映画の表の筋は、様々な性別の紹介である。
インターセックスという言葉や性分化疾患の説明、
トランスジェンダーや性分化疾患、MTF、FTMの説明。
FTMトランスセクシュアルとしてタイで性別を変える手術を行う人の
ストーリーが紹介される。
自分自身の感覚を自分自身の言葉で伝えている。
予告編でも使われているが、両親と話し合うシーンが有る。
その中で、父親が言う。
「本人を前にして言うのは残酷かもしれないけど」
「やっぱり一人娘として育ててきたから」
「思いは伝わってなかったんだ」
親の思いが伝わっていないわけではない。
親は自分の思いが裏切られたように感じるから、親不孝と思うのだろう。
けれど、大事に育てようという思いが伝わっていないわけではない。
「本人を前にして」という言葉に、予告編を見る私は気持ちがそわそわした。
「一人娘」という言葉はやはり痛い。
じわじわと効き、数分後にどうしようもなく涙が出る。
※
予告編に問題をちりばめ、映画本編もいくつか疑問を呈しながら進んでいく。
あれ?おかしいな?と思って見ていると、終盤でその答えが出てくる。
取材の様子は漫画作品である『性別が、ない!』でも逐次描いているので、
おなじみの人物が続々と登場する。
それがひとつの、いや多様な、答えだろう。
答えと書いたけれど、もちろん、答えを得たからって
はースッキリ!今日もガンバロー!いえいっ
ってことは無い。
そんでも生きていくぜ。といったところだろう。
サインしながらお話しした最後にも新井さんは言っていた。
「日々、闘いです。」
映画のフライヤーにも書いてあるし、予告編でも言っている。
「生きて、幸せに死んでやるぜ」
※
私自身は自分を生まれながらの女性とは感じておらず、
身体の違和感も強い。
けれど、男性になりたいわけではない。
体も、ジェンダーもである。
女でも男でもどちらでもないもの、というのは
あまりお手本が無い。
シスジェンダーかつヘテロセクシュアルの子どもは、
自分の親をロールモデル(お手本)として育てば良いが、
トランスジェンダーにはそれが無い。
トランスジェンダーは心身のどこかから、
性分化疾患も身体と心から、自分はどのようであれば落ち着くのか、迷う。
そんな中、自ら性分化疾患であり、女性から男性寄りへ見た目を変え、
そして中性というところを模索しているということを明らかにし、
漫画という表現活動を行っている新井祥の姿は、
今、ひとの支えになっていると思う。
2年前にイベントで出会った性分化疾患の当事者も、
漫画『性別が、ない!』に出会って救われた、ということを言っていた。
非常にセンシティブな問題を、ギャグ漫画で表現する。
すごい腕だ。
その分、配慮も大きい。
自分が傷付くことも多いだろう。
トークショーの中で、「現行の結婚制度は好きではない」ということを言っていた。
しかし、結婚を喜びとしている人たちも多くいるので、
そういう人たちにイヤな思いをさせないために、あまり声高には言っていない、
とも言っていた。
私だったら言っちゃうね。
今のパッケージ結婚制度は一部の人に得なだけで、
制度からはじかれて同じ行政サービスを受けられない人がたくさんいるよ、
そういう人の存在に目を向けもしない知ろうともしないで
当たり前のように結婚する多数の人なんか、傲慢だね。
とかね。
(とは言え、今こう書きながらヒヤヒヤしている。)
乱暴なことを言えば誰かを怒らせるし、怒らせたら謝る必要もあるし、
あんまり謝ってたらギャグにならなくなっちゃうし、
かと言ってあんまり慎重になってたら笑いにならなくなってしまう。
そういう作業をして、作品を描いているのではないか。
※
別の性までトランスするわけではない者として、
あんまり新井祥さんに任せっきりってのはよろしくない、と思った。
ずいぶん支えてもらってきた分、自分も何か表現していきたい、という気持ちが湧いた。
表に出せば、とやかく言うやつがいる。
出たり引っ込んだりして、バランスを取りながら今後ものらりくらりとやっていくことになるだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます