[あらすじ] 両親の蔵書を遂に古書店に売却している。
第一弾は自宅に来てもらっての買取。
第二弾は段ボール箱に詰めて宅配便で送るのと合わせ、
大型本やケース入りの全集ものなどを、車に積んで持ち込んだ。
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運転席以外の全てのスペースに本を積んだ。
24束と段ボール2箱。
ひと束は15㎏前後だろう。
運転者を入れて7人くらい乗っているような計算か。
えーと。
定員ならオーバーですな。
積載量って決まっているのだろうか。
※
古書店は、倉庫と事務所が併設されていた。
倉庫にはちょうど、「再生紙運搬車」と書いたトラックが入っている所だった。
売り物にならない本が積み込まれているのだろうか、と思うと、
ちょっと胸が痛んだ。
なるべく、売れて欲しい。
値の付かなった本を返却して貰うかどうか、
宅配買取を行っている多くの古書店で、選ぶことができる。
私は今回、返却を希望しなかった。
最初に、写真を見て貰って、買取できるものだけを送る、
という手筈で進めてきたからだ。
とは言え、大雑把に査定した部分も有るだろうし、
実物を見てみたら、傷みが強いなどの理由で商品にならないものも有るだろう。
トラックを横目に、建物の脇寄りへ行くと、
案の定、事務所の入り口が有った。
ドアは開け放たれており、奥にはデスクなどが見えた。
人かげが見えなかったので、インターホンを押した。
するとすぐに、若い男子が現れた。
ハッとしたような表情で口を開いている。
ジーンズにパーカーで、若い。学生アルバイトだろうか。
「本の持ち込みで来ました、スヤマです。」と言うと、
また更にハッとして、口は開いたままだが返事もせず、
男子は引っ込んだ。
と、すぐ入れ替わりに、ネクタイを締めた、
やはり若いけれど社員の風情の男性が出てきた。
「今ちょうどトラックが入っているので、
こちらにお車を付けていただいたら、
我々で搬入いたします。」と、てきぱきと判断する。
運んでくれるのか。助かる。
私は、搬入しやすいように、車を切り返して敷地に接して停め直した。
すると、同じような雰囲気の男子が事務所から出てきて、
本の束を運び始めた。
それは2~3人ではなく、5~6人もいたか。
次から次へと男の子が湧いて出てきては、
本の束を慣れない様子で一つずつ運んでいく。
一人の男子が、いちいち
「丁寧に、丁寧に」と、自分へとも皆へともつかず声を掛けている。
私でも両手に一束ずつ持って運べる程度の重さだが、
彼らは丁寧に両手で一束を抱えて運ぶ。
行ったり来たり。
途中から台車も使い始めたが、
把手の無いタイプの台車であり、
これは箱を積むには良いけれど、
束を積んで押すのは難しく、
結局、一度に2束しか積めないので大して効率は良くない。
まあそれでも人数がいるので、
ものの10分ほどで全ての束は運び込まれて行った。
ああ、若い男子って気持ちいい。
「これでご飯でも食べなさい。」と千円札でも渡したいような
おばはん心が私にも芽生えるってもんだ。
しかし、挨拶もできないし、動きの効率も悪いな。
若いわね。いいのよ。
※
最初の依頼から今日まで、ずいぶん時間が掛かってしまってすみません。
と、ずっと担当してくれている社員さんに挨拶した。
「いえいえ。量も多いですし、荷造りから積み込みまで、
たいへんだったと思います。
車も敷地の脇に寄せられるわけでもないですしね。」
気持ち良い返事だが。
ウチが充分な道幅の道路に接していないことは伝えていないぞ。
もしかしてガレージの有る家かもしれないのに、なんで分かるんじゃ?
と、ちらりと疑問に思った。
まあ、いい。
おまけに、我が家の前の道は砂利道である。
15メートルくらいは、台車に本の束を積んで
その砂利道を運んだのだ。
重たい荷を載せた台車は、砂利道に車輪を取られて
押してもなかなか進まない。
これがまたたいへんだった。
※
本を積み込んだ車を月極駐車場に戻すべく、
運転席に乗り込んで、ちょいと驚いた。
ボンネットがやたらと見える。
車の後部が荷物の重さで沈み、その分、車の頭が持ち上がっているのだ。
持ち込みの2日前に、本を積み込んだ。
2日もこんなに重量の掛かった状態で車を置いておくことになる。
リアサスペンションに負荷が掛かるだろうなあ。
車を横から見てみると、
全輪のほうがタイヤの上にボディとの隙間が広くなっている。
上向きである。
※
古書店は、自宅から車で50分ほどの所であった。
重たい。
アクセルを踏んでもいつもの感覚では加速しないし、
ブレーキの利き心地もいつもと違う。
帰り道は帰り道で、
加速の良さに驚いた。
アクセルを踏んだらブアッとスピードが出る。
どうやら、行きの道の運転で、踏み込む癖が付いたようだ。
この程度の重さでこんなに運転の感覚が変わるものか。
運送というのはたいそうな仕事だとあらためて思った。
荷を降ろした後のトラックがスピードを出してしまいそうな気持ちが
ちょっと分かる。
※
とにかく、これで第二弾の作業が終わった。
と、帰宅したら、
次に宅配買取を申し込んだ分の段ボール箱が届いていた。
さて。
次の作業はまたちょっと種類が違う。
つづく
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