犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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寿命ひも理論

2019年06月26日 | からだ
[あらまし] 同居母86歳パーキンソン病要介護2認知症状少々。
ミセス・パーキンソンと呼ぼう。

パーキンソン病は、身体の動きが悪くなる。
思考をまとめて言葉にして発する、という作業も難しくなるようだ。

神経伝達物質であるドーパミンを含む薬が効く。
Mrs.Pの場合、3時間おきにドーパミン製剤を飲んでいる。
薬が効いていると、動きやすい。効用が切れると、動きにくい。
ここに波が起こる。

薬を飲み続けて10年くらいにはなるので、薬の無い状態というのは分からない。
しかし、病気のはたらきの強さにも、日によって時によって違いは有る。
薬を飲み忘れると、ひどく動けなくなる日も有れば、
薬をうっかり一回飛ばしてしまっても次の薬の時間まで動ける日も有る。

活動量の差なのか、睡眠時間の差なのか。
何が影響しているのか、とても複雑で、
自宅での日常生活の中では、なかなか解きほぐせない。



動きの調子が良いと、動けるから動く。
動けることが嬉しくて、ずいぶんと活動する。
しかし、動きは完全に滑らかというわけではなく、
また、疲れやすい。

つまり、おにぎりを作ろうと思っても、ご飯を大皿に出した時点で終わったり、
ご飯を大皿に移しているつもりでも、たくさんあちこちにこぼしていたりする。
そしてラップをかけることもできないまま、やめて休まねばならない。

自分が今できることの見積もりが、難しい。
難しいなら、作業は細かく分けて、一つやったら良しとして、
先に進む前に一旦休む、ということが必要だろう。



一方で、動けない時は、落ち込む。
じっとしているとあれこれ思い巡らせてしまう。
思いは堂々巡りする。
出口の無い思いは気持ちを引きずり下ろす。

動けない時間も、ある程度待っていればいつも過ぎ去るものだ。
過ぎ去ることをきちんと知って、単純に待てば良いのだが、そうできない。
動けない不満に毎度々々気分ごとはまる。



もともと、目の前の作業は一気に片付けなければ気の済まない性質だったのだろう。
Mrs.Pは、仕事をしている頃はよく徹夜をしていた。
むらの有る生活ぶりだった。

いつも何かしていないと気が済まない。
のんびりボケーッと過ごすとか、昼寝のひとときを楽しむとか、
そういうことをしてこなかった。



『ゾウの時間ネズミの時間』という本がある。
1992年、本川達雄著、中公新書。

動物のサイズにまつわる学説をいくつか紹介している。
島に棲む動物のことや、動物の体表面積のことなど。

タイトルに関わる話題は、
大きい動物も小さい動物も一生涯のうちに打つ心拍数は同じくらい、
というものだ。

生きている間に打つ心臓の拍数はおよそ一定で、
打ち終わった時が臨終の時、というわけだ。



そんじゃぁあんまりドキドキしないで生きるのが長生きの秘訣か。
運動なんかして心拍を上げたら、一生分を早く打ち終わっちゃうんじゃないか。

いや、運動習慣をもってトレーニングすると、
安静時の心拍数が少なくなる。
だから運動したほうが良い、ということになる。

これは、病理の話ではなく、生理の話だ。



ブランコは、ただ乗っかっていれば自然に揺れは止まる。
揺れる動きに合わせて、そちらに向かって動けば、
揺れは大きくなっていく。

揺れと逆の動きをすれば止まるのは早いが、
じっとしていたって揺れは収まる。
そもそも、ブランコを揺らし始めたのは、ブランコに乗っている自分だ。



動けることに喜び動き過ぎ、
動けないことに落ち込むことは、
波を大きくしている。

病気や体調の作る波に同調することは、
病気の思うつぼだ。

病気の波に翻弄されれば、病気は余計に力を増すように見える。
でも、揺らしているのは自分だ。

波が来ても、じっとしていれば、収まる。
なんの病気でも、どんな病状でもそうだ、
と言ってはいない。
ただ、わざわざ病気を荒らげるようなことはしないほうが良いだろう。
基本的な生活習慣、一定のリズムで寝起きや食事をすることというのは、
思っているよりもずっと身体にとって大切なことなのだと言いたい。

それに、高く上がれば上がるほど、次に落ちる時に思い切り落ちる。
ひどく落っこちたくなければ、あまり高く上がらないことだ。



波の線を、紐で描く。
紐をたわめて、うねうねと波を描く。

その紐の、はしっこを引くと、
波は平らになり、横全体の長さは長くなる。



友人Mが言う。
「まさにそうだった。」
介護していたお祖母ちゃんが、90過ぎまで生きた。
とにかく無理せず、眠ければ眠り、はしゃぐでなく落ち込むでなく、
毎日を静かに暮らしていたそうだ。



なだらかに暮らすと、病みつかない。
そんなふうに思う。
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