[あらすじ] 車幅灯の点けっぱなしでバッテリーが上がり、
JAFのお世話になりましたよ。
翌日、車で出かけてコイン・パーキングに駐車した。
数時間後、帰ろうとして駐車料金を払って、
車に乗って、キーを回したが、エンジンがかからない。
そうか、JAF隊員が説明してくれたように、バッテリーの充電能力が
落ちているから、もういかんのか。
と一瞬思ったが、違った。
私のオツムはもっと重症だった。
手元のレバーを見ると、車幅灯が点けっぱなしになっている。
昨日の今日で、同じあやまちである。
登山口の駐車場でエンジンがかからんという不安を味わっておきながら、
まただ。
咄嗟に思う。
今日またJAFを呼ぶのは、恥ずかしい。
そりゃ、受付するコールセンターのオネエサンは別の人だし、
駆け付けてくれる隊員も別の人だが、
作業の履歴はばっちり見るだろう。
あれ、お客さん、昨日もバッテリー上がってますね、
そうか、もうバッテリーの充電能力が弱っているんですね、
急いで交換することをおすすめします―
あ、いいえ、実はまた車幅灯を点けっぱなしで…
って
言えるか!
そうだ。
さっき、駐車料金を支払う時、すぐ次に並んでいる人がいた。
夜8時である。
早く帰って風呂でも飯でも子どもの顔でも好きな番組でも
あるだろうけれど。
すでにエンジンをかけて今しも駐車場から出ようとしている車の
ヘッドライトの中に立って、手を上げ、頭を下げた。
あのー、バッテリー上がってしまって、もしお急ぎでなかったら、
つながせてもらえないでしょうか?
運転席の人は、すぐにウインドウを開けて応じてくれた。
「ああ、いいですよ、つなぐのとか持ってないけど?」
「車の位置はここでいい?」
「やり方とかわかんないけど?」
「よく分かるね」
あー、ちょっと経験あるんで・・・
その人は、スマホをかざして私の手元を照らしてもくれた。
おそるおそるキーを回すが、かからない。
すみません、充電できるまで数分かかるかもしれません。
「懐かしいなー、エスクード。
学生時代の友だちが乗ってたよ。
強いよね、どこでも走れる。
よく林道走りに行ったなー。
そいつも結婚して今はプリウスだけどね。」
夜、見ず知らずの他人の世話になりながら、慣れない作業をして
待つ時間の経ち方は、日常と違う。
だから、それが何分間だったか定かではないが、
たぶん15分ぐらいは待ってみたのだが、エンジンはかからなかった。
「つなぎ方が違うとか?」
いや、プラスにプラス、マイナスにマイナスで間違い無い。
やり直してみれば良かったと、後からは思うが、
その時は遠慮が働いた。
結局、無駄に引き止めて、ありがとうございましたすみませんでした
と見送ったのだ。
本当にバッテリーがもういかんのだろう、と思った。
これでは、レッカーを頼むしかない、と思った。
しかしJAFを呼ぶのは今はいやだ、と思った。
疲れた気持ちで、私は一旦家に帰ることにした。
つづく
JAFのお世話になりましたよ。
翌日、車で出かけてコイン・パーキングに駐車した。
数時間後、帰ろうとして駐車料金を払って、
車に乗って、キーを回したが、エンジンがかからない。
そうか、JAF隊員が説明してくれたように、バッテリーの充電能力が
落ちているから、もういかんのか。
と一瞬思ったが、違った。
私のオツムはもっと重症だった。
手元のレバーを見ると、車幅灯が点けっぱなしになっている。
昨日の今日で、同じあやまちである。
登山口の駐車場でエンジンがかからんという不安を味わっておきながら、
まただ。
咄嗟に思う。
今日またJAFを呼ぶのは、恥ずかしい。
そりゃ、受付するコールセンターのオネエサンは別の人だし、
駆け付けてくれる隊員も別の人だが、
作業の履歴はばっちり見るだろう。
あれ、お客さん、昨日もバッテリー上がってますね、
そうか、もうバッテリーの充電能力が弱っているんですね、
急いで交換することをおすすめします―
あ、いいえ、実はまた車幅灯を点けっぱなしで…
って
言えるか!
そうだ。
さっき、駐車料金を支払う時、すぐ次に並んでいる人がいた。
夜8時である。
早く帰って風呂でも飯でも子どもの顔でも好きな番組でも
あるだろうけれど。
すでにエンジンをかけて今しも駐車場から出ようとしている車の
ヘッドライトの中に立って、手を上げ、頭を下げた。
あのー、バッテリー上がってしまって、もしお急ぎでなかったら、
つながせてもらえないでしょうか?
運転席の人は、すぐにウインドウを開けて応じてくれた。
「ああ、いいですよ、つなぐのとか持ってないけど?」
「車の位置はここでいい?」
「やり方とかわかんないけど?」
「よく分かるね」
あー、ちょっと経験あるんで・・・
その人は、スマホをかざして私の手元を照らしてもくれた。
おそるおそるキーを回すが、かからない。
すみません、充電できるまで数分かかるかもしれません。
「懐かしいなー、エスクード。
学生時代の友だちが乗ってたよ。
強いよね、どこでも走れる。
よく林道走りに行ったなー。
そいつも結婚して今はプリウスだけどね。」
夜、見ず知らずの他人の世話になりながら、慣れない作業をして
待つ時間の経ち方は、日常と違う。
だから、それが何分間だったか定かではないが、
たぶん15分ぐらいは待ってみたのだが、エンジンはかからなかった。
「つなぎ方が違うとか?」
いや、プラスにプラス、マイナスにマイナスで間違い無い。
やり直してみれば良かったと、後からは思うが、
その時は遠慮が働いた。
結局、無駄に引き止めて、ありがとうございましたすみませんでした
と見送ったのだ。
本当にバッテリーがもういかんのだろう、と思った。
これでは、レッカーを頼むしかない、と思った。
しかしJAFを呼ぶのは今はいやだ、と思った。
疲れた気持ちで、私は一旦家に帰ることにした。
つづく
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