自宅から1㎞ほどの所にドッグランが在る。
おかげで毎朝、飼い犬ウーゴくんを走らせることができる。
ドッグランはそこいら中に在るもんでもない。
大きな都立公園の近くに住んでいて良かったと思う。
※
辺りは平坦な土地である。
ドッグランの周囲も公園用地で、見晴らしが良い。
昨年の改修工事の際に、周囲の木が伐られたのだ。
冬は吹きっさらし、夏は日照り。
校庭みたいに埃がひどい。
校庭と違うのは、スプリンクラーが無いことだ。
※
東西は15メートルほどで、南北には90メートルくらい。
この中に、2本だけ植木が生えている。
1本はエリアの南端。
もう1本はエリアの中ほどの東寄り。
早朝のドッグランに行くと、この中ほど東寄りの木が
陰を落としてくれている。
たぶん、シラカシである。
早朝と言っても、6時にもなると暑い。
遮るものが無いので、朝陽が容赦なく射す。
横殴りの太陽。
1本の木から伸びる細長い日陰に、涼を求めてみんなで並ぶ。
※
この貴重な木に、イラガが付いてしまっている。
正確には、ヒロヘリアオイラガの幼虫である。
私は十代の頃から虫が好きで、
いろいろな蛾の幼虫を飼って、羽化させて楽しんできた。
ヒロヘリアオイラガの幼虫はたいそう美しい。
けれど、棘が有る。
イラガは漢字で書けば刺蛾だ。
この字は他にもトゲトゲの草の刺草(イラクサ)などが有る。
背中の棘に触れてしまったら、電撃の痛みが走り、
ひどい場合は水膨れ、みみず腫れ、火傷のようになってしまう。
私はアレルギー反応が強いほうなので、ひどい場合というヤツになるだろう。
そう思って警戒しているので、今まで触れたことは無い。
食樹は幅広いようだ。
ブルーベリーにも付く。
ちょうど実と幼虫が同じ時期なので、ブルーベリー狩りでの事故がよく有る。
他に、我が家の庭では柿の木に多く付く。
その横のチャンチンや、モミジにも付く。
玄関側の桜の木にはクロイラガが付いたことが有る。
※
ドッグランのど真ん中の木にイラガの幼虫が付くのだから、
危なっかしい。
昨年も、刺された犬がいるらしい。
犬はなんでもお鼻でチェックするから、危ない。
※
早朝ドッグランで毎朝会う犬友さんに、説明する。
ホラ、木の根元を良く見ると、黒っぽい粒が落ちているでしょ、
これが糞です。
「えー!けっこう大きい!」
そう。糞の落ちる音がパラパラ聞こえますよ。
ホラ、糞の周りには、軸だけになった葉っぱがいっぱい落ちています。
見上げると、あの枝、あすこの葉っぱがハゲちょろけですよね。
あすこらへんにいた、ってワケです。
「なるほどーー」
あとね、たっくさんの幼虫が付いていると、「サワサワサワ」って聞こえたりもしますよ。
「えっ、何!?」
葉っぱを食べる音ー
「ひゃぁあああ!」
※
木の上で完結していてくれれば良いのだけれど、
たまに落っこちてくるから困る。
幼虫が蛹になり成虫に姿を変えることを変態と言う。
変態にはとてもエネルギーが必要だ。
なんせ、体中が形を変えるのだ。
脱皮や蛹化や羽化の際に、力尽きて死んでしまうものも多い。
成長していくことは命がけなんである。
※
ヒロヘリアオイラガの幼虫は、樹木の幹や枝の表面に、
樹皮そっくりの繭を作る。
その中でゆっくりと蛹になる。
※
虫が嫌いなのって、差別の一種だと私は考えている。
・見た目が自分と違うこと
・どんな生活をしているか知らないこと
これが大きな原因で、「嫌い」とか「怖い」とか言う。
隣の部屋に引っ越してきた外国人が怖い、とか言ってしまうのと
理由は同じじゃないかと思う。
どんな暮らしをしているか、知ってみれば
自分と同じ。必死に生きているだけなんである。
※
とにかく、力尽きるものも多いのである。
ある朝、木の根元を見たら、たくさんの幼虫が力尽きて落ちていた。
慎重に、スコップで拾って集める。
触れてしまったらたいへんだ。
ついでに、木の幹や支柱に付いている幼虫も取る。
みんな繭になったら、それが羽化して、またこの木に産卵しに来て、それが孵化して、幼虫になって、
(以下繰り返しつつ殖える)
※
この日に取った幼虫は実に50匹ほどであった。
※
翌日は30匹。
その次は10匹くらい。
その次は5だったっけ、
その次は3だったっけ、
その次の今日は1匹だった。
※
「今日もいるー?
あ、糞が落ちてるからまだいるね。」
段々みんなの言うことや視点が、虫博士みたいになってきている。楽しい。
虫差別感情が少しおさまるといいな。
※
殺虫剤によらずに駆除するにはどうすれば良いのか。
その方法を探るには、まずヒロヘリアオイラガの生活史を知る必要が有る。
という話はまた今度。
ご参考に
アース製薬のページ。
ヒロヘリアオイラガの幼虫の拡大画像がいきなり結構なサイズで表示されます。
ああ美しい。
https://www.earth.jp/mushicare/mushi02/
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