犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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エルダル・シェンゲラヤ監督『葡萄畑に帰ろう』

2019年02月04日 | よみものみもの

映画が始まって、すぐ、画面の文字がまるで読めない。
分かっちゃいた。

グルジアとの出会いは、数年前、
東京外国語大学の学祭でワインを飲んだことからだ。
フルボディの赤ワインは私好みだった。
グルジア古来の品種、サペラヴィだった。
そもそもワインが世界で初めて作られたのはグルジアで、
クヴェヴリという大きな甕を地中に埋めて、その中でワインを醸造する、
なんて事は後から知った。

その後、グルジアは国名をジョージアに変えた。
アメリカ寄りにしよう、ってことらしい。
それくらい、旧ソ連とその後の体制のもとで苦しんできたのだろう。
グルジアはロシア式の発音なのだ。
でも、ジョージアと言われると私にはジェイムス・ブラウンの顔が自動的に浮かんでしまう。

グルジアがジョージアなんて、
日本が国名をジャパンに改めるようなもんじゃないか。じゃないか?
グルジア人は自国のことを「サカルトヴェロ」と呼ぶようだ。
それも民族によっては差異があるらしい。
日本に例えたら「やまと」みたいなものだろうか。
日本人だって大和民族でできているわけじゃない。

反露感情には配慮したいとも思う。
でもJBの顔が…。



ジョージアワインのボトルには、ジョージア文字で品種名や銘柄が書いてある。
コロコロとした、独特の文字だ。
ワインを飲むたびに、この字はI、この字はS、と照らし合わせて読んでみたりするが、
憶えやしない。

映画の表題も、読めなかった。
読めたところで、意味も分からないのだが。



ひとことで言うと、妙ちきりんな映画だった。
そんな感想になってしまうのも、私に基礎知識が無さ過ぎるからだ。
監督がどういう人なのか、ジョージアの現代史、政情、
ジョージア映画史、といったことを何も知らない。
ワインおいしい。葡萄畑だって。観てみよう。という
薄ーーい気持ちで観に行ったのだ。分かるわけが無い。

だから、珍しくプログラムを買った。
解説が必要だ、と考えたのだ。
必要だった。
解説を読んでやっと理解できたというところが有った。
もちろん、無知のまま観ても楽しい映画ではあったが。

監督は御年86歳で、これは21年ぶりの映画作品だという。
そして、映画監督でありながら、長く国会副議長でもあったのだ。
政界での経験有ってこその本作となる。



読めなかった原題は「სავარძელი」。
アルファベットにすればsavardzeli。
意味は、「肘掛け椅子」だ。
なんなんだ、邦題は。
きっとジョージアワインしかジョージアについてしか知らない無知な日本人が
うっかり観に来ることを見越して付けたタイトルだろう。
ホイホイ。我こそがその手合いだよ。

観るんなら、作品のサイトで予習することをお勧めします。
http://www.moviola.jp/budoubatake/

いや、それでも足りない。
こちらの解説がおすすめ。
背景を知らないと映画が理解できない、ということがやはり書いてある。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/01081530/?all=1



もう一つ、映画が始まってわりとすぐに、聞き覚えのある言葉にハッとした。
みんな「ガーマルチョバ!」「ガーマルチョバ!」と挨拶している。
ガーマルチョバという日本のパントマイムのコンビ芸人は知っていた。
ガーマルチョバって何だろう、と調べたことも有ったが、
パントマイム芸人の名前としてしか出て来なかった。
ジョージア語のこんにちは!だったとは。



全編、肘掛け椅子が大活躍する。

批判的に言えば、肘掛け椅子が
権力の象徴なのか、狂言回しなのか、主人公を助けているのか祟っているのか、
よく分からない。
いろんな役割を与えちゃって不明確になっているんじゃないか、と感じた。

なんというか、独特のユーモアがあふれており、
楽しく観られる映画だった。
ワインについての僅かな知識も、観賞の助けにならないわけでもなかった。

帰りに近くの店でジョージアワインを割引で飲んで
うまい羊肉料理を食って満足。

岩波ホール、2月8日まで


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