犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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歯垢

2016年05月27日 | 日々
[あらすじ] 青森に行った。

近所の歯医者に通っている。
幼時に引っ越して来て以来、40年以上のお付き合いになる。
今では息子先生に診てもらっている。

大先生(おおせんせい。お父さんのほう)は手を使う治療や、
ちょいと神秘的なことにも興味を持っている。
だから私が鍼灸師になって気の話などすると、大喜びで話す。
時々、本を貸してくれる。
私も貸す。
お互い、しっかり読んで返す。

その歯医者の待合室だったかの壁に、版画が掛かっていた。
とても特徴的な人物像で、幼い私に深く刻まれた。
思えば、棟方志功の釈迦十大弟子のうちの、どれかだった。

そのうち、その版画と似た目を持つ作品はよく見かけることに気付いた。
それが棟方志功だと知ったのがいつだったかはおぼえていない。

青森県立美術館でちょうど志功とその時代展というのをやっていた。
地下室から吹き抜けにした部屋もある、大きな美術館だ。
なるほど志功には何枚もの版をつなぎ合わせた大きな作品も多数ある。
まるで壁画だ。
そういった作品を見ることができた。

市内には記念館がある。
こちらは、少しの作品をじっくり観賞できるように、という本人の意向で
小さい美術館だ。
まったく雰囲気が異なる。

「私は自分の仕事に責任を持っていません」
という言葉があったそうだ。
志功を支持していた柳宗悦はそれを、
「人間が責任を取れる範囲は小さい。
神や仏に責任をとってもらうほどの作品」なのだ
と解説している。

ドキュメンタリーのビデオが流れていた。
志功は版画と呼ばず、板画と呼ぶ。
板を彫りながら、興が乗ると歌いだす。
弥三郎節は志功が板を彫る姿にぴったりだが、
ベートーベンの歓喜の歌を歌っていてもまるで雰囲気はそのままで
民謡に聞こえる。

カメラを向けられて、よくしゃべる。
絵柄もにぎやかだが、本人もにぎやかだ。
大好きなゴッホについて語る時も、とにかくよくしゃべる。
「この『はね橋』、いいですなぁ。
たいした静かなもんです。
ホントに静かなんだ。
ゴッホなんてなぁみんな騒がしそうに皆聞こえてるけど、そうじゃない。
裏腹なんですな。
静かで、静かで、静かで、たまらない静かなもんですよ。ねぇ。」
と、やかましい。

たのしいおっちゃんだ。

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