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犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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NHKスペシャル「戦慄の記録 インパール」

2017年08月18日 | 椰子の実の中
[あらすじ] 母方の祖父は河辺正三、悪名高いインパール作戦を指揮した牟田口司令官の上官で、
作戦を「やらせてやりたい」と発言した。

従来、この無謀な作戦で多くの死者を出したことには、
牟田口司令官と河辺に専らの責任があるという見方がされてきた。

インターネットで検索すると、「極悪タッグ」などという表現も見えたりして、
祖父に会ったことも無いとは言え、孫としてはかなり居心地が悪い。

私が知る戦後の写真の中の祖父は、
坊主頭でニコニコしている。
もうちょいと早く生まれて、会いたかったと思えるような笑顔である。



番組では、インパール作戦がどのように決定され、敢行され、続行され、中断されたのか、
様々な資料を丹念に読み、経緯を追う。

大本営の議事録や参謀の発言とそれを聞いていた下士官などの証言、
死傷者の記録を日付を追って可視化した地図、
現地を踏破して取材した村人たちの証言、
生き残った兵士たちへの取材、
などなど。

中でも、英国に保管されていた連合軍の尋問調書、
英軍が記録したインパールでの戦闘の10時間を超えるフィルム、
今までマスコミに出なかった牟田口の遺品などは、
新しい資料として目を引く。
特に、牟田口に従っていた齋藤博圀少尉の詳細な日誌が
調査を裏付けるような軸となって番組の骨となる。

取材された人たちは、九十代後半となっている。
これだけの取材をする機会はあともうどれだけ残されているだろうか。
年寄りに、当時のことを思い出させるのは酷なことであるが、
どうか、生きているうちに聞いておきたい。
何が有ったのか、今、知る必要がある。



というわけで、たいへん見る価値のある番組だと思った。
再放送の予定があるので、ぜひにとお勧めする。
8月26日(土)
午前0:50~午前2:05
[金曜深夜]



番組中、私が最も違和感をおぼえたのは、
晩年の牟田口の一葉の写真だ。
軍服を着て、勲章を着けている。

河辺の戦後の写真には、一切無い姿だ。
祖父は戦後、在家出家した。
どのような思いだったのか、どこか、日記にでも記されていないだろうか。
遺品の中に、何かヒントは無いだろうか。



戦後、連合軍の尋問に、牟田口は作戦は「上司の指示」だった、と答えている。
一方で、服部卓四郎(大佐)は大本営としての、作戦の「計画・立案をしたことはない、
第15軍の責任」だと答えている。

今、牟田口ばかりを悪く言うのであれば、それは、
大本営の言い分をそのまま鵜呑みにしていることに他ならない。
戦中、大本営発表を信じて旗を振った国民を愚かと思うか。
インパールの責任は牟田口にある、というなら、
戦中の体制の延長に過ぎない。

上司からの指示には逆らえない、
トップは部下に責任をなすり付ける。
なんのことはない、現代の組織にもある構造じゃないか。

だから、責任を下に押し付けたり、
上司の命令だからと言って自分の気にそまないことでもするのであったら、
それは、戦争責任があることと同じだと思う。



私がおぼろげに思っていたことに、番組は裏付けをくれたようであった。

とにかく、何人ものおじいちゃんたちの生の証言には、
胸を打たれる。
ぜひ見て。


再放送
8月26日(土)
午前0:50~午前2:05
[金曜深夜]


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