初回生産限定盤仕様で買ってしまいました「大滝詠一NIAGARA CONCERT ´83」。3枚組みで
けっこういいお値段しますが、どうせ買うのならDVD付の決定版、これしかないですよね。これって間違いなく、
大滝さんがご存命中は、絶対世に出ることはなかったライブ音源と映像でしょう。
大滝さん個人名義でのコンサートはこれが最後だったようです。スタジオワークに執着し、
ライブ演奏に興味をなくしていた大滝さんを、どうにかこうにか口説き落として出演にこぎ着けた
経緯が、付録のブックレットに記載されています。
そのブックレットには、新作として発表寸前だった次作「EACH TIME」の発売が延期された話題にも
触れられ、本来なら、そのニューアルバムから数曲演奏されてもおかしくないタイミングでもあったようです。
ですがその新作なくとも、大滝さん脂の乗り切っている時期のライブです。大部分が大ヒットした「A LONG
VACATION」と「ナイアガラ・トライアングルVOL.2」からの選曲に加え、薬師丸ひろ子さんらに提供した楽曲の
セルフカバー、なのでどれをとっても外れがあろうはずありません。
しかもこだわりのミュージシャンも一流ぞろいの分厚い布陣、非常にいい音質で収録されているのも
うれしいところです。さすが音にうるさい大滝さんならではですかね。
逆に残念なのは、この時の映像が残されていないこと。サザンとラッツアンドスターで使われた撮影機材は、
大滝さん出演時はすべて逆方向向けて放棄されていたとか… 。このあたりは、テレビ出演に激しく抵抗した
大滝さんらしいといえばらしいのですが。ご本人はテレビ視聴は大好きで、複数台のビデオデッキを稼動させ、
テレビ番組を大量録画していたとも聞いています。所属したはっぴいえんどのほかの元メンバーは映像メディアへの
露出度がけっこう高かっただけに、なにかわけがあったんですかね、テレビ嫌いになった。
その意味では、限定盤のみ付属のライブ映像を収録したDVDはかなり貴重です。私自身、動いている
大滝さんを見たのって、たぶんこれが初めてじゃあないかな? ´77に収録されたその映像を見ると、
サービス精神旺盛なコンサートだったことが伺えます。人前で歌うのがまったく嫌だったわけでもなかったんだな。
同じく動いているシリア・ポールさんと布谷文夫さんを見たのもたぶんこれが初めてで、シリア・ポールさんは
ファンになっちゃいそうなほどキュートな容姿、これにも驚きました。夢で逢いたいですねえ。
コンサートで歌われたオールデイズ・ナンバーばかり集めたもうひとつのCDはあまり期待していなかった
のですが、これがなかなか良く渋くていいです。こちらも録音状態が良くて、音質も優れており、よくぞ
残しておいてくれたって感じです。でももしや、これがあるってことはですよ、カバー曲以外のオリジナル曲も
記録、保存されているってことですよね。もったいつけず、すべて発売してくれないかな。
大滝さん本人は、当然こうしたライブ音源があることはご存知でしたでしょうけど、当人はまったく
発売する意思なかったみたいですね。うがった見方をすると、提供した楽曲が軒並みヒットして、
あえてこんな古い音源に頼らなくとも、暮らしにはまったく困らなかったのでしょう。ただ、旧アルバムを
たびたびリマスタリングして再発売を繰り返してはいたから、結果的にはやはり、ライブにはあまり
強いこだわりを持っていなかったのでしょうね。