出だしの頃、まだつぼみが多かった。花弁に邪魔されず、鳥自体を写すには、むしろそのほうが
都合がいいのかも。
花の奥まで顔ごと突っ込むせいか、くちばしから顔面が黄色い。
青空に大漁桜の濃いピンク色とメジロの薄緑色が映える。
つぼみを背負うように。
目にライトが当たっていないほうが、穏やかなシルエットに映るような気がする。
花にくちばしを差し込んでのお食事シーン。多くの写真がこういうポーズになってしまう。
ぶら下がってひょうきんな表情、仕草。
2月24日~3月4日までの間の数日、早咲きの桜の花とメジロとの取り合わせを目的に、
写真撮影に行ってきました。場所は和歌山市内の水軒というところです。
コアな鉄道ファンなら記憶にあるでしょうけど、現在和歌山港駅が終点の南海電鉄和歌山港線は
20年ほど前に廃止されるまで一駅先の水軒駅まで線路が敷かれ、廃線後、そのホームだった
跡地周辺が公園として再整備されて、そこへ7,8本植えられたのが大漁桜(たいりょうざくら)です。
あまり耳慣れない名前の大漁桜、静岡県に原木がある早咲きの桜で、桜鯛のような濃いピンク色の
花びらにちなみこの名がつけられたとされ、一般的なソメイヨシノでなくて、どうしてこの品種が
ここへ植樹されたのかは正確には不明ながら、この場所は海や港に近い立地なので、ちなんだ名の
桜が選ばれたのかもしれません。極端な早咲きで、河津桜に近いような品種なんですかね。
期間中何度か訪れたのは、まず私が基本暇人であることと、最初24日はまだ五分咲き程度で、
それが徐々に花数を増やし、3月3日頃にようやく満開になったこと、さらには、一度の
セッション時間がせいぜい1時間~1時間半程度が限界だったので、撮影機会を増やすには、
自然と訪問回数を増すしかなかった経緯があります。100-400mmの望遠ズームを装着して
カメラを構えるのは、非力な私にはかなりの重労働で、体力、気力的には、そのあたりが
目いっぱいのタイムリミットでした。
メジロに限らず、鳥をこれだけ長時間追いかけ写すのは初めてのことで、いろいろ面喰ったことがあり、
まずは、メジロは絶えずちょこまかと動き回ること。いいアングルだ、いいポーズだと気がついて、
それからレンズを向けていては全然間に合わず、メジロはすでに次の枝に飛び移っています。
なので、アングルとかライティング、ポジションなどはすべて事後承諾、ひとまずメジロが
視野に入ると、撮影範囲内に収まるようレンズで追随し、時には連写しながら追及の手を休めず、
あとは野となれって感じで、結果は現像時に確かめるしかない撮影姿勢でした。必然カメラを
構え続ける時間が長くなり、途中から腕がパンパンに張ってくるんですね。
そうしてメディアに記録される撮影枚数は膨大で、その半数ほどはピントがずれていたりして
一目瞭然で使い物にならず、どしどし消去しました。メジロは桜の花粉(蜜)を求めてやってきて
ますから、当然花びらにくちばしを突っ込んで蜜を吸っている姿が多く描写されることになりますが、
この体制ではほぼ顔が隠れてしまうので、記録としてならともかく、絵面的にはあんまりよくなくて、
こうした類の行動様式のも多くはボツテイクとなりました。そうかといって、一方、本来大歓迎なはずの
目にビシッとピントが合っているシャープな写真、これはこれで個人的には芳しくなく評価を下げたのは、
目が怖いからなんですよ、鳥の目って笑ってないんですよね。通常メジロと聞いて思い浮かべる際の、
「鳴き声が愛らしい、薄緑色の小さくて可愛げな鳥」のイメージとは、かけ離れた印象の写真になって
しまう場合が多い気がするんです。なので、わざと目に光が入っていない、ややぼやけた感じの
作品に、自分としてはより好印象を持てたりとか…
まあともかく、いろんな意味でいい勉強になった気がします。
何が撮りたかった写真なのか途中からよくわからなくなり、決して厳選したとは言いかねますが、選ばれた
28枚を4回に分けて掲載します。鳥好きな方もそうじゃない方も、薄緑色のメジロと濃いピンク色の
桜の花とのコラボレーションをお楽しみいただけたらと思います。なお、掲載は基本撮影順となっています。
♪ たとえば優しくても 意地悪でも 誠実でも ずるくても
女好きでも 堅物でも 汚くても きれいでも
鳥は鳥 どうでもいい 生きるだけ
眠るだけ 食べるだけ はばたくだけ
心がねじれてても まっすぐでも おだやかでも 短気でも
怠け者でも 勤勉でも 賢くても 愚かでも
鳥は鳥 どうでもいい 悩まない
1分前のことはもう忘れている
僕も鳥なら 気楽でいいのに アタマの中ゴチャゴチャして
つらくなると 時々思う
でも僕は鳥じゃない 鳥じゃない 幸せでも みじめでも
人間として 歩いてきた 歩いていく これからも
鳥は鳥 どうでもいい そんなこと
眠るだけ 食べるだけ はばたくだけ
できることなら 今までの過去の あんなことやこんなこと 全部
きれいさっぱりと なかったことに…
でも僕は鳥じゃない 鳥じゃない 残してきた 足跡や
これから残す いろんなこと 荷物にして かかえてく
鳥は鳥 どうでもいい そんなこと
笑わずに 愛さずに 生まれて死ぬ
鳥は鳥 どうでもいい 生きるだけ
眠るだけ 食べるだけ はばたくだけ
(僕は鳥じゃない/詩・曲・歌:谷山浩子)