旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

20240506 北海道晩春編㉔ 樽 東川町

2024-05-06 05:06:01 | 旅鴉の唄



5月6日(月・祝日) 曇り時々雨

この前から少しづつ読み進めてきた「樽/F.W.クロフツ著」を
この天気の悪い日に片付けてしまうべく、一心不乱に読み耽った。

いわゆる古典的名作で、江戸川乱歩や横溝正史らのエッセイで
何度もその名前が登場するので作品名だけは存じ上げていたのを、
このたび縁あって読むことができた。樽の中から死体が出てくる
シチュエーションは、たとえば横溝さんの「蝶々殺人事件」では
コントラバスから死体が現れたりと、のちのち多くの作品に
影響を与えている。

それほど分厚くはない文庫本版ながら、読み切るのに相当の
時間を要した。元々翻訳もので外国人の登場人物に馴染めないうえ、
樽の輸送経路がややこしく頭がこんがらがり、しかもイギリス、
フランス、ベルギーと事件は三か国にまたがるので大変だ。

また、出だし事件の経緯が緩やかで、樽に死体らしきものが
隠されているのがわかってから、実際警察が樽を押収、死体が
確認されるまでにかなりページ数を費やすので、読み手側も
なかなかペースがあがらないのだ。

しかし、いざ事件が動き出すと徐々にペースアップし、それでも
途中ほとんどが「静」なのが、終盤突然「動」にチェンジ、
急展開気味にフィナーレを迎えるなど変則的なペース配分が、
結果、読み手を飽きさせないつくりになっている。

今日多く見られる緻密に構築された本格推理の原点、土台が、
この古い作品ですでに完成されているのがすごい。


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