拙著『旅のプラズマ』に「オランダに授かった慈愛」という一文を書いた。我がふるさと臼杵に漂着したオランダ船“デ・リーフデ号”と、乗組員ウィリアム・アダムス(後の三浦按針)とヤン・ヨーステン(日本名を耶揚子)の日本への貢献にふれて、日本とオランダの浅からぬ関係を書いたのであった。
そしてその浅からぬ関係は、長崎「出島」を通じて行われてきたのである。今や埋め立てられて陸地と化していたが、当時の面影を着々と復元しつつある出島を見学しながら、オランダへの思いを改めて強くしたのであった。
ハウステンボスはもっと直截的にオランダそのものであった。広大な面積と言い、立ち並ぶ風車と言い、運河をわたるクルージング船から両岸の建物まで、ちょうど10年前のオランダの旅を再現した思いであった。その日からバラ祭が始まったらしく、バラ園はもとより道も建物もバラに埋まっていた。
中でも、お目当てにしていた「パレスハウステンボス」は素晴らしかった。ご自慢の壁画も庭園も、ご自慢に値する見事なものであった。この旅では土産の他はほとんど買い物をしなかったが、このパレスの売場では気分を良くしたのか、ワイフがバラ模様のブラウスを、私が有田焼の平盃を、相応の値段をはたいて買った。
ところで、オランダからはチューリップや町並みの美しさだけを持ち込めばいいのだろうか? かつて医学などを学んだように、現時点でも学ぶべきものが多いのではないか?
このブログでも何度も触れたが、私は北欧とオランダの政治経済の姿に、これからの日本の進むべき道の教訓が潜んでいるような気がしている。フィンランドをはじめとした教育力、また、生存、医療、教育などの福祉政策など国としての体をなしているところが、世界の中でも一歩先んじていると思う。大不況に直面して慌てて議論し始めた「シェアリング論」などは、まさにオランダが先進国だ。
蛇足ながら推薦図書一冊 『残業ゼロ 授業料ゼロで 豊かな国オランダ』 (リヒテルズ直子著 光文社)
このようなことを考えながら、美しいハウステンボスを歩いた。